歪む船長と気づけなかった右腕
1「じゃあね!みんな!ウタでした!」
そう言って配信を終える。今日もみんな喜んでもらえたみたいだ。
「(今日は“あっち”の方はどうしようかな)」
配信を始めて2年、裏配信を始めて1年。その2つは私とは切ってもきれない関係にあった。
「とりあえずゴードンの……はぁ…また海賊か…」
港に一隻の船が着く。奇妙な顔をつけた船だ。あれは…ひまわり?
トットットット…ガチャ…
「ゴードン!また海賊が来たから行ってくるね!」
「あ、ま、待ちなさいウタ!」
呼び止めるゴードンを無視して能力を使い、そこへ向かう。
ここからはもう何も奪わせない!
スっ…スタッ…
「あんたら海賊でしょ…何しに来たの…大人しく帰るんなら「ウタ!」…?」
私の名前を呼ぶ麦わら帽子を被った男…
「やっぱりそうだ!「は?」ウタ!お前、ウタだろ!」
「………。…!?もしかして…ルフィ!?」
「ひっさしぶりだなぁー!ウタぁ!」
「!!ルフィーー!!」
感極まって思わず抱きついてしまう。それを優しく受け止めてくれる。
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「「「「「「「幼馴染!!??」」」」」」」
「あら、それで…」
「急にエレジアに行きたいというから何があるのかと思えばそういうことじゃったのか…」
この人たちがルフィの仲間たちかぁ…ちょっと待って……
「ルフィ…今あんた何やってんの…?」
「?決まってんだろ、海賊だ!」
あぁ…そうだよね…船見た時点でわかってたのに…
「海賊王になるんだーおれ。」
ドス黒い感情が溢れてくる。ルフィもやっぱり他の海賊と同じ「そんでよ!」
「新時代を作るんだ」
はぁ?……いや、落ち着こう。もしかしたら…
「ねぇ、ルフィはさ、略奪とかしてるの?罪もない人を襲ったり、支配とか「そんなことしねぇよ」
「そんなのつまんねぇ!そんなのは自由じゃねぇだろ!」
「……よかったぁー…ルフィが昔と変わらないバカで…」
「お前失敬だぞ!」
ギャーギャーワーワー
「なぁ…サンジ…やっぱあの子ってよ…」
「あぁ…ウタカタちゃん…だよな…」
「どうす…いや、あいつはルフィの幼馴染のウタだ!そうだろ!」
「あぁ、そうだ…ウタカタちゃんとは全く関係ねぇ…」
「……ルフィには絶対に内緒にしておこうぜ…おれたちが見てることもそうだけど、幼馴染の痴態を知りたくないだろ…」
「あぁ…そうだな…」
ルフィとウタの言い合いを遠くから見つめる男…ゾロ…
「………………………………………………………………………………」
正確にはその目はルフィを睨みつけていた。
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「ありがとうルフィくん!あの子が心の底から嬉しそうにしてるのなんて久々に見たよ!」
「おっさんもありがとな!ウタのそばにいてやってくれて!……なぁ、おっさん…いきなりで悪いんだけどよ…ウタ、連れてってもいいか…?」
「!」
「さっきおっさんから話を聞いたけどよ、どんなことがあってもウタのそばにいてやりてぇんだ…もうあんな思いはしたくないんだ…だから…!」
「もちろんいいとも…!是非とも連れて行ってあげてくれ!あの子の歌はこんな場所で燻っていていいようなものではない…!それに…いつ海賊や非道な男にやられてしまうかもわからない…!…是非、君たちの手でウタに色々な場所を見せてあげてくれ!」
「おっさん、知ってたのか…ウタが襲われそうになったって…」
「ああ…私が、目を話した隙を狙っていたらしい…幸いウタの警戒心が高かったおかげで大事にはいたらなかったが…いつそうなってもおかしくないんだ…!」
「わかった…ウタはおれが守るよ…貰っていくぞ…」
そう伝えるとゴードンは安心したような顔で部屋へと戻って行った。
そこに一人の男が来る。
「ルフィ」
「………ゾロか…」
「テメェ、いったい何がしたい。」
「?何言ってんだ…ゾロ…そこにいたってことは聞いてたんだろ。おれはウタをーーー」
「ああ…それは…いや…それも本心なんだろうよ、お前の」
「それも本心?何言ってんだお前?これ以外に何があんだよ?」
「……………チッ…全く読めねぇ…何を隠してやがる…」
「何も隠してねぇって!さっさと寝ようぜ!」
「………はぁ…わぁったよ…………あれは本当にルフィなのか……」
ゾロは立ち去る…
「そっちじゃねぇぞ」
「…………うるせぇ」
大きな違和感と気持ち悪さを感じながらもゾロは今度こそ大人しく立ち去った。
その背中にいる狂気を孕んだ船長の目に気付けないまま……