歌姫が笑顔になるまでの軌跡

歌姫が笑顔になるまでの軌跡


このssにはキャラ崩壊・設定捏造が含まれます

ご注意ください!!





「おーい、ウタ。起きろ、朝だぞ!!」


ああ、また朝が来た。


「いや~、さっきニュース・クーから新聞貰ったんだけど、俺たちスゲェことになってんな!

全部のページに俺たちの名前や写真があるぞ!!」


昨日、あの忌々しい天竜人に連れていかれそうになった私をルフィが助けてくれた…

私のせいでルフィは世界の敵になってしまった…


「これじゃあ、街に行って買い物すんのもむずかしいな。暫くは魚や果物とって食いつながねぇとなぁ。」


逃げ疲れて眠ってしまった私を、ルフィは一晩中抱きしめてくれた。

一晩中誰も襲ってこないか見張っていてくれた


私がこれを知ったのはちょうど『10回目』の朝だ




最初の時は、ルフィが目の前で死んだ

私は何もわからなくなって、聞いた覚えもない歌を歌って、世界を飲み込んだ

薄れていく意識の中で、真っ赤な血で染まったルフィだけが鮮明だった



「おーい、ウタ。起きろ、朝だぞ!!」


ルフィが起こしてくれたのを感じて、さっきのは夢だったんだと思った。

ルフィはちゃんと生きていると…


「いや~、さっきニュース・クーから新聞貰ったんだけど、俺たちスゲェことになってんな!

全部のページに俺たちの名前や写真があるぞ!!」


あれ?何かがおかしい…前にも一度同じようなこと聞いたような…


「これじゃあ、街に行って買い物すんのもむずかしいな。暫くは魚や果物とって食いつながねぇとなぁ。」


嫌な予感がする……このままじゃルフィが死んでしまうような予感が…

私がいるから…?


それから私は、ルフィが私を見捨ててくれるように振舞った。

心にもない酷いことを言った。理不尽に殴った。それでもルフィは私から離れなかった。

あまりにも心が苦しくて、ルフィを無視するので精一杯になってしまった。


そんな生活が一ヶ月も続いたころ、ようやくルフィは私の前から消えてくれた。

涙が枯れ果てるまで泣いた、一週間くらい動く気力も出なかった。

そんな私を、スモーカーさんとたしぎさんが見つけてくれた…そして、ルフィが死んでしまったことを教えてくれた。

私の前から消えたルフィは、すぐ近くで追手と戦い続けていた。私の知らない所で、私を守って、死んでしまった。




「おーい、ウタ。起きろ、朝だぞ!!」


三回目の朝、死んでしまったと聞いたルフィが、目の前にいる。


「いや~、さっきニュース・クーから新聞貰ったんだけど、俺たちスゲェことになってんな!

全部のページに俺たちの名前や写真があるぞ!!」


ここに来て、私たちに…いや、私に何が起こっているのかがわかった。

わかった瞬間、狂ってしまった。

私がいるからルフィは死んでしまうんだ。私が死ねば、ルフィは死ななくて済むんだ。

ナイフを自分の心臓に突き立てた私が最後に見た光景は…ルフィがルフィじゃなくなる、なにか別の存在なっていく光景…。

ルフィもまた、死んだも同然になっていた。




「おーい、ウタ。起きろ、朝だぞ!!」


四回目、どうやら『朝』がくると、私の体と心に一種のリセットがかかるようだ。

『前回』狂ってしまった心は、とりあえず正常に戻っているようだった。


「いや~、さっきニュース・クーから新聞貰ったんだけど、俺たちスゲェことになってんな!

全部のページに俺たちの名前や写真があるぞ!!」


『朝』がくる条件は、私がルフィの死を認識することだろう……なぜ『朝』くるようになったかはわからないけど…

私が死んでも、ルフィも死んでしまうなら…結局二人で逃げ続けるしか道はないのだ

『四回目』は『一回目』と同じように行動し、同じように終わってしまった。



「おーい、ウタ。起きろ、朝だぞ!!」

それから何回も『朝』が来た。その度にルフィは私を守り、死んでいった


一番こたえたのは、空島に定住したときだろう。

そう簡単に来れない場所だけあって、十数年はルフィと共に生きられた。

そして私とルフィの間に命が芽生えた…幸せだった。

もう大丈夫。今まで『朝』が来たのは、この場所で、この子を産んで、家族三人で生きていくためだったんだ。



破滅は突然訪れた。

私たちが幸せに暮らしてる十数年の間に、青海では世界を巻き込んだ大戦争が起こっていた。

その被害は空島にも及び、ルフィも子供も…私の目の前で消えていった。



「おーい、ウタ。起きろ、朝だぞ!!」


また『朝』が繰り返される。ルフィが起こしてくれて、ルフィが守ってくれて、ルフィが死んでしまって…

どうすればいい?どうすればルフィは死ななくて済む?どうすれば、私は彼を幸せにできる


「…助けて、ルフィ……助けて…」


決して言うまいと決めていた言葉が出てしまった。

なんて弱いんだろう。なんて愚かなんだろう。

ルフィは私を助けて死んでいくのに、更にルフィに助けを求めるのか。


「…ウタ、大丈夫だ。俺がそばに居る。絶対にお前を置いていかない。」


今までの『朝』に聞いた言葉では無かった。

なにかが変わり始める予感がして、それでも私はルフィに抱き着くことしかできなかった。


「俺が何とかして見せる…お前が笑っていられる世界にしてみせる…」


最後の『朝』が始まる‥‥


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