桜の灰を、ハイビスカスの花畑に撒いて

桜の灰を、ハイビスカスの花畑に撒いて


水着が普段着になりつつあるBBに誘われ、シミュレーターに赴いた藤丸立香。彼女に連れられた先にあったのは、夕焼けに照らされる古風な学校の校舎だった。


(……)


昭和から平成初期の雰囲気を醸し出す、ありふれた木造二階建て。…そのありふれた校舎のそばに、真っ赤な炎の塊があった。

立香は校舎内に案内されながら考える。

あれは、木が燃やされているのだろうか? 地面の花びらを見るに桜なのだろうが……何故燃えている? それに何故ハイビスカスの花が手向けられて…。


「桜の木を燃やしたのはわたしです。まあ、今後の決意表明ってやつですかね。───ここはわたしにとって特別な場所、心機一転するには丁度良い場ですから。…ま、シミュレーターの再現だから風情もなにもないんですけどねー」


そう言って、BBが姿を変える。出会ったばかりの頃の、元のBBに。


「…BB?」

「───抱いてください。ここで、全てを塗り潰すために」


…ここは月海原学園旧校舎。

それは、BBが何だかんだと大事にしながらも、立ち入ることのできなかった場所。だからこそ、過去を塗り潰すにはうってつけの場所なのだ。


「…あぁ、そういうことか。こっちとしては願ったり叶ったりだけど」


流れるような手付きでズボンを脱いだ立香が、BBを押し倒す。BBはその一瞬で自らの霊衣を解き、髪を飾るリボン以外何も身につけていない状態となった。

…そして、自らの手で桜の木を焼き払った少女は───。


「───先輩、来て…♥」


───男根を容赦なく突き入れる立香を、躊躇うことなく受け入れた。


「ぅあ、あああッ♥♥♥」

「…なんか今更だけどさ、『先輩』って呼ぶ人のことはもう良いの?」

「ふぇっ?」


普段は頭の良い馬鹿を地で行くガラクタAIなBBだが、今回ばかりは立香の意図を即座に察した。…これは遠慮から来る発言ではない。元先輩を寝取りセックスのスパイスにしたいのだ。


「…どうでも良いです♥ 今のわたしにとっての元先輩は、心底どうでも良いただの雄もどきですっ♥ いっつもいっつも向こうの桜ばっかり見てて、正直ふざけんなって思ってましたぁっ♥ あんな節穴アイのクズオスこっちから願い下げですっ♥ 元先輩との記憶捨てたずるい桜ばっかり見るとか、見る目なさ過ぎですもんあの人ぉっ♥ だからもうあんな人達知りません♥♥♥ わたし、新しい恋に生きて愛を育みますっ♥♥♥」


BBが言葉を紡ぐ度、激しさを増すピストンで揺れるBBの爆乳。それが、立香の逞しい胸板に押し潰されてむにゅりと形を変える。元先輩が触れることすらしなかったものが、藤丸立香の思い通りにされていく。この時立香の内にあったのは、支配欲とでも言うべきものだった。

BBが大切にしてきた思い出をセックスで踏みにじり、BB自身にも罵倒させて存分に踏みにじらせる。自分の価値の大半がカラダにあることすら理解していないガラクタAIや、自分こそ上位者という失笑物の勘違いをしている無貌の神などには実感できない究極の快楽、そのひとつがこれだ。


「最高だ、最高だよBB! でもまだだ! おまえは自分の価値がカラダにあることを理解していない! おまえはメスブタだ! オレの下でアンアンヨがってるのがお似合いの家畜なんだよッ!!」

「ぁがッ♥ かひゅっ…♥♥♥」


立香が、BBの首を両手でギチギチと絞めつける。所謂首絞めプレイだが、立香はプレイ用の上手い絞め方ではない本気の絞め方を実行した。…上手い絞め方は知っているが、BB相手に遠慮することはないと考えたからだ。


「おまえは余計なことをせず、ただ下等メスブタとしてオレに組み敷かれていれば良いんだッ!!! 分かったかクソブタァッッ!!!」

「がっ♥ ぎッ♥ ぃい♥」


BBに対する暴力的なセックスを、BBの思い出の場所でする快感。…素晴らしい。

思考がどんどん暴力的になっていく。他の女性の前ですら早々見せないものに身を委ねられるのは、偏にBBがどうしようもないメスブタだからだ。今だけは、そのポンコツっぷりに感謝してやりたい。

そうして立香は、女に暴力を振るう禁断の快楽に酔いしれながら容赦なく射精した。


「オォォオオオオッッ!!!!」

「ァがっ♥♥♥♥ は、ぐッッ♥♥♥ …かひゅ…♥♥♥ が…♥♥♥♥♥♥♥」


BBを圧殺するつもりで全体重を掛ける。当然、首絞めも忘れずにだ。

…この時BBが見せた無様極まりないイキ顔を見た立香は、邪悪な笑みと共に全てを察した。

───このクソ女はもうオレの所有物だ、と。


───


BBの髪を鷲掴みにし、その顔をチンポ拭きタオルに用いて掃除をする。そうして憎まれ口ばかり叩く小綺麗な顔を思うさま穢し尽くすと、BBが得意げに語り始めた。


「元先輩の記憶、ホテップさんに頼んでゴミに出してもらおうかと思ったんですけどぉ…。…ふふ、先輩を称えるのに使えるので残すことにしました♥ ですから♥ これからもいーっぱい寝取りの快楽味わってくださいね? 先輩♥」


そう言って、愛しさを滲ませながら立香に抱きつくBB。そこに元先輩への罪悪感は一切ない。

それが───堕ちる前の無貌の神が好みそうな、邪悪極まる恋物語の結末だった。


───


そして、人理修復から数年後。ハイビスカスの花が散りばめられ、中央にキングサイズベッドが設置されたBBスタジオにて。

「ヴィヴ・ラ・立香〜♥♥♥ さあ始まりましたBBチャンネル♥ 今日はわたしの最愛の先輩にして、全ての雌の頂点に立つ唯一絶対の雄♥ 藤丸立香先輩にお越し頂……お゛っ♥♥♥ ちょ、まだ企画説明してなぁ゛♥♥♥」

「雑談しつつセックス見せつけてFCS教を布教するっていう手抜き企画でしょ? だったらさっさと始めようよ」

「ッ♥♥♥♥♥ もう、暴れん坊なんですからぁ…♥♥♥」

「というか聞いたよBB、水着と全裸をデフォ衣装にしてからBBチャンネルの視聴率が鰻登りなんだって?」


立香が、BBを組み敷いて好き勝手に腰を叩きつけている。組み敷かれたBBは水着の霊基第二(褐色肌)だった。


「あンッ♥♥♥ …はいっ♥ 雄もどきの皆さん、ほんと俗で分かりやすいですよねっ♥ 捕まえやすくて助かりますっ♥」


今やBBは、黒ギャル仲間の鈴鹿御前同様水着の方をデフォルト霊基として扱っていた。

たまご肌は褐色に。藤色の髪は脱色され薄紫に。全身を覆う衣装は下品極まりないクソビッチの着るような水着に。

立香が好む霊基第二を普段着とし、立香の気分で褐色肌かたまご肌かを切り替える。霊基第一はバカンスなどでたまに着るが、過去を想起させる黒衣の方はクローゼットの肥やしもかくやという状態だった。精々、表に出てきた無貌の神がたまに袖を通すくらいだ。

───BBは、それ程までに立香に心酔していたのだ。


「あ、捕まえた中にはぁっ、ホテップさんが操ってた頃のわたしとルルハワでセックスした方もいて、色々コメントしてましたぁっ♥♥♥」


それを聞いた途端、立香のピストンが苛立ちを含むものとなった。


「そっか……じゃあFCS教の勢力拡大がてら、その人達捕まえて去勢するかな…」

「ふふ♥ 嫉妬ですかぁ? 堕としたホテップさんに処女膜とか再生させてから、イケメンチンポでわたしを完全に自分の雌にした癖にぃ♥」

「そりゃするでしょ…! 人のものに何手を出してんだって!」

「あぁあんッ♥♥」


これがBBチャンネルであることも忘れた二人は、ただひたすらにセックスを見せつけていった。


───


BBチャンネル終了後…。

「…あれ、ホテップ。表に出てくるなんて珍しいね?」

「な、何故正体が…。外見はBBと同じ霊基第二のままのはず…」

「? そんなの雰囲気でわかるでしょ?」

「…っ…♥ そ、そんなことを言っても何も出ないぞ…?」

「あと、前から霊基第三より第二が気に入り始めてるの分かってたよ? BBに向ける羨望の視線が露骨だったし」

「…その一言で胸のときめきが少し萎えたぞ。君は私のことをなんだと思っているのかね?」

「えー、路地裏どころか往来でも即座にしゃぶってくれる都合の良い雌? クトゥルフ系とか見えてる核地雷だとばかり思ってたけど、肉体を得てる状態なら案外チョロいんだなって」

「これでも深淵の邪神だ、愚弄するのはやめたまえ」


憤慨するホテップだが、赤く染まった頬は隠しようがない。

立香を伴い即座にベッドインする辺り、ホテップも立香の前ではチョロインに過ぎないということだろう。


───


「こんなっ、こんな肉の快楽程度っ♥ 私は乗りこなせるはずなんだっ♥ このBBの身体も疑似餌のようなものでっ♥ いくらでも替えが利く程度の玩具なんだっ♥ なのにっ、なのにこんなっ♥♥♥」

「本体なんかよりずっと大切になってる、でしょ?」

「なんでっ♥ なんれ分かっへぇ♥♥♥」

「言ったろ? 雰囲気で分かるって、さッ!!」

「ぅオ゛ォ゛ぉほぉおおおお゛ッッ♥♥♥ ナカっ♥ ナカにいぃぃぃいい゛イ゛ッッ♥♥♥」


───


「───改めて言うが。この私をこんな身体に押し込めて、それを幸福だと認識させたのは君だ。…故に、君には責任を取ってもらう。私の人生をエスコートしたまえ。それが深淵を覗いた者の責務だ」

「了解了解、っと…!」

「んお゛ッ♥♥♥ そ、それはエスコートじゃな……ぁああッ♥♥♥ ガシマンだめぇッ♥♥♥ もっと欲しくなるぅ♥♥♥」


───


〈スキル強化〉

・無貌の月:EX→白濁に染まりし月:EX

最短チャージタイム:6→5

自身にパーティ全体の手札を固定する状態を付与<パーティメンバーが変更、またはカードがシャッフルされると強制解除>(3ターン)&自身に毎ターンスター獲得状態を付与(3ターン)&自身に毎ターンマスタースキルのチャージを99進める状態を付与(3ターン)▲


〈概念摘出〉

・常夏のレイ

効果:BB(SSR・ムーンキャンサー)装備時のみ、自身がフィールドにいる間、味方全体のArtsカード性能を20%アップ&Busterカード性能を20%アップ&Quickカード性能を20%アップ&マスタースキル発動時、味方全体のNPを10%増やす


ハイビスカス。『新しい恋』という花言葉を持つハワイの花。良くも悪くも今のわたしに相応しい花だと思う。

今のわたしは“桜”であって“桜”ではない。『純潔』ではないし、過去の恋をゴミ箱に捨てようとすらしたのだからを

だから、わたしはハイビスカスになる。虚しいだけの叶わぬ初恋を忘れ、目の前の恋を成就させるために。


───


私は邪神だ。外宇宙から端末を介しやってきた無貌の神だ。その、私が……恋をした。

端末の挙動がおかしくなるなど日常茶飯事であり、それは愉しむべきものだ。しかし、本体の挙動不審は初めての経験だった。


「おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ」


地球の哲学者の言葉を思い出す。自らを深淵の側とばかり思い込んでいた自分が、実は深淵を覗き込む側だったのか? 分からない。もうどうでも良かった。彼から与えられる脳が爆発しそうな幸福さえあれば、もうそれで良い。


それが、ホテップが“無貌の神”として行った最後の思考だった。

ここは藤丸立香の腕の中。電脳魔共々絡め取られた、飼育箱より淫らな鳥籠の中。

永劫に抜け出せない、雄のもたらすパラダイス。


───


解説:19年のエイプリルフールアプリで水着BBがドロップした『とこなつのレイ』をブラッシュアップしたもの。

性能としては深淵のラストリゾートのパワーアップ版。カード性能アップにはQuickが追加され、増加量が20%にアップ。さらにマスタースキル発動時の全体NP獲得まで追加された。


「くりかえす なつ のおもいで。

あざやかな なんごくのはなわ。あーろはー!」

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