朝が来なければいいのに
この瞬間に私の脳裏によぎるのはいつも罪悪感。二人きりの時間をいくら過ごしても、信頼できる人からどれだけ許しの言葉を得ていても。それだけは拭えないもの。
「ナグサさん」
しかし、シーツの上でその白い腕と翼に肌が包まれると、よぎったはずの罪悪感は、まるで水に流されるように消え去る。それが一気に多幸感に変換され、依存心にも似た心地良さが全身を支配する。
「さあ」
心身に、私の中を貫いて確かに存在する冷たい罪悪感が、この時ばかりは冷たさを奪われ、暖かいものに変わる。私はその白い腕と翼の主に身を寄せ、赤子のようにすがり付いた。
「来て」
更に身を寄せる。密着しているつもりだったのに、私はまだ腕を伸ばしてやっとの距離にいたようだ。ぎこちなく左腕を伸ばして、その身体を抱き寄せる。ああ、柔らかい。なんて、暖かい。私の居場所はここ以外に無い、そう思わせるほど。
目を閉じる。全身の肌で感じる、私の居場所。私の心が安らぐ場所。
ふと、目を開いて目線をあげると、私の視線と視線が重なっている。灯りは薄暗くしてるのに、その視線だけははっきりと見える。
吸い込まれていく。いや、自分から吸い寄せられていく。気が付くと、肌と肌だけではなく、唇と唇まで重なっていた。
「んっ………」
目を閉じて、自ら視界を封じる。見えなくなる代わりに、触れている感覚で、存在を感じ取る。
ナギサさん。私が求めるように呼ぶ。触れる。
「ナグサさん」
ナギサさんが私を求めるように呼ぶ。触れる。
――ああ、幸せだ。右腕の事さえ忘れてしまいそう。ずっとこうしていたい。ずっと、このまま……。
「このまま、朝が来なければいいのに……」