村雨と夕立
はじめは、どのような出会いでしたか
たしか最後にするつもりの短期の契約が終わり、勧誘を鬱陶しがっていた頃でした。いつものように専属にならないかという誘いを断り、武力行使で片付けようとする方を始末し、はてこれからどうするかという時に出会いました
「あー、すまん。暇をもて余しているなら余った金はそのまま持っていっていいから酔い止め買ってきてもらってヴェロロロロロロ」
………今思えば最低の出会いですね。よりにもよって初対面の相手に酔い止め頼みます?しかも吐きながら。更に言えばその時フラッフラの足でぶつかってきたのですよ?
………こほん、それはさておきまして
まぁ流石に見かねて酔い止めを買いに行きましたとも、代金はそのまま返却しましたが。
で、話を聞いていくとどうやら私のことを探していたようで、友人に「流石にバトラーを1人は着けてこい」と言われて無理矢理契約料金握らされて送り出されたと、言っていましたね
……まぁその時は最後にするつもりの契約が終わったので断りましたが、その次に出てきた言葉が
「……まぁそちらにも事情はあるようだし、深追いするのは止めておこう。………なら、個人的な付き合いは大丈夫か?」
……当時の私はまぁそれぐらいならと思い連絡先を教えましたが、今では止めておいた方がいいという思いと、そのまま連絡先を教えておいた方がいいという思いがありますね
で、それから度々会ったり呼ばれたりで少し話を聞いてもらっていましたが………その度に引き込まれていく私がいました
あの人本当にズルいんですよ、こちらの愚痴や悩みを聞いて真剣に親身になって考えてくれて、かといって自分の悩みは心配かけまいと明かさず秘めて、贈り物とかもありましたが豪奢な装飾品とかではなく痒いところに手が届く日用品……好みを短い期間で把握しているとか、絶対何人か引っ掻けていますよ、というか引っ掻けていましたし。……たかだか数ヶ月でここまで絆されるとは、中々恐ろしいですね
……そんな感じで悶々としながら過ごしていたある日、ちょっとねじれの事件に巻き込まれまして………被害者は出さないよう立ち回った結果かなり深手の傷を負いまして、「あ、これ相討ちになりますね」と確信した上でねじれを倒そうとして、攻撃を外したんですよ。「流石に死にますね、これ。……もう少し、話をしたかったですね」なんて考えていたときに、さも当然のように私の前に立って攻撃を防いで……「……間に合ったか、少し待ってくれ、すぐに片付ける」と、一言呟いて……そのあと、少し気絶していたので何があったのかは知らないのですが、ねじれは一刀両断されていたそうです
………この一件でただでさえ落ちかけていた私の心は、完全に落ちて……専属バトラーとして、契約することになりましたね、えぇ
その数週間後には私を置いて別の場所に移ってましたが、その度に探して見つけています
こんなところですかね、私の身の上話……ではありませんね、ムラサメさまとの出会いですねこれ。まぁ、少しでも楽しんでいただけたなら、何よりです