欠けた日
色々注意
︙
︙
︙
︙
そいつ等は、いつも見かけるゴロツキや海賊崩れとは何もかもが違っていた。
「ヘェ、確かに手長族と能力者のガキだな。……捕まえろ」
「「「「!!??」」」」
そいつ等は残虐で、無慈悲で、悪辣で、多数で……何より強かった。
「逃げろっ!!!!」
普段の軽妙さを全て捨てた兄弟の声に叩かれ、脇目も振らずに山へ逃げ込んだ。
川を、谷を、崖を越えて走り続けて、それでも執拗に迫る男達に追い回される内、1人また1人と逸れて気付けば皆散り散りになっていた。
「くれぐれも殺すなよ。大事な大事な商品だからな」
殺意は無い、けれどあまりにも重くねばつく悪意から逃げて、逃げて、逃げ回って。
何とか追手を振り切った時には、周りに誰も居なくなっていた。
「………」
疲労と空腹を抱えて、それでも身体に染み付いた経験と知識で山に潜んだ。
獣たちのざわめきが収まって、異質な男達が居なくなったと分かるまで、ひたすらに息を殺して身を潜め続けていた。
それは兄弟皆、同じで。――だから、気付くのが致命的に遅れてしまった。
「……だれか、あいつらを見なかったか」
1人、また1人と“家”に戻って、少しずつ揃う姿に安心して。……そしてようやく、欠けてしまったものに気が付いた。
欠けた数は、2つ。戻らないのは、あの日逃げろと叫んだ兄と一番下の小さな弟。
島の反対側にまで逃げていた迷子さえ自力で戻って来た後も、いっとう騒がしい2人が戻ってくる事は無かった。
まだ男達が残っていたらという恐怖を抑えつけて、山を、グレイターミナルを、街を――島中を探し回って。
そうしてようやく見付けたのは、踏みつけられたのか歪んでしまった麦わら帽子が1つだけ。
「アプー……ルフィ……!」
無力と外の理不尽さを突き付けられたその日。
自分達は兄弟を2人見失った。