様スレかきたいとこだけ
デート待ち合わせスレッタが駆け寄ってくる。エランはベンチから立ち上がりそれを迎えて、
「スレ――……う゛、ぁ?」
焼けるような激痛。胸に飛び込んできたスレッタの手に鈍く光るナイフが握られているのを確認して。
「だっ……騙してたんでしょう。私のこと?」
彼女の声は震え、目線は地に落ちて一向に合わない。叫び出したいほどの痛みに歯を食いしばりながらエランは壁に寄りかかり、ズルズルとしゃがみ込んだ。スレッタが叫ぶ。
「エランさんのふりをしてっ……エ、ランさん を、どこにやったんですか?い、生きてるんですか!?どうして、なんで私をっ……」
(そうか、そうだよな。
アイツじゃない俺なんてお前にとっては知らない男だよな)
血が抜けて身体が中から冷えていく感覚がする。ぼやけてくる視界の中でスレッタの顔を見上げて、やっぱり目は合わないことに自嘲する。
「私、き、……きす、も その先のことも、好きなっ……人と、したかった、です……!貴方、じゃない……!」
最後はもう嗚咽にかき消されて聞こえなかった。4号か。やっぱりアイツのこと好きだったんだな。お前丸わかりすぎるぞ。俺が利用するために真似して近づけるくらいには。
(でも……じゃあ、俺が“俺”として用意したこれは、もう必要ないのか)
ポケットの中に潜ませた小さな箱のことを考えながら、エランは目を閉じる。