最狂誕生

最狂誕生

口岡作者

※この話はアフター口岡誕生秘話です

※この口岡は始まりの僕です


「ほれ、もう終わりか?」

そう聞いてきたのは伏黒君の体を乗っ取った呪いの王、両面宿儺

その問いを向けたのは腕と目を失い

見るも無惨な姿となった口岡明人だった

彼は、その問いに答えられなかった

「多少楽しめたが…

やはり所詮、凡夫だったか」



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…あぁ、ここで僕は死ぬのか

…まだ死にたくないなぁ

僕の家族の仇打ちもなにもできていない

それなのに死ぬ、それは…嫌だ

「ゾンビ怖い…」

これは…走馬灯というのだろうか

それにしてもトラウトに怯える自分の姿とか、どんなチョイスなんだ?

そして、そこからどんどんと過去の記憶が脳裏に過ぎる


「うん、カッコいいよね!」

お姉ちゃんのピアノ塾の付き添いで会った親友、かっくん

今、どうしてるかな?無事だといいな


「それでさ、このゲームが面白くて」

よく一緒に遊んだ親友、誠也君

遊ぶ機会は高専に入った後減っちゃったけど、今でも付き合いは続いてたな

海外に逃げたらしいけど大丈夫かな?


「何で、こんな事に」

昔、好きだった女の子、いじめられてたことを知っても何もできなかった。

もう手遅れだった。


「あっくん」

「あきと」

「弟よ」

「兄ちゃん」

こんな僕でも一緒に居てくれた大好きな母さんに父さん、姉ちゃんに悠介

僕をおいて逃げて欲しかった。

今まで迷惑をかけた謝罪ぐらいしたかったなぁ


…そうえば、死って何だろう?

もうすぐ死ぬってのに、ふとそんな疑問が頭に残った。

呪術師というのは死に近ずくと

呪力の核心に近づくらしい

考えてみれば、縛りみたいだと思った

死に近づく変わりに呪力の核心に迫れる

これってある意味、天与呪縛っぽいな

そして、僕はよくよく考えると世の中には縛りが多いことに気がついた


生きる代わりにいつか死に至る


ああ、理解した。

生きて死ぬことは即ち縛りだ。

ならば、今するべきことは一つ



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「ああ、最悪な気分だ」

そんな事を言って倒れた体を起こす

「ほう?まだ死なないか。

だが、死に損ないでしかないな」

死ぬことは無くなったがまだ傷はつく

術式対象を広げろ

解釈を広げろ

僕は傷つく

何故?

縛りを結んでいるからだ

誰かを傷つけることができる代わりに

僕に傷をつけることができる

デメリットを祓う

「解」

宿儺は僕を切り裂こうとしたが僕に傷はつかない

だが傷は癒えない、癒す手段がない

僕には反転術式は使えない

何故?

縛りを結んでいるからだ

全ては知り得ることができる代わりに

少しづつ覚える必要がある

デメリットを祓う

この世の全てが脳に流れ込む

それらを理解した脳を使い

呪力を反転させる

「反転術式」

傷が癒える。

顔に傷跡は残ってしまったが

失った筈の腕と目が生えてきた

目はある、だが僕には見えない物がある

何故?

縛りを結んでいるからだ

何かを見ることができるが

全てを見れるわけではない

デメリットを祓う

脳に異常なまでの情報が入ってきた

頭が痛い

「なら、これはどうだ」

「⬛︎・開」

宿儺がそう唱えると

炎の矢を創り出し構えた

熱い

なんで熱い?

縛りを結んでいるからだ

温度を変えることができる代わりに

温度に影響を受ける

デメリットを祓う

温度を感じなくなった

「来いよ」

僕がそういうと宿儺は炎の矢を放った

何も感じない、ダメージは無い

「口岡明人、何をした?」

宿儺がそんなことを聞いてくるが

脳に流れる情報の洪水で

頭が痛くて集中できない

何で頭が痛くなる?

縛りを結んでいるからだ

物事を理解し考えられる代わりに

処理できる情報には上限がある

デメリットを祓う

「あぁそういうことか」

脳がクリアとなった

同時に脳に流れる情報を処理することで

全てを理解し己の解釈に落とし込んだ

世界とは縛りだ

縛りとは世界だ

そして僕はその解釈を己の術式に流す

完成した拡張術式で世界から課せられた

縛りのデメリットを全て祓う

僕は大量に鎖を生み出し宿儺を攻撃した

「ほう?」

宿儺は威力が段違いに強化された鎖による攻撃を受け、疑問を漏らすかのように言葉を漏らした。

「ならコレならどうだ?」

宿儺はそう言うと呪詞を唱え始めた

「龍鱗、反発、番いの流星」

そして宿儺は術式を発動した

「解」

コレは世界を対象とした攻撃

だけど僕は敢えて避けなかった

意味がないからだ

「これも効かないとは」

宿儺は驚愕した様子だ

だけど興味はない

僕は先程とは一変した世界を見る

今なら何でもできる

そんな全能感が奥底から湧く

「さっきの答えだ

僕は今、お前を超えた」

傲慢にも僕はそう言った

以外にも宿儺は、楽しそうに言った

「俺を超えたと申すか口岡明人、

傲慢だが認めよう、お前は俺を超えた

最後に魅せて見せろ!口岡明人!!

宿儺は心底、愉快そうに叫んだ

以外にも不快感はなかった

むしろ、嬉しかった。

呪いの王に認められたことが。

「ご要望通り

最後に魅せてやるよ!宿儺!!」

そうして僕と宿儺の戦いが再び始まった



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この日、呪いの王が死に至り

   最狂が誕生した

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