【来る年、君と行きたい】
※時間軸はブルーロックのオフ期(作中のU20戦後のオフ期間)の冬休みバージョンといった感じです
※ネオエゴ期間中の中休みといった感じで、話が進みます
※烏と新年の初詣に行く緩い日常話です
「なぁ、氷織………年末年始、俺ん家来んか?」
『へ?』
「適当に法螺吹いて、一緒に初詣行こうや」
『………いぃの?』
「全然えぇよ 何なら俺が誤魔化したろか?」
『………ぅ…流石に悪いよ』
「大丈夫やって、それに…氷織も吹っ切れおったしな 楽しい事しようや…」
『……烏』
「駄目か?」
『ッぅぅん………行きたいッ…』
「あんがとな」
ぎゅうと抱き締められる感覚
烏の身体は何だかポカポカで暖かくて、烏の匂いも近くて、離れ難くなってまう
ネオエゴイストリーグの中休み、年末年始という事もあって、配属先チームのメンバーやマスター達も休養期間と言うことで、短めの冬休みに入った所で、僕は烏のお家にお邪魔させて貰う事になった
―12/30―
『お邪魔します…』
「そんな畏まらんでえぇって…」
『……だって、まだ慣れへんもん…///』
「んふ、初でかぁわえぇね…」
『ッ////』
玄関先で誂われるけど、そもそもお友達なんて全然居らんかったから…それに好きな子も居らんかったし、友達とか恋人のお家にお邪魔させて貰う経験なんか無くって…
どうしても緊張してまって…背筋も変に伸ばそうとして、足取りもぎこちなくなってまう
ソっと手を握られて、連れて行かれた先には、こんもりした見慣れない物があった
『………烏、これって…』
「炬燵、入ったこと無いんやろ?」
『ぅん…初めて』
「そっかぁ……ほな、先入んな」
『ぅん、失礼します…』
もそもそ炬燵に足を入れれば、ほかほか温かくて…少し冷えた身体がじんわり暖まる
『ふわ…!暖かい…!』
「ほれ、もっと足入れぇや寒いやろ」
奥の方まで足を伸ばすと暖かいのに包まれて、ホッと背と胸の内が緩む
「気持ちえぇやろ?」
『ぅん…////暖かくて………ホッとする…』
ぽてっと頭をちゃぶ台部分に乗せて、足を伸ばせば反対側の烏の足に触れる
烏は僕の事を熱っぽい視線で見つめてきて、そろっと足先を合わせてふにふにと悪戯してくる
優しい目をしてて、ちょっとドキドキしちゃって悔しい
『ッ…!////』
「ふはッ…やっとこっち見よった」
『…からす』
「何や?」
『………////こんなに、ドキドキして…暖かくて…幸せなの、烏と一緒だからかな…?』
「!俺と年末年始一緒なん、嬉しいんか?」
『……うちの、家族に何でもかんでも管理されて強要されて、息出来ひんよりずっとえぇ』
「そかそか……素直に言えるようになったやん」
優しく伸された手は僕の頬に触れる
ふに、ふに、と優しく頬を突っついたり、揉んだり、撫でる手が心地良くて少しずつ呼吸も視界も緩んでふわふわと浮ついてくる
烏の手、大きくて暖かくて…でも、絶対に触れ過ぎたり、僕の意思を尊重して引いてくれる思い遣りに酷く安心感を覚えた
「小腹減っとらん?何か持ってくるわ」
『ぁ……烏、僕、お蜜柑とアイス…食べてみたい』
「えぇで、丁度雪見だいふくあるから食べよか」
『!!雪見だいふく!初めて…!』
「んふふ……かわえぇね氷織、皆初めてやな」
『……/////だめ…?』
「えぇよ持ってきたげるな」
『ありがとう、烏…////』
よっこいしょ、と炬燵を離れ、キッチンの方へ消えていく烏
当たり前やけど、静かで暖かい雰囲気や烏の匂いに安心して、少しうとうとと微睡みが顔を出す
ふわふわと微睡んでいると、サーッと襖が開く音がした
「ほい、蜜柑と雪見だいふく」
『ありがとぉ…』
「溶けとるなぁ…ほら、蜜柑剥いたるからほら、あ~ん」
『…////ぁ』
ペリペリとお蜜柑の皮を剥いてくれる烏
ぷちっ、ぷちっと蜜柑の房を千切ると、僕に差し出してくれる
あ、と開いた口に放り込まれるお蜜柑
薄皮を噛み破ると、甘酸っぱい果汁が溢れ、口の中に溢れ出す
『!……おいしぃ…////』
「婆ちゃんから甘いやつもろたからな」
『んむ…』
次々に放り込まれるお蜜柑を咀嚼し、溢れた甘酸っぱい果汁を飲み下す
一個のお蜜柑を烏の手から剥いて貰い、そのお蜜柑を食べ終えると、烏が言う
「そろそろ雪見だいふく、食べ頃やな」
『食べ頃があるん?』
「冷凍庫から出したばっかはキンキンで楊枝も通らんからな、今なら刺さるし、求肥もえぇ柔こさやろ」
ソっと差し出された赤いパッケージに白い容器のアイスクリーム
大福みたいに求肥に包まれたバニラアイス
初めてのそれを丁寧にパッケージを剥がすと、二又の楊枝と打粉のされているまだ冷たい大福タイプのアイスクリームが2つ、鎮座している
『いただきます』
求肥を超えてバニラアイスの入った大福にピンクの楊枝を突き刺し、ソっと口にする
はむっと噛みしめると、ふにゅんとした求肥の食感、バニラの甘い匂いに、冷たくて甘いバニラアイスの味
暖かい炬燵の中で楽しむ冷たくて美味しいアイスクリームに思わず頬を押さえた
『!もちもちで甘い』
「口に合ったか?」
『美味しい…!今度、コンビニ寄った時にも買おう?』
「えぇね、今度は半分個出来るの買おか」
『うん…!』
美味しく頂いてると、烏の視線に気づく
優しい目をしてて、僕をジッと見つめてる
「かわえぇ顔」
『ん/////』
のんびりと過す一日、初めて心を許している、好きな人と過す年末は胸がポカポカして、とても楽しくて、烏にとっては普通だろうけど…僕にとって、この年末年始は忘れられない思い出になりそうだ
―12/31―
2023年、最後の日
烏のベッドで目を覚ませば、目の前には烏の寝顔
一緒に寝たいってわがままを聞いてくれて、一緒のベッドでくっつき合いながら眠った
ホカホカのお布団の中で暖かい烏の腕の中で眠って、朝起きたら少し幼く見える寝顔を覗き見る
烏、結構寝顔は幼いというか、少し可愛く見える
それに、睫毛も結構長い
ソっと胸に耳を当てれば緩やかな鼓動の音がして、安心感でまた瞼が落ちてくる
『もう、ちょっとだけ…』
緩やかに暖かい微睡みへ落ちていく
▲▲▲▲
「〜〜〜〜ッ!!!!!!!!」
氷織が、胸元へ擦り寄りながら二度寝した
可 愛 過 ぎ る や ろ !!
てか、俺の目元の泣き黒子触っとったし抱き着いて二度寝かますわ、『もうちょっとだけ…』と呟いて寝てまうし…
狸寝入りしたせいか、くっそかわえぇの見てもうて、萌え死にそうなんやが!?!?!?!?!?
一応事前連絡で、ばあちゃん家に大掃除の手伝いに出てる両親と姉貴に氷織が泊まりに来る事は伝えてあるけど、後で母さんと姉貴に氷織が揉みくちゃにされる未来が見える…
実際氷織はかわえぇ、別嬪さんやけど、正直家族にもあんまり触れさせた無い
だって、俺が氷織の初めてで一番の大事な人間やもん
「ッ……////氷織、ほら、起きぃ」
『ん〜〜………?』
ふわふわの部屋着に包まれた氷織の肩をポンポンして起こすと、目をシパシパ瞬かせながら氷織は目を覚ます
『なにぃ…?からす………』
「ほれ、起きぃや 朝ご飯にしよ」
『ぅん………』
「昼にはうちの親達も帰ってくっから、挨拶しよな」
『………!!ぁ、挨拶!?』
「付き合ってるし、挨拶大事やろ〜?」
『………怒られない…?』
「寧ろ喜ばれるで?“旅人が別嬪さん連れてきた”って…うちの家族は別に性別とか気にせぇへんよ」
『そ、ぅかな………』
「大丈夫や、何か言おうもんなら黙らせたる 家族でも容赦せぇへんで」
不安げな氷織の頬を包んで、優しく断言してやれば、安心したのか嬉しそうに微笑む氷織
アカン、至近距離で見る氷織の笑顔の破壊力ヤバい…
氷織を連れて一階に降り、軽く顔を洗ったり、歯磨きを済ませ、昨日のうちに炊飯セットした白飯を蒸らしてかき混ぜたり、味噌汁や冷凍の鮭を焼いたりと朝飯の準備をする
洗顔とかを終えた氷織が洗面所から出てくると、丁度塩鮭が焼けた
少し冷ましながら、ご飯と味噌汁、あと氷織が持ってきてくれた手土産の千枚漬けを椀と皿に盛り、テーブルに並べる
『…!普通の、朝ご飯…』
「初めてか?」
『うん、家だと栄養面キッチリし過ぎてあんま美味しくないし…』
「そかそか…ご飯お代わりしてもえぇからな」
二人で手を合わせ、「『頂きます』」と声に出す
お互いに塩鮭、味噌汁、白飯、箸休めの千枚漬けを各々箸を伸ばす
氷織の好物は秋刀魚の塩焼きだが、塩鮭も好きな様で、塩鮭を解し、身を白飯の上に乗せてもぐもぐと頬張る姿は愛らしい
嬉しそうにニコニコしながら食っとって、俺も嬉しくなる
「美味いか?」
『…(もぐもぐ)………ゴクン……うん、美味しい』
『烏や、ブルーロックの皆とか、ユースの皆と食べるご飯、楽しくて…僕は好き…////』
白い顔を赤らめて、嬉しそうにはにかんで、氷織は真っ直ぐそう言った
素直に言葉にされた思いに嬉しくなって、少し目頭が熱ぅなる
少しずつ、氷織は感情を取り戻して、少しずつ人間らしく、少しずつ笑う機会も増えた
それが、俺の近くで起きて、俺に笑い掛けてくれるのが堪らんくらい嬉しくて、ずっと胸がポカポカしとって…
ほんま、コイツにゃ敵わへんなぁ…
楽しく話しながら食い進め、綺麗に皿には塩鮭の骨だけが残った
「『ご馳走さん/様でした』」
皿や椀、小骨をビニール袋に入れて生ゴミ用ゴミ箱に入れて、リビングのテレビの天気予報を見ながら氷織と皿洗いをする
なるべく明後日の新年2日目、一緒に初詣デートに行きたいから晴れてほしいけどな
?「ただいま〜」
そうこう考えてると、両親らが帰ってきた
『おかえりなさい』と、氷織が顔を出すと、母さんと姉貴から黄色い悲鳴が上がった
烏母「きゃ~!氷織くんいらっしゃい!お迎えしてくれたの?ありがと〜!!まぁ〜!こんな可愛い子がお出迎えしてくれるなんて!旅人もヤるじゃない!」
烏姉「はぁ〜!ほんま羊くんかわえぇわ〜!!髪の毛ふわサラやし、頬っペもふにふにで、しかも何!?これジェラピケ!?待って、部屋着にジェラピケ着こなせんの!?かわえぇの擬人化か!?」
………回収した方がえぇな
多分絶対氷織、マシンガントークに気圧されてオロオロしとるやろから…
「これ!母さん、姉貴!氷織困らせんなや!!」
『わぁ〜ッ!!待って!髪、ぐしゃぐしゃになっちゃいますからッ…!』
案の定、母さんと姉貴のなでなでアタックを食らっとった
でも、何だか氷織は嬉しそうに笑っとる
『あ、ふふふッ…////擽ったいわぁ…///』
烏母「やだ!氷織くん頬っぺぷにっぷにや!」
「母さん!氷織を離したれって!」
『お母さん、もう止めて〜////』
烏姉「氷織くんほんまかわえぇ〜!髪もサラサラ〜♡」
『た、旅人くん〜////助けて…////』
「もうえぇ加減にせぇって!母さん、姉貴!んな撫でまくったら氷織が削れる!」
撫でくり回されて、このままやと氷織が削れて無くなりそうや…
何とか母さん達から引き離すと、丁度良く親父が入ってきた
烏父「二人共僕に荷物全部任せて先行かないでよ〜」
烏父「おや、氷織くん…いらっしゃい そう言えばお泊りに来てるんだったね」
『旅人くんのお父さん……お邪魔させてもろてます』
烏父「さて、お母さん、お姉ちゃん、氷織くん困ってるから撫でくり回すの止めようね」
親父が軽く氷織の頭をポンポンすると、母さんと姉貴の肩を掴んで引き剥がしてくれた
烏父「さて、大掃除の準備をしようか」
各々掃除用具を持って大掃除を始める
俺と氷織は各部屋の掃除機とホコリを払う係になった
氷織にモップやハンディモップを任せて埃をパタパタして貰おうと思う
モップでフローリングを綺麗にして行ったり来たりしたりしとってかわえぇ
俺はラグやカーペットの細かい埃やゴミを掃除機で吸う
粗方家族全員と氷織の大掃除を終え、夕方になると各々炬燵に潜り込む
勿論、氷織は俺の膝の上に座って貰った
烏父「氷織くん蜜柑いるかい?」
『あ、頂きます』
烏母「氷織くん、海老は平気?アレルギーとか無い?年越しお蕎麦に海老天乗せても大丈夫かしら?」
『アレルギーは…特には無いです』
「お客さんやからな、氷織 海老天2本貰っとき」
『いいの?』
烏姉「大丈夫!旅人から氷織くん泊まりに来るって連絡あったから海老天用の海老多めに買ったからね」
烏母「お蕎麦ならお代わりも出来るからね!」
『ありがとう御座います…!』
「ぁ゙〜〜〜……ふわふわや…」
烏姉「ちょっと旅人!氷織くんを独り占めすんのズルい!!」
わいわい賑やかな雰囲気に、自分が居る
家では、こんなに温かくて賑やかな雰囲気も、真っ直ぐで擽ったい愛情とかも、無い
だからか、じんわり目頭が熱ぅなって、ホロリと雫が零れ落ちた
烏母「氷織くんッ!?大丈夫!?」
『あ………ぃえ、気にせんでくださぃ…』
「………氷織、」
ギュッと烏に抱き締められる
強く、離さないように回された腕、僕の肩口に顔を埋めた烏は優しい声音で囁いた
「いつでも俺ん家来ぃ……家族も……俺も、大歓迎やからな」
『……ッ…ぅん…!』
烏の腕の中で僕は笑う
暖かい雰囲気の中、僕は烏とご家族の皆さんと年末年始特番の番組を見ながら年越しお蕎麦を食べる
烏のお母さんに2本も海老天を頂いて、サクサク衣とお汁を吸って柔らかくなった天ぷら衣とを楽しむ
「氷織、蒲鉾いるか?」
『ん!食べる』
お汁を飲みながらほっこりしていると、お母さん達が気付いたらお布団に入ってて、炬燵で烏と二人っきりになる
「氷織、そろそろ年が明けるな」
『そやね………烏、来年も宜しくね』
「ん、来年も宜しくな氷織」
△◯△◯△◯△◯△◯△
―2024_1/1―
『ん…………?ぁれ…?』
「おはよ、氷織」
『ぉはよぉ……////』
「おはよ、明けましておめでとうな氷織」
『………明けましておめでとう、烏////今年も宜しゅうな?』
「ああ、宜しゅう」
烏の手が僕の頬を撫でる
コツン、と合わされる額
触れ合う温度が愛おしくて、絡まる視線が嬉しくて、思わず口角が緩んだ
『烏、今年も近くに居てね…?』
「近くやなくて隣……やろ?」
「これからもずっと、傍に居ってくれや」
ちゅ、と触れ合う唇
凄く優しい瞳に見つめられて、思わずギュウッと抱き着いた
『!!………ぅん』
烏母「明けましておめでとう〜!!はい、旅人と氷織くんのお年玉!」
「サンキュー母さん」
『あ、ありがとうございます…////』
烏母「旅人、明日初詣行くやろ?氷織くんと行ってきな お年玉と別で少し入れといたから!」
「おおきにな母さん」
『へ!?いいんですか…?』
烏母「いいのいいの!氷織くん、楽しんできてね!」
烏姉「いいなぁ〜氷織くんと初詣デート」
『でッ…!?//////』
―2024_1/2―
烏の家の近くの神社
お参りやおみくじ、お守りを買ったり、出店のご飯を買う人で賑わう境内
逸れへんように、と烏と繋いだ手が暖かい
「氷織は初詣初めてか?」
『初詣としては初めてやと思うな…お参りとかは親に連れられて行ったことあるけど、賑やかやね』
「そか……まず今年のお参り済ませてお守り買ったら出店なり、おみくじとか引きに行こか」
『うん…!』
先ずはお参り
確かお参りのお作法は二礼二拍一礼…やったっけ…?
ポケットに忍ばせてた五十円玉を入れて、烏と一緒にお辞儀し、2回拍手をし、また一礼
―どうか、今年も烏と、皆と、元気に楽しく過ごせます様に………―
お参りを終えて、社務所で健康祈願と交通安全のお守りをお揃いで買うと、社務所の近くで巫女さんが甘酒を差し出してくる
《温かい甘酒は如何ですか?》
「氷織、甘酒飲むか?」
『うん!甘酒、初めてや…!』
甘酒の入った紙コップを受け取って、口に含むとほわ〜と甘くてちょっとふわん…と鼻の中で広がる甘い匂いがして、美味しい…!
『烏!これ美味しいね〜』
「ぶふッ…!かぁわえぇな…」
甘酒の中に入った塊を口に含んで溶かしていくと、ふわ~と甘さと何だかほわんとお酒っぽい感じで頭がちょっとふわふわする
『あれ…?なんか…ふわふわする……////』
「へ?甘酒はアルコール分ほぼ無いんやなかったか…?」
『ん〜……////ぽかぽか、する…////』
「心配やから、ちょっと休んでから飯食おか」
『うん〜…////』
甘酒のめっちゃ少ないアルコール分で酔ってまったのか、ふやふやしてる氷織を境内の参拝者用トイレ近くの休憩所に座って氷織の酔いが醒めるのを待つ
つーかぽや〜ってしとってへにゃへにゃ〜って笑ってる氷織に向けられる厭らしい視線に牽制を向ける
ぽやぽやしとる氷織可愛過ぎんか???
てか、酒弱いな?!?もしかして
マジで大人になってからアルハラとか起こされたら堪ったもんや無いし、やっぱ俺が近くに居てやらんと…
にへにへ笑う氷織の肩を引き寄せて、抱き寄せて周りからの視線から守る
少しして、ぽや〜っとした雰囲気が治まると肩を抱かれてるのに気付いたのか頬を赤らめる氷織
『ぁ………////からす?何で……?////』
「お前甘酒程度で酔うんやな……心配やから俺、ずっと側に居るわ」
『!………/////ぅ、ん…』
さっきっからかわえぇ過ぎるから、いちゃついて牽制する
ちと視線が無くなったら出店巡るか
約十分後、視線が疎らになり氷織の酔いも大分醒めたし、手ぇ繋いで出店群へと足を向ける
『烏、何食べようか?』
「氷織は何食いたいかで決まっかね……半分個しよか」
『!あ、たこ焼き!たこ焼き食べたい』
「えぇな、おっちゃん、たこ焼き6個入り一つ!」
出「あいよ〜!」
トロトロと生地が注がれ、ネギ、紅生姜、天かす、削り節、タコの切身と中に放り込まれて綺麗にまぁるくくるくる焼かれていく様に好奇心で釘付けになる
手慣れた屋台のおじさんの手でどんどん真ん丸のたこ焼きが形作られていくのに目を奪われながら出来上がりを待つ
ワクワクしてると出来上がったたこ焼きの乗った紙トレーを差し出してくれたおじさん
竹串を2本分刺してくれたおじさんが優しげに笑いながら
出「アチアチだからな、ふーふーして食べな坊主ら」
『あ、ありがとうございます!』
「あんがとなおっちゃん」
「ほれ、氷織 先に食いな」
『え?えぇの……?』
「よく祭りでたこ焼き作ってて贔屓にしとるおっちゃんのたこ焼きやから美味いで?」
『じゃ、じゃあ……ぃ、いただきます…』
ふー、ふーって息を吹きかけて、烏の差し出すたこ焼きの一個刺さった竹串をソっと口に含む
ふんわり歯が通って、じゅわ〜ってお出汁の旨みやネギや生姜の辛み、揚げ玉のサクサク感やタコさんの美味しさや歯応えが楽しくて、美味しくて、ぱぁ〜って口角が緩む
『ぉいしい…!ふわふわでとろとろで…お出汁がじゅわ〜ってタコさんがぷりぷりで…』
「随分旨かったんやな〜wめっちゃ話すやん」
『ぁ………//////』
テンションが高まって、思わず声が大きくなって、早口で喋っちゃって恥ずかしくなってしまって、思わずもぐもぐ咀嚼して飲み込んだら顔を覆い隠す
「かぁわえぇ……♡」
『ぁ……////さっきのは忘れて…////』
「いーやや もっとかわえぇ所見させてや」
『ぅ〜〜〜……////』
烏は僕の頬に触れて、視線を合わされる
優しそうに笑う烏がもっと見せてって言われて、恥ずかしいけど……烏が言うなら…っていい…かなって思う
たこ焼きを頬張りながらたこ焼きの入ったビニール袋と逆の手で手を繋がれてまた別の出店の方へ導かれる
「お好み焼き買おかな〜」
『烏、一口だけ食べてもえぇ…?』
「半分くらい食べてえぇで、半分個で一緒に食べよや」
『ぅん////』
一旦休憩所のベンチに腰掛けて、烏を待つ
その間少し冷めて食べやすくなったたこ焼きを食べる
家に居たら絶対に食べられないソースやマヨネーズのジャンキーな味、お出汁の効いたふわふわの生地に楽しい食感に舌鼓を打っていると、烏が帰ってきた
『おかえり』
「戻ったで、ほい」
『え?』
「あんまこういうの食べる機会無いお前が食いな?たまにはこういうの好きなだけ食ったってえぇやんか」
『……////ぁりがと』
1枚のお好み焼きを半分に切る烏
切り分けられたもう半分を摘み、口に含む
たこ焼きとはまた違ったふわふわの生地の中に沢山キャベツが入ってて食感が楽しくて、中に入った豚肉もジューシーでまた笑みが溢れる
「これも旨いやろ?」
『うん、烏と食べるともっと美味しい…///』
「!嬉しいこと言ってくれるやん…////」
『あ………////んッ…』
ソっと頬にキスされて、離れる烏は凄く優しい顔をしてて…
全身がぶわわって熱ぅなって、顔がどんどん熱くなって、凄く恥ずかしいのに凄く嬉しくて…
『烏////人前でやらんで…』
「スマンスマン、でもあんま人前でかわえぇ事言っとってると俺以外の連中に掻っ攫われるぞ?」
『ん……////でも、恥ずかしいからあんまりしないでね…』
二人でお好み焼きを食べ終えると、烏がふとこう言った
「最後におみくじ引いてから、回転焼きお土産に買って帰ろか」
『もう帰るん?』
「あんま帰りたないかもやけど、あの両親が騒いで大事起こされるのは、氷織も嫌やろ?」
『ん、せやね…』
「でも、辛い時やしんどい時は俺筆頭にユースの奴らやブルーロックで知り合った奴ら頼ってえぇかんな、特に俺は一番近くに居るんやから、いつでも家来てえぇからな」
『………/////おおきに』
拝殿前のおみくじ売り場に百円を入れて、ふとコレ良いかなって引いたおみくじを開くと、【大吉】の文字
『烏!大吉引いた!』
「良かったやん、で俺のは………【小吉】か…微妙やな〜 しかも人間関係の欄、喧嘩に巻き込まれやすいって有るわ」
『また凛くんや士道くんとか、馬狼くんと凪くんとかみたいなあんま仲良ぉくない人達の間に挟まれんのかな〜…』
「かもな…まーた胃薬とお友達になるかもな…」
「で、氷織の大吉はどうやった?」
『僕のは……勉学は日々精進、恋愛は……////成果、実る………』
「ほぉ〜???じゃあ今度ちょっとステップアップしよか?」
『〜〜〜ッ!/////ぉ、お手柔らかに…頼んます…』
おみくじを括って、鳥居の近くに立てられていた回転焼きの出店のおばさんに烏のお家の分と、帰り際烏と僕の食べる分で8つ回転焼きを買い、おばさんは親切に僕と烏が食べ歩く分を別の小さめの紙袋に入れてくれた
「ほい、カスタードのな」
『おおきに、温かいなぁ…』
「焼き立てやからな、俺のあんこのもいるか?」
『じゃあカスタードのも、はい半分個』
ホカホカの回転焼きを割ると、あんことカスタードクリームの甘いいい匂い
二人でお互いのを分けっこしながら帰る帰り道
暖かい回転焼きを頬張りながら、烏と手を繋いで烏のお家へと帰る
慣れないけど美味しいジャンキーなたこ焼きやお好み焼き、甘い回転焼きを楽しみながら烏と沢山話して、今までやったことの無かった炬燵でお蜜柑やアイス、家族と団欒、年越しお蕎麦を食べたり、初詣でお参りしたり、お守りやおみくじを買って出店でご飯を買って食べたり、初めての事ばっかで楽しかった
烏の手をギュッと握ると、烏もぎゅうっと握り返してくれる
「今年も宜しゅうにな」
『うん、今年も宜しくね烏』
初めてだらけの楽しい年末年始
新しい年の初めに、烏との忘れられない思い出が出来た