月明かりの下の秘め事
「本当に良いのか?」
カヤは屋敷に帰り、爺さんも眠りに就いた静かな長屋。
その中で衣を脱ぎ捨てようとするセイバーに最後の確認を取る。
「くどい。魔力供給のためには手段は選んでられない。きみもそれは分かってるだろう?」
「それはそうだが……」
それで情事に及ぶ理由にはならないと思う。
太夫や鄭からそんな話は聞いてないし、師匠とアーチャーも必要なら言ってるはずだ。
そも、こんなことを言い出したのは若旦那の頼みを聞いた後。つまり若旦那が原因なのは間違いないだろう。何を言われたかは知らないが、若旦那の言葉にセイバーが素直に頷くとは到底思えない。
「食事を取れば、微量だが回復するのだろう?なら朝餉と夕餉は多めにするから、もう寝ないか?」
「──イオリは、何も分かってないんだな」
「は?」
なんのことかと聞こうとした瞬間、俺は布団の上に倒され、セイバーが上に跨がっていた。
「セイバー!?」
「鈍感すぎるから魔力供給と言い訳を作ったというのに、それでも渋るとは……この際だから言うぞ。
私はイオリのことが好きだ。君に抱かれたいと思うほどにな」
その言葉が耳に届いたと同時に服に使っている魔力を解除し、産まれた時の姿を宮本伊織の前に晒した。
障子の隙間から通る月明かりに照らされた姿はまさに幻想的だった。
傷一つない真っ白な身体が興奮してるのか仄かに紅く染まり、胸元が上下に動いてるのがはっきりと分かるほどに呼吸が荒い。
だが、それよりも驚いたのはふっくらと膨らんだ胸。毛が無いからはっきり見える割れ目。それは、つまり。
「女、だったのか?」
「気付いてなかったのか?まあ良い。これからたっぷり魔力を搾り取ってやるから覚悟するといい。忘れられない夜になっても知らないからな♡」
その時のセイバーは一流の遊女をも忘れさせるほどの妖艶な笑みで俺を見ていた。