桃色山茶花
・タチの男娼×ゾロ十郎
・妄想いっぱい
それでも良い方はこのままどうぞ
花街の片隅、夜更けの連れ込み宿の一室
酔客の声や三味線の音色が聞こえる中、この部屋だけは外から切り離されたように穏やかであった
布団の上では若い男娼が素肌に苔色の羽織を纏い、満足げに目を細める
白い肌は情事の熱を僅かに残し、胸元に小さな紅(あか)が名残惜しげに咲いている
その隣には若葉色の髪をした、これまた若い隻眼の男
いくつもの紅が咲いた身体に男娼の着ていた着物を纏い、薄明かりの中口元に笑みを浮かべながら盃を傾ける
男がまた盃を満たすと、男娼がにじり寄りゆらりと肩にしなだれかかる
羽織った着物越しに肩が触れ合い、小さく衣擦れの音が鳴る
「飲むか?」
男が盃を差し出すと、男娼はふるふると首を横に振った
そのまま盃を傾ける男を見上げ、袖に隠した指で膝に触れた
胡座をかいた膝頭をもどかしげにさすり、ゆっくりと太腿を撫でる
男はそれを止めるでもなしに眺めていたが、男娼の指先が下帯の前垂れをつまんだ直後、どさりと布団に組み敷かれた
「酒ぐらい落ち着いて飲ませろ」
男が舌打ちまじりに言うと、男娼はくすりと笑みを浮かべながら男の胸に走る傷をなぞる
男がひっくり返った盃をちらと見やると、太い首筋が露わになる
男娼はそこを目掛けて唇を押し付け、新たな紅を落とす
男が押し殺したような声をもらすと、羽織の袖がはらりと頬を撫でた
男の羽織っていた着物が布団に広がり、男娼は袖に視線を移す
そこに咲くのは桃色の山茶花
淡く美しい、大輪の花
酒を含んだ口を吸い合い、言葉を交わす
「お兄さん、大好きだよ」
「おれもだ」
「これからも、ずっと」
「そうか」
たとえ一夜の交わりでも、たとえ一夜の偽りでも
彼らは互いに愛を囁く
ずらした下帯からのぞくのは、天を仰ぐ二振の刀
雄雄しく勃ち上がるそれとは裏腹に、男の蜜口は待ちわびたとばかりに濡れている
男娼は密口に己をあてがい、ゆっくりと腰を推し進める
冷めた肌は再び熱を帯び、二人は再び重なり合った