染まり行く

染まり行く


オリジナル設定多いです。

黒ひげに囚われてるけどクルー達はくうくうしてません。












 ゾクリと身体に悪寒が走る。

 オペオペの実を食べたときと同じ感覚だ。あの一度だけのはずなのにもう何度も経験した感覚だ。

 それに続くのはドクリドクリと何かが入っていく感覚だ。

 自分の中に何かが注がれる感覚。自分のどこかが満ちていく感覚。

 それはまるで自分の中に器があって、そこに納めるべきものを納めていくような感覚だった。


 何かが入っていく度に、恐怖が中から湧いてくる。

 入らない。

 あふれでる。

 こぼれ落ちる。

 破裂してしまう。

 受け止めきれない。

 そんな恐怖と相対するのはどうしようもない歓喜だ。

 満たしたい。

 満たされたい。

 これじゃダメだ。

 これじゃ足りねェ。

 もっともっともっと。

 満たして、満たして、満たして、満たして、満たして……。


 自分の中からわき出るそれを頭をふって打ち消そうとする。だが、それは自分の中から消えはしない。多少静かになってもずっと耳元で囁き続けている。目をつむっても気づいたら目の前にあらわれている。

 初めてそれを感じたのはビッグ・マムを倒したときだ。あの時はただの気のせいだと思っていた。

 次に感じたのは黒ひげと交戦したときだ。その時は気づかないふりをした。

 そして今。黒ひげに囚われた現在。もう目を背けることは出来なくなっていた。

 欲望は日増しに強くなる。渇望はいつまでも満たされねェ。

 頭の中で理解する。自分はそのために産まれてきたのだと。

 心の中でどこか諦める。やがて理性は本能にはね除けられるのだと。

 だって、だって……そうじゃなきゃ認めねェ。

 そうじゃねェと……この足に納得する理由を与えられねェ。

 足を覆っている布をめくる。隠していた足があらわになる。

 おれの足は……真っ白になって動かなくなっていた。



 一番最初は何もなかった。

 でも、『このままだと受け入れきれない』と思った瞬間、それは始まった。

 初めは髪で、その次は足だった。

 何かが入っていく度に、身体の末端からじわじわと白が侵食していった。侵食していった場所は動かすことはおろか、感覚すらなくなっていた。

 白は故郷の色だ。……もう遠い遠いフレバンスの懐かしい色だ。

 白は雪の色だ。大好きなコラさんと別れたときの色だ。

 そして何より……白は珀鉛の色だ。おれをあの時蝕んだ死の色だ。

 肌が白くなればなるほど、この世界との別れを意識する。白が身体に広がる度に、自分が死ぬことを自覚する。

 やがてこれは全身を覆い、おれという人格はなくなるのだろう。

 だって、これが始まってから夢に見るのだ。

 十分に注がれ、満たされ、真っ白になったおれが大きな何かに繋がり、使われるべき存在の手へ渡る夢を。

 恐ろしい夢だ。拒絶するべき夢だ。

 だが、それ以上に恐ろしいのは――


 ――それをどこかで待ち望んでいる自分がいることだった。




「ぅ……あァ……」

 もう無理だと思っても、容赦なく流れ込んでくる。それをきちんと中へ入れるために、またおれのどこかを使って器が補強されるのだろう。

 もう足は付け根まで白くなっていた。次はどこがこうなるのだろうか。

「え?……あ、あァ……!」

 身体にいつも通り異常がはしる。今回はどこが白くなるのかすぐにわかった。

「い、嫌だ!嫌だやめてくれ!!」

 だって、それはおれが一番知っている場所だ。

「お願いだ!お願いだから、どうか、どうか――」

 そこはおれが一番使っている部位だ。

「――手だけは止めてくれ!」

 その部分はおれの命と言っても同義のものだった。


「お願いします。止めてください。お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします……」

 いくら懇願しても侵食は止まらねェ。ドクドクと何かが増していくのに同調するようにジワジワと白い部分が増えていく。

 また繋げてもらった大事な手が、能力を使うのに必要な手が、怪我を治すために大切にしていた手が、どんどん白くなっていく。それを、おれはただ見ることしか出来なかった。

「嫌だ……いや、だ…………」

 イヤイヤと首をふる自分に医者としての自分が教えてくる。

 末端から白くなるなら手がそうなるのは道理じゃねェか。

 むしろ足の付け根まで白くなったあとなんだから遅い方だ。

 冷酷に、冷徹に、あくまで事実を伝えてくる。


 ……わかってる。

 そんなことはとっくにわかってる。

 でも、それでも嫌だったんだ。

 例え視覚と触覚以外の感覚がなくなったとしても、他の臓器を犠牲にしたとしても……手だけは嫌だったんだ。

 だって、手は、おれの手は――

「ぃ……ャ……」

 ――おれの存在価値そのものだったんだ。



 

「ヒッ……うぅ……ぁァ……」

 最終的に侵食は腕の付け根まで及んでいた。まるで今まで抑えていた反動が一気にきたかのようだった。

 ポタポタと涙が落ちていく。おれはそれを拭うことすら出来なくなっていた。

 その事実に気づいた瞬間、理性のどこかがトロリと溶け落ちる。空いた場所を器としての自覚が侵食していく。


 大事なのは必要な量を集めること。

 それ以外は些末なこと。

 集めて捧げられるのなら、それ以外はどうでもいいのだ。

 周りはもちろん、自分のことも。

 溜め込むために自分を切り捨てるのは当たり前。

 捧げるまで生きていたらそれで十分。

 だから、満たしたい、満たさないと、満たさなきゃ、満たすべきだ、満たさなければ。

 はやく、はやくはやくはやくはやくはやくはやく――


「――嫌だ!」

 もう動かねェ四肢の代わりに声をあげる。夢から覚めるように理性を取り戻す。

 ……例え、最後には全て染まりきるのだとしてもそれは今じゃねェ。今そうなったら今までの努力が無駄になる。

 だから、最後の一片が染まるまでせめてもの抵抗を。

 だって、それが今のおれに出来る全てだ。


















Q.器としての本能って何なの

A.このSS書くために考えた設定。fateにそんなものはない

ぶっちゃけるとただの性癖

一応詳細書くけど採用してもいいししなくてもいい


器としての役割が結構大変(身体機能を犠牲にしたりする)だから裏切らないようにするためのもの。造られた段階で器としての役割を果たすことが存在理由で至上の喜びと組み込まれており、無意識下に役割をこなそうとする。

家にいれば本能の制御を知れたかもしれないが、その場合は教育(洗脳)によって意識的に器としての役割を果たそうとするだろう。


本能の段階は二つ

第一段階

第二段階の条件を満たすために、ゴムゴムあるいはオペオペの実の能力者の気配をたどって各地を移動するようになる。まだ人格はある。

第二段階

条件(ゴムゴムやオペオペの実の能力者に出会う。あるいは贄を取り込む)を満たすことで発動。第一段階までであった人格が消え去り器としての役割とワンピースの起動のために行動する。具体的に言うとゴムゴムの実やオペオペの実の能力者に隷属したり積極的に贄を取り込もうとしたりする。

また第二段階に入った器が呼び掛けることでゴムゴムやオペオペの実の覚醒が促される(=ジョイボーイやワーテルの精神が目覚める)


この本能のせいでたとえ家から逃げたとしても役割からは逃げられなくなる。

本来ならロー(器)はルフィ(ゴムゴムの実の能力者)に会った時点で第二段階に入るはずだが、オペオペの実を食べていたことで条件がバグって第二段階にうまく入れなかった。もう一つの条件を満たした(贄がジャンジャン入ってる)のに本能に抗えているのも同じ理由。

仮にローがオペオペの実を食べていなかったら、ルフィに初めて会ったときに『お会いしとうございました。ジョイボーイ様』なんて恍惚とした表情で言いながら跪いていたかもしれない。


発案はワーテル。こいつの方が人の心理解してるので……。

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