「正義」の行方2

「正義」の行方2

イチカ+正気の委員vs温泉部

【「正義」の行方1】

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正気を保っている正義実現委員会の面々は、危険なクスリといえる物質「砂漠の砂糖」に毒され正義の行方を見失いアビドス側に着いた者達の目を覚ますために混戦を始めていた。

その最中、コハルは狙撃を敢行していたマシロに必死で訴えかけることで正義の心を取り戻すことに成功。マシロは禁断症状を抑えるため光の飴を衛生兵役の正義実現委員に投与されてから担架で運ばれていったが、これにより上からの狙撃を阻止して尚且つ友人を救うことが出来たのだった。これはアビドス側にとって痛手ではあったものの、そこへ更に厄介な集団がカルテルトリオの指示も聞かずに乱入を仕掛けようとしていた…


一方、持ち前の頑強さと冷静な判断をしつつの狂気とも言えるパワーを駆使して混戦の中(やりすぎない程度に)元正義実現委員会だった砂糖堕ちモブ娘を蹴散らしていくツルギと、注意を払いながら仲間のモブ娘達を率いて確保した相手を後方へ送るなどの支援を続けるイチカ。

ふと上方からの狙撃が止んだことに気づけば、ツルギは今まで二重の狙撃を警戒していた故の一進一退から解放され、一気にハスミの方へ切り込んでいく。一方のイチカは…



ツルギ「…!(上方の狙撃が…マシロを無力化出来たか。なら後はハスミと、このバカ共を一発殴って元に戻すだけだっ!)きえ゛え゛ええあ゛あ゛あぁぁぁッ!」

イチカ「おっ、さっきから続いてた上からの厄介狙撃が止んだっすね。てことはまさかマシロを確保できた…?衛生兵、マシロを捕まえられたんすか?」

衛生兵A「はい!先ほどコハルさんが救出しました!」

「コハルが?そっか…まず1人友達を救えたんすね…良い知らせありがt」

衛B「い、イチカさん!緊急事態を申し上げます!」

「…今度は悪い予感がするっす。一応聞いときますけど、何が?」

「そ、それが…」



温泉開発部員A「開拓ッ!」

温B「開発ッ!」

温C「爆破だーっ!」

??「いーねいーね!あんなお堅そうな格好してる子達も砂糖と温泉漬けにして柔らかくしちゃおー!ほーら、足元甘くなーれ!あははははっ!」

???「ハーッハッハッハ!今の私たちはもう誰にも止められない!諸君!この砂漠の果てまで広がる超巨大温泉を掘り当て、最高の“アビドス砂糖温泉郷”を作り上げようじゃないか!」

「「「「おおーっ!!」」」」

正実モブD「な、なにぃっ!?うわああああああっ!砂糖のアリ地獄に呑み込まれるーっ!」

正E「あのメチャクチャな火力…温泉…まさか!?ひやあぁぁぁっ!」



衛B「温泉開発部が現れました!」

イチカ「………(例の青ざめ顔)」

衛B「現在東北東から進軍して、こっち側の正義実現委員会を砂糖のアリ地獄に落としたり爆破したり特殊な武器で襲ってきている模様です!」

うわー…よりにもよってこんなクソ忙しい時にあの温泉開発部っすか…

一応相手側になったうちの子らは半数以上確保できたっぽいすけど、まだ魚の大群みたいにいるのは間違い無いし…状況があまりにも最悪すぎる。


「ハーッハッハッハー!」

ああ、通信越しに確かに聞こえるあの高笑い。今回はカスミ1人ではなく大勢で笑っているようだ。

一緒にいた時はカスミしか知らなかったが、あんなとんでもなく気の狂ったテロリストである彼女についていく連中もきっと、いや絶対に気が狂っていると思っていた。そしてどうやらそれは当たっているようだ。あの時の高笑いとは違う、砂糖でハイになった濃縮されている狂気の笑い声。楽しそうに聞こえるけど、悪魔“ゲヘナ”さえ身を引くだろう笑い声の合唱…それがこっちに向かっていると考えると意識を手放したくなる。


ふとあの時の急行列車を思い出した

ティーパーティ直々に下された遺物の輸送命令…

先生と間違えて積んだ列車の中爆発と共に現れた、小柄でサイズの合ってない格好をした頭のおかしい少女…

遺物の入ったカバンのため一時共闘し、不良どもを巧みな話術で纏め上げ列車をほぼ乗っ取り寸前までやって、現れたゲヘナの風紀委員達と対峙した場面…



なあ正義実現委員の…ええと


ニカちゃん?



(プツン)


イチカ「………チッ」

衛生兵B「い、イチカさん?」

「あの時も、これまでも、散々人を弄んどいて…今度はヤク漬けっすか。砂糖温泉…とか言ってたすね。ははっ!頭の茹った連中にはまさに甘露の響きってやつっすかね?」

衛生兵B「あ、あの…」

「ああごめんっす!とりあえず温泉開発部から離れつつ確保したうちの子らの対処を続けてもらっていいすか?」

衛生兵B「は、はい!了解しました!」


イチカは無線機を切ると、次にツルギの耳に着けた無線へと繋げる。

「あーツルギ先輩?今から大事なこと言うんで戦りながら聞いて欲しいっす。東北東から温泉開発部が進軍中。うちの子達結構やられ始めてるみたいなんで、ちょっと仲間借りて温泉開発部を食い止めてくるっす。いけるっすか?」

「あァ゛了解したぁ゛ッ!ちょっとじゃなくて、全員連れてけッ゛!」

「えっ大丈夫なんすか?まだまだ残ってるみたいっすけど…」

「加減してっから普段より体力残ってんだァッ!ハスミ達は私がぜったい゛連れて帰る゛ッ!オマエはオマエがやれることをやっとけェ゛ッ!」

「──ああ、了解っす。」

やれることをやれ…か。さっきコハルに言ったようなことを言われるなんて思わなかったっす。あははっ



戦闘中の残存部員達に無線を繋げ、混戦中でもよく聞こえるよう大きな声で指示を下した。

「みんな!よく聞くっす!ツルギ先輩は今から1人でも行けるつってたので、東北東方面から進行中の温泉開発部を部員全員で食い止めるっすよ!」

正実モブ達「「「は、はい!?」」」

「みんなしんどいとは思うんすけど、これ以上被害が増えないためにも…」


大きく息を吸い込み、普段閉じている両目を見開いて

スーッ…

「全員で砂地獄に行くっすよ。」


「「「お、おおおおおーっ!!!」」」




「…何が“アビドス砂糖温泉郷”だ。今度は全力でその甘く茹った頭ぶん殴って牢屋にぶち込んでやるっすよ、カスミ。

あはっ…あはははっ、アハハハハハハハハハッ!」


今の私を支配する感情は、大凡見積もって【義憤2:私怨8】といったところか。「私怨を優先してひっ捕えるなんて、これじゃ正義実現委員失格っすね…」とは思っていても、あのイかれた温泉バカを真っ向からぶん殴れる機会に高揚を隠せない自分がいた。

多分私も、“正義の行方”を見失っているかもしれない。今砂糖のために戦っているあの子達とハスミ先輩のように…

でも心のどこかで、「あんなカスミはらしくない」と思っている自分がいた。確かに普段からあちこちでやりたい放題している狂った奴だ。しかし狂ったとは言っても砂糖をキメて狂ったあいつの姿は…正直見ていられなかった。

相手が砂糖由来の“偽りの狂気”で襲いかかるなら、ツルギ先輩みたいにはなれないが私も“狂気”で対抗することにした。普段から苛立ちやストレスは散々溜め込んでいるというのに、ハスミ先輩達やキヴォトス中の生徒が砂糖漬けになったことでもう限界寸前だったんだ。列車の時以上に解放したって…


別にいいっすよね?



イチカ「相手は辺りを爆破したり火炎放射することで、砂を砂糖にしながら津波みたいに押し寄せてるっす!まずは押し寄せてる方向から逸れたところ目掛けて爆弾を投げる。アイツらは砂糖になった部分に集まるみたいだから、それを繰り返してじっくり戦力を削ぐっすよ!」

「「「了解っ!」」」


先陣に立ってあいつらの戦術を見たことで分かった。あいつらは無差別に爆破したり燃やしたりして足元に砂糖を作り、それを回収して口に含むことでキメながら進軍している。つまり進軍方向と違う場所に砂糖を作ればそれに釣られた分戦力を削ぐことができ、そこを狙って倒すという作戦が有効なはず。

更に倒した温泉開発部員の装備を使えそうならそれも足しにして武装に、火炎放射器を扱える子は奪って砂糖生成をするよう命じた。これなら少数でも気を引きながら着実に戦力を削ることが可能だ。


「でも無理はしないように!相手は破壊に長けたテロリストっすからね!そしてもし可能なら敵の重機を奪取してまとめて捕まえることも視野に入れるっす!」

「「「分かりましたっ!」」」

どうやらこの作戦はかなり効いたみたいで、どんどんと温泉開発部の大隊がバラバラにあらぬ方向へ進んでいき倒されていく。更にはゲリラ戦法で奪取した重機を操り部員達をまとめて戦闘不能に持ち込むことができた子もいたようだ。


一方の私は小高い砂丘の上から、温泉開発部員の大多数が離れ残った“本隊”に向かって…

「カスミィィィィィーッ!私と戦ええええええーっ!」

人生で一番デカい声出したと思うくらいの声量で、中心にいる小柄な白衣の悪魔へ叫んだ。


カスミ「おや、おやおやおや!誰かと思えばいつぞやのお嬢ちゃんじゃないか!奇遇も奇遇だね!こうして会えてとても嬉しいよ!」

「ぁ゛〜…ちょっと喉壊したかもっす…はっ!顔は覚えてるけど名前は覚えてないってクチっすか?前以上に頭が茹だり切ってダダ甘になったみたいっすね!」

「ハッハッハ!中々言うじゃないか!君も砂糖温泉に入ればその低俗な頭脳でも真理を発見すると思うぞぉ!えっと…

ニジカちゃん!」


──

──あぁ

こいつ多分わざとっすね


じゃあもう、容赦しない


「テメェ゛ェェェェッ!!」

「ほぉ!無策で突っ込んで来るかい?無謀無謀!あの時割と冷静だった君らしくない行動だな!さあ出でよ!“砂漠仕様ジャイアントヒール・クラッシャーッ!”」


怒り任せに飛び出した私の視界に映ったのは巨大なドリル…列車の時見せていたあの小型ドリルの親玉みたいなものだろう。だがそんなもので怯むわけがない。カスミをぶん殴って拘束さえしてしまえばそれで終わる。彼女がもし自爆用の爆弾を持っていたって知るか。たとえ身体が吹っ飛んだとしても捕まえてやる。

マシロを助けたコハルのように、私達は温泉開発部を止めてツルギ先輩のことを助ける。それがハスミ先輩も、砂糖という悪に堕ちた正義実現委員も、
“こいつら”をも救う正義になるはずだと、自分に言い聞かせながら駆けた。



「さあこの巨大ドリル相手に君はどう立ち向かうのかな!?礼儀に反しないようタイマンでやるとしよう!諸君!後方の援護をするように!メグ!君は風紀委員長のところへ加勢するんだ!」

温D「了解っ!さああっちで温泉開発だっ!急ぐぞーっ!」

メグ「おっけー!まあ部長だけでも何とかなるよね!帰ったら目一杯砂糖温泉浸かってアビドスサイダーで乾杯しよ!」

「ハーッハッハッハッハ!それは俗にフラグというんだメグ!だが安心しろ!私は負けない!砂糖と温泉のありがたみを知らぬニジカちゃんの心と体にしっかりと刻み込んでみせるさ!」




───温泉は良い。

どんな湯にも負けない最高の風呂。

そういえば私が温泉に興味を示したのはいつだったか。


…あれ?

いつだ?

きっかけがあったはず。それは…

何だった?


砂漠の砂糖…ではない。あれは最近ハマったものだ。とすれば、私が温泉を求めるようになったのは…

メグとの出会いは…

開発部を立ち上げた時は…


思い出せない。何も。

記憶にあるのは“砂漠の砂糖”のことだけだ。これで私達は素晴らしい人生を歩み始めた。砂糖温泉という人生で最高の温泉を作り出せた。でもそれより昔のことを思い出そうとすると、なぜか何も分からない…


いや、ほんの少し思い出した。確か前に島で開発をしたことがあったな。あの時は…

どんな温泉だった?




「ハーッハッハッハ!一対一にしてやったというのに、防戦一方じゃないか!ほらほらほら!早く逃げないと潰されてしまうぞぉ!?そらっ!」

「チッ…無駄に機敏に動きやがるっすね!でもそんなものじゃ、私を潰すなんて何億年かかっても無理な話っす!」

なんて啖呵を切ってはみたものの、正直かなり厳しい。機動力が思った以上に高く、更にカスミ自身はドリルの上からピストルを向けてこちらに撃ってくる。数発程度ならなんとかなるものの、もし連続で受けてバランスを崩し転んだら本当に潰されかねない。かといって遠く離れようにもすぐに追いつかれるだろう。なんとか弱点を…

「っ?」

その時踵が沈む感触があった。ふと後ろを見れば、一見何の変哲もない砂地であるものの足で軽く踏んでみると流砂っぽい感触が伝わる。これを利用すればあのドリルを無力化出来るかもしれない…!


「カスミ!私の勝ちっすね!」

「なっ…どういう意味だ!?」

「すぐ教えてやるっすよ…!そらッ!」

そう言って、混戦が始まる前にコハルから分けてもらった“セイなる手榴弾”を投げつけた。

「手榴弾を避けるくらい造作もないっ!無駄な足掻きをしたなニジカちゃん!」

当然左右どちらかに避けるだろう。その隙を突いて、流砂がある範囲を少し回るように全速力で駆け抜けた。

「安心しろ!轢き潰したとしても撥ねたとしても、たっぷり砂糖温泉に浸からせて永劫に続く甘い時を授けてやろう!」

ドリルのエンジンをふかせ、こちらに向かってピストルを構えつつ突進するカスミ…よっしゃ、罠にハマってくれた。

「ああ…でもその前に、足元を注意した方がいいんじゃないすかね!」

「なっ…!?うわあぁぁぁぁっ!」


カスミのドリルはこちらに向かう途中、片方の無限駆動が流砂に巻き込まれバランスを崩した。今まで目立たなかった流砂だが突如重量のあるマシンが嵌まり込んだ事により大きな口を開ける。呆気なく横転し“砂地獄”へ呑み込まれていく巨大ドリル…無限駆動も横を向いているため再発進は不可能だ。

「くそっ!流砂だと!?あぁぁっ!折角の砂漠仕様ジャイアントヒール・クラッシャーが…!お、おのれ…!」

巨大ドリルが呑み込まれる前に跳躍し、私から数メートル離れた場所へ着地したカスミ。砂の海へ沈んでいくドリルに手を伸ばしながらも引きずり出せないことに深い悲しみと怒りを覚えているようだった。そしてこちらに向き直り憤怒の形相でピストルを構えると…

「イチカアァァァァァッ!」



ははっ…

なぁんだ

やっぱわざとだったんすか。


「ふざけやがって」

「ごふぅ゛ッ…!?」

相手が撃つ前に銃を捨て、多分今までで一番のスピードでカスミの懐に駆け寄り潜り込むと、その腹目掛けて渾身の一発を叩き込んでやった。

「が、はっ…!」

「そのクソ甘ったるい毒全部吐き出しちまうと良いっすよ。あんたは元々どうしようもない馬鹿でしたけど、これ以上無様に狂い果てるのは見るに耐えないっすから。」

「ぎ…ざ、まぁ゛…!これ゛、でもかッ…!」

「はっ!?」

右手で腹を押さえ、甘ったるい吐瀉物を吐きながら砂の地に倒れ伏し悶えるカスミ。だが今までの戦闘の疲労もあり咄嗟に動けなかった私は、彼女が左手に起爆スイッチを持っていると気づくのに遅れてしまった…

危惧こそしていたが、カスミは自爆をするような奴じゃないとたかを括っていたのもあったかもしれない。いずれにせよ私は2人まとめて爆破されると察してしまった。

あ…終わったかも


(ズダァンッ!)

「ぐあぁっ!?」

「っ…え?な、何が…」

?「だ、大丈夫ですかイチカ先輩っ!」

「え…君、は…」

カスミがスイッチを押そうとした刹那、そのスイッチは一発の銃弾によって吹き飛ばされ破壊された。その銃を撃ったのは…私がよく可愛がっている正義実現委員の子だった。


正実モブF「嫌な予感がしてイチカ先輩の発信源を辿ってきて…そしたら温泉開発部の部長さんがスイッチを掲げてたので咄嗟に落ちてた銃を拾って当てました…!」

「あ、ありがと、ね…つぅっ!」

「イチカ先輩っ!?」

あー、やっぱ無理して動きすぎたかもっす。みんなは無事温泉開発部を確保できたかな…?

確認したいのに…疲れて意識が…


「カスミと、温泉開発部を…助けてや…って…」

そう呟いたところで私の意識は消えた







イチカ「あ、あれ…ここ…」

ツルギ「気づいたか。」

「うぇ!?ツルギ先輩!?単身で大勢とハスミ先輩相手にしてたはずっすけど動いて大丈夫なんすか!?」

「傷なんて既に治ってる。」

「さ、流石はトリニティの生きる戦術兵器…あ、ハスミ先輩達は無事っすか?」

「ああ、負傷したやつもいたが正義実現委員会は死者も出ず全員戻って来させられた。コハルも無事ハナコを説得し救出出来たらしい。ハスミは…その、私が加減が出来なかったから少し入院生活になったけども…」

「ま、まあ本気でやり合うとなったら仕方ないっすよ。はっ!そうだ温泉開発部は!?カスミ達も大丈夫っすか!?」

「あぁ、あいつらも拘束こそしてるが死んじゃいない。まあ大半は禁断症状で苦しんでるが…今ミレニアムが中心となってレッドウィンターの雪を利用した薬を作っているそうだ。それまでは光の飴で鎮静化させる必要こそあるが、希望がないわけじゃない。」

「はーよかった…ODで死んでたとか寝覚が悪いっすからね…」

「温泉開発部に関しては、ハスミと同じかそれ以上に摂取しまくってるから治療がより辛いものになるとは言ってたけどな。それはともかく…イチカ、よくやった。」

「えぇっ!?そんな勿体無いっす!」

「“敵を倒すんじゃなくて正義のために救いたい”と寝言を言っていたのを聞いた部員がいた。報告だと戦闘前に突然狂気の笑い声をあげたり、感情剥き出しで突貫したともあったみたいだが…」

「(ギクッ)」

「それが本当だとしても“正義を実現”するために行動し、有効な作戦を立て部員達に的確な指示を与え、単身で温泉開発部の部長と対峙し捕らえた事は褒めるべき事だ。」

「あ、ありがたいお言葉…光栄っす…」

あの時私は“正義に繋がることなんだ”と自分に言い聞かせて戦っていたが…ちゃんとこうして正義に繋がることができてよかった。コハルはマシロのみならずハナコも救出し、正義実現委員会は全員命を落とすことなく戻ってきた。そして温泉開発部も重症ではあるものの誰一人欠けることなく済んだ。

良かった。私は“正義の行方”を見失っていなかったようだ。


「あとは私みたいな無事だった者に任せて寝ていろ。…それと、今度近接格闘戦の稽古をつけてやる。素質がありそうだからな。」

「………えっ?それって…」

安堵したのも束の間、イチカは去り際にツルギの言った言葉を繰り返し脳内で反復した。


“今度近接格闘戦の稽古をつけてやる”

“今度近接格闘戦の稽古をつけてやる”

“今度近接格闘戦の稽古をつけてやる”


正実モブF「こ、こんにちはっイチカ先輩!目が覚めたと聞いたのでお見舞いにき…」

「うわあああああああああ!!!!!!それだけは砂糖よりヤバいっすよおおおおおおおお!!!!!」

正実モブF「え、えぇっ!?」


─仲正イチカの苦労人ぶりは
     まだまだ続くのであった…─

        完

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