欲張りと欲しがり
頭ハッピー!
何となくR15くらいだそ!
デイビットがサーヴァントになっているぞ!
あとわたしは好きなカップリングには頭ハッピーでイチャイチャして欲しいぞ!
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「どうやら俺は、随分と欲張りになったようだ」
シーツに包まり、瞼が落ちつつある立香の髪の毛を撫でながらデイビットは小さく笑った。さっきまでお互いに熱に溺れるように抱き合っていたのかが嘘のように穏やかな空気に包まれている。彼の太い首筋に噛み跡が残っているのに気付きそっと撫でた。
「ごめんねデイビット、跡残っちゃった」
「気にする必要はない。サーヴァントの傷は魔力供給で治る。現に今の俺には十分すぎるくらいに魔力があるから直ぐに跡も消える……勿体ないがな」
そう囁きながら、似たような仕草でデイビットは白くて細い首筋に残った跡を撫でる。紅いそれはきちんと着物を着ることが出来れば隠れるものだ。
着物。ミス・クレーン筆頭に魔術礼装として拵えたそれは今回のレイシフトに適切なものであり、同行したサーヴァントであるデイビットにも同じものが渡された。
現代日本の小さな特異点。どうやらここでは何かのイベントがあるらしく着物を着ている人が多い。馴染むために用意された礼装だが、若い男が愛する女の晴れ姿に見惚れるのは当然といえよう。
仲良く着物デート(調査)を楽しんだあと、拠点となるホテルに入るやいなや「魔力供給」だなんて嘯きながら深く唇を合わせ、あとはお察しの通り。僅かに残った理性で着物を畳み、せめてシャワーと懇願する立香を宥めながらベッドに溺れた。
開けっ放しのクローゼットに置かれた着物を見て女は恥ずかしそうに男を睨む。それをなんともないように受け止めながら男は再び胸元に跡を残した。
「私、着付けなんて出来ないよ……ここは着物を着ている人が多いみたいだし着付けのサービスはあるけどさあ。もう……」
「着付けることなら可能だ」
「え、嘘!?デイビットって着物着たことあるの?」
「いや、今回が初めてだ。着付けて貰った際に構造は理解した。脱がせもしたからその逆にやれば着付けることは可能だ」
「脱がっ……じゃあデイビットに任せるからね?」
「任せてくれ。責任は俺にもあるからな」
なんとも言えない顔で口をもごもごと動かすその唇に惹かれるように顔を近付ける。その意図を理解して、少し困った顔で立香は目を閉じた。
合わせるだけだったものは舌で唇を開けることを乞うようになぞり、根負けして空いた口に舌をねじ込む。苦しそうな呻き声を聞きながらまだ慣れないのか、なんて賢さの欠片もない思考がよぎる。
流れるまま、その大きな手のひらが背すじをなぞったところでついに無理やり口を離した。
「もう!駄目!明日……もう今日だけど!調査あるんだから!」
「……」
「はいムッとしない!今回のサーヴァントは君だけなんだから」
「分かっている」
眉間に寄った皺をぐりぐりと指で解しながら立香は笑った。先程までの艶やかな姿とは打って変わって小さな子どものようだった。
「君のそういうところを見ると子どもっぽいって思っちゃうよ」
「子ども……いや君に関して欲深くなっただけだ」
「そうなの?」
「ああ。君と戦って、なんだかんだあって君のサーヴァントになって、君の近くにいれるようになった。近くにいるだけじゃ足りなくなった」
デイビットは立香の体を抱き締めながらシーツを掛け直す。じっと見つめる瞳は欲に濡れたものではなく、ただ純粋に愛しいと伝えていた。
「5分の枷が無くなったからだろうか。好きなものを好きなだけ記録出来るのはとても嬉しい。他のサーヴァントとの会話や君を覚えていることが出来るからな。いっただろう?俺は欲深くなったと」
人の体温に包まれて再びやってきた眠気を妨げるものはなく、呼吸がゆっくりとなってくる。眠そうな瞳でデイビットを見つめながら立香は優しく笑った。
「それじゃあ私は欲しがりだね。デイビットが欲張って欲しいと思ったものが欲しいから」
それは欲深くなった結果、手に入れたものは愛や恋と呼べるもので。其れを欲しがるということは、まるごと受け入れるということで。
デイビットは目を丸くして──子どものように笑った。