本物先輩は本質的にママ

本物先輩は本質的にママ


※ほぼ会話文






「あ゛〜……疲れた〜……」

そう言って勢いよくトゥルー先輩に寄りかかる。

「わっ、どうしたんですかウシュバくん」

「愚痴だよ愚痴。厩舎のエースの愚痴ぐらい許してくれよせんぱ〜い……」

「あら、そうですか。ボクでよければいくらでも聞きますよ。ただこの体勢は少し……。膝枕でもいいですか?」

「ん、じゃそうする」


ゴロリ、と先輩の膝に寝転がると覗き込む顔が映る。

「で、愚痴ってなんですか?」

「んあ〜……。自慢じゃないけどさぁ、俺ってここまでトントン拍子で成り上がってきたわけじゃん?だからこう……時代の王者になる覚悟が出来てないっつーか……」

「はいはいなるほど。なんかカッコつけてますけど、要は自分の実績に身体が追いつかず実感が湧かないってことですね?」

「うるせぇ。……先輩はそういう経験ねぇの?」


「ないですねぇ、ボクの前にはいつも高い壁がありました。あの二人だけの世界がありました。ボクはそこに割って入るだけが精一杯でした。……ウシュバくんが羨ましい。キミの瞳を借りて世界を見てみたい」

そう言いながら俺の前髪を掻き上げ、目元を撫でる。

「おいおい、先輩が愚痴ってどうすんだ」

「はは、すみません。……あの二人には、世界がどう見えていたのでしょう。緊張していた?怖かった?きっとボクの何倍もの憧れや嫉妬をぶつけられていたはずです。それこそこういう感情を……」


それでも止まらず言葉を吐き続ける先輩に苛立ち、身体を起こしてその口を塞ぐ。

「……!?……んっ……はぁ、はぁ……」

「俺の視界で世界を見たいんだろ?じゃあまずは俺の目を見ろ。人の何倍もの憧れや嫉妬をぶつけられて、尊敬の眼差しがやりづらいったらない俺を!」

「……!綺麗な、瞳です」

「いや、まじまじと見られるとちょっと恥ずいわ……」


「ははは……。ごめんなさい、後輩の愚痴も聞いてやれないダメな先輩で」

「そこまで言ってねぇよ……。ま、あれだ。俺だって横になりたいことはあるから、そういうときは支えてくれ」

「いつも横になってるくせに」

「うっせ」

「はいはい。添い寝や膝枕ならいつだってできますよ。ボクの大好きな後輩には、それぐらいのことをしたいので」

先輩はそう言って俺の頭を撫でた。

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