月に住む魔女、或いは月の兎

月に住む魔女、或いは月の兎

IF:バッドエンド


 カラカラ、コロン。月浮かぶ上天よりも更に上、”上位存在”の投げた賽の目がゾロ目を出す


 月の空がぞるりと裂け、そこから一人の美丈夫が音もなく降りてくる

「リスクはぞっとするけれど…だからこそのスリルよね」

月に住む魔女はカフェ・チェアに腰掛け、頬杖をついて笑顔を浮かべている

普段以上に気を使って仕立てたローブを纏い他の上位存在達との貴重な会話を楽しみながら、スリルに心をゾクゾクとさせながら

…しかし上位存在にしばしば見られるように”本当にそんな事にはならない、なってもどうにかできる”そんな傲慢を無意識に抱きながら



 だからこそ、彼女が気が付いた時にはもう遅かった

リスクとして受け入れた運命は既にそこにあり、トントンと優しく肩を叩かれた彼女は無防備に振り返り…

「一体誰…あ♡♡♡♡♡これ♡♡♡駄目♡♡♡♡♡」

振りむいた顔に突き付けられたのは全裸の美丈夫が佩く隆々たる槍

その威容と香り、本能に訴えかける”強さ”に魔女は一目で虜に堕ちた


♡ ♡ ♡



 「そ、その。皆さん見ているかしら?

月に住む魔女なんて言って、兎を侍らせて気取っていた私は旦那様に雌である事を教えていただきました…ぴょん♡♡♡♡

これからは月の雌兎として旦那様に侍らせて頂きますぴょん♡♡♡♡♡♡

以後旦那様共々よろしくね?…ぴょん♡♡」

そこに映っていたのはいつもの月、いつものカフェ・チェアのある光景だ

だが座っている姿と人数は異なる。魔女はローブではなく色情を掻き立てるようなバニー服を纏い、隣に立つ美丈夫によくやったから褒めてと言わんばかりにうさみみを付けた頭を摺りつける

その夫は魔女、否妻兎を慈しむように頭を撫ぜ…そして撫ぜられ至福の笑みを浮かべながらも無意識に、立ち位置により顔の高さに来た己の腰に頬擦りをする彼女に優しい笑顔を浮かべた


 ”夫”はお預けだと言わんばかりに体を引くと惜しがる”妻”の腰に手を回し二人の寝所へ行こうと誘う

腰砕けの女とそれを支え歩く男が”二人の”家へと入り…扉が閉じると同時に映像も又消える

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