朽縄と洋墨

朽縄と洋墨

#古関ウイ #オープンエンド

 おや、珍しいですね。こんな古書館に来客だなんて。妙な噂が立ってからバリケードがなくても誰も寄り付かなくなったので、そのままにしてはいましたが。……それで、何か用でしょうか。

 ……噂の真意?……ああ、昔の事ですよ。本当に、大昔の話です。ちょうど、息抜きで描いてる絵本があるんですよ。描きかけでよければ、たまには図書委員らしく読み聞かせでもしますけれど……。わかりました、では、その辺の本にでも腰をかけてください。私が書いたモノですし、もう、ガミガミ言ってくる人もいませんから、お気になさらず。

 ……さて、と。

──昔々あるところに、偏屈な魔女が居ました。魔女は本が大好きで、1人で図書館に閉じこもっては、ずっと本を読んでいました。

 ある日、魔女は一冊の見知らぬ本を手に取りました。読んだことのない本に期待を膨らませ本を開くと、まあ!大変。本の中には蛇が挟まっていて、魔女に飛びかかってきたのです。蛇はとても素早く、魔女がいけないと思った時には、魔女の目から飛び込んで、頭の中に住んでしまいました。

 蛇は言います「砂漠に行きなさい」魔女は言いなりになるものかと堪えましたが、頭の中に蛇が何度も何度も噛み付いてくるので泣きながら砂漠に行きました。

 広い砂漠の真ん中で、蛇は魔女に言います「呪文を教えるからそれを唱えなさい」またしても魔女が言う通りにしないので、蛇は前よりもっと強く噛みつきました。それでも魔女は嫌がるので、蛇は何度も何度も噛みつきましたが、魔女の心は揺らぎませんでした。これではいけないと、蛇は噛み付くのをやめて魔女にとてもおいしいお砂糖を食べさせました。

 おいしいものをもらった魔女はとても幸せな気分になりお返しに蛇の言うことを聞くことにしました。教わった通りに呪文を唱えると、砂の中から大きな蛇が現れて魔女を食べてしまいました──。

 と、ここまでです。

 この後?正直、食べられてから前後の記憶が曖昧であまり筆が……。そちらではなく?ああ、結末の方ですか。

 そうですね。──悪さをした蛇は、魔法でインクにされてしまいました。それでもまだ悪さを続けようとするので、魔女がインクを飲み干してしまいました。こうして魔女の一部になってしまった蛇は、罰として少しずつ身体を吐き出され、愉快なお話として綴られ、たくさんの本に閉じ込められてしまうのでした──と、言ったところでしょうか。

 そして、こう続けてもいいかもしれませんね。

 ──ある日、魔女が蛇を懲らしめていると、1人の女の子が尋ねてきました

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