②最強

②最強



船窓から爽やかな朝の陽光が差し込み、私の顔にかかって意識が覚醒する。


ん…


ルフィの腕の中で目を覚ます。

伝わってくるルフィの規則正しい心臓の音が心地いい。


なんて安心するんだろう…


彼を起こさないよう、たくましい胸板からそっと身を起こす。

ルフィはまだ気持ちよさそうに寝ている。普段の彼とはまた違う、あどけない寝顔。

…だめだ、このままルフィの寝顔を見ていたら愛しさがあふれ出しておかしくなる。

名残おしいけど、早いところみんなの所に行くとしよっか。この時間なら食堂に集まっているはずだよね。

心地よい気だるさを引きずりながら、髪を手櫛でさっと整え、ワンピースの上からスタジャンを羽織って船長室から出て食堂へと向かう。ニオイだいじょうぶかな?だいじょうぶだよね?


…やっぱり歩き方が変になるなぁ。




食堂に到着し、みんなとあいさつを交わしていく。


おはよ、ゾロ。


「おう。」

「おはようウタちゃん。なにかリクエストはあるかい?食べたいものがあったら遠慮なく言ってくれ。」


おはようサンジくん。うん、いろいろと…ありがとうね。


「酒とツマミ。」

「てめェには聞いてねェよクソマリモ!!!」

「ヨホホホ!おはようございますウタさん!よければさわやかな朝の一曲はいかがでしょう?」


おはようブルック。うん!おねがい!


「ヨホホホ!おまかせを!…あ、パンツ見せて頂いても?」


それはダメ。もうルフィのだから。


「ヨホホホホ!ヨホホホホ!」


おはよ親分。


「ああ。おはようさん。今日も快晴じゃのう!」


そうだね。おはよ。ナミ、ロビン。


「ええ、おはよ。愚策を採用したおバカさん。上手く着地することができて本当に良かったわね?」


う、……はい。


「焦るなって!何回も!言ったハズ……ま、いいわ。おめでたい朝だもんね。」


だって……いえ、たすかります…


「おはよう。ふふ、良い顔してるわね?」


やめてよぉ…


「お!おおお、おはようウウウ、ウタ!!!」


…キョどりすぎ。おはよウソップ。フランキーもおはよう。今日もヘンタイが光ってるね。


「アウッ!あさイチから嬉しいコト言ってくれるじゃねーかウタッ!おはよーさんッ!スゥ~パァー!」


「…ウタ、体は大丈夫なのか?ヘンな感じがしたらすぐに言うんだぞ!?」


うん、ありがとねチョッパー。


みんなやさしい。みんな、あのあと私がルフィと結ばれたことを知っているわけで。…うん。一言で言うと、恥ずかしい!

でも、みんなへ挨拶も済んだし、本題に入ろう。


みんな、ごめんなさい。昨日、私情で騒がしくして、夜の見張りをおろそかにすることをしちゃって。私は船長なのに。


そう言って頭を下げる。


「ウタちゃん、頭を上げてくれ。大丈夫だよ、その謝罪はもう旦那から聞いてる。ウタちゃんが謝る必要はどこにもないよ。」


えっ!?ルフィから!?


「ええ、あなたがまだ寝ている間にね。起きてきてあなたをあそこまで追いつめたのは自分だから今回の件の責任はおれに回してくれって。」


「私たちの答えも一緒。「アイツがわるい。」

それに、なにも問題は起きてないでしょ?見張りの交代が少しごたついてしまっただけよ。ゾロ!そうよね?」


「同じことを二度言う気はねェな。」


ぐび、とお酒を飲み干しながらそう言うゾロ。


みんな…ルフィ…


「さ、ウタちゃん。念のため、軽めの朝食を作ったよ。バスケットの中に入れておくから、食べれそうならあとで旦那と一緒に食べるといい。体は大丈夫かい?持っていけそうかい?」


「おれが持っていくから大丈夫だぞ。」


ルフィ!


「お、旦那。さっき食っていった分じゃやっぱり足りなかったかい。」


「いや、ウタがいなかったから探しにきただけだ。」


ル、ルフィ!?


「ウタ、まだ寝てないとだめだろ。」


だいじょうぶだよ。


「早く連れていってくれる?さっきからみんなのところをひょこひょこと歩き辛そうに回って痛々しくて見てられないから。」


ナミ!?


「ウタ。行くぞ。サンジ、朝メシありがとな。」


ひゃあ!?


そう言って朝食の入ったバスケットを腕に通したあと、ひょいと私をお姫様抱っこするルフィ。

…ほんとうに、ルフィは私が困っているときには必ず駆けつけてくれるんだなぁ。

落ちないようにルフィの首にしっかりとつかまって、ぽーっとルフィの顔を見つめながら。


「フッ、…レディのためさ。」シュボッ


ヒューヒュー! アウッ!アウッ! ヨホホ!ヨホホ! ワハハ!


そうして、みんなにはやし立てられながら船長室へと戻っていったのだった。






船長室に戻り、バスケットを机に置いてスタジャンを脱いだあと、勢いよくルフィに抱きついて覆いかぶさりながらクイーンベッドに倒れ込む。


ちゅっ


「ウタ?」


その問いかけには答えず、何度も何度もルフィの顔にキスを落とす。


ちゅっ


ちゅっ


ちゅっ


「…。」


ルフィ…ルフィ…


うわごとのように彼の名をつぶやきながらキスの雨をふらす私を、ルフィは何も言わずに私の頭をなでながら好きにさせてくれた。


どれほどそうしただろう、ルフィの頬に手を添えて彼の瞳を見つめる。

じっと見つめる私を見つめ返してくれる彼の瞳。小さいころからこの瞳に見つめられることが好きだった。

彼に私を見てほしくて色々とちょっかいをかけた。

いま思えばわるいことしちゃったな…うっとうしかったよね。

でもね…安心するんだ、あなたの瞳は。

今の私を形作った、フーシャ村で過ごした最愛の日々を思い浮かべる。

毎日大好きなあなたを追いかけて、時には怒って、時には泣いて、そして笑って。

あなたの瞳と同じくらい安心を与えてくれる大きな胸に飛び込むのが好きだった。

困った顔をしながらもしっかりと受けとめてくれるあなたに胸を高鳴らせた。

記憶よりもたくましくなった彼の胸に、今一度顔をうずめる。

感じるあの時と変わることのないあたたかいぬくもりに、自然と涙があふれ、静かに嗚咽を漏らした。


よかったねぇ私…



「大きくなっても泣き虫だなァ……ウタ。」



だれのせいだと思ってるんだよー…



でもね、これは






嬉し涙だからいいんだよーだ…








ね、『歌姫』の私。応援してるよ。


好きなんだよね。


わかるよ。


ほんと、朴念仁だから困るよね…


でもね、信じていいよ。


そっちの『ルフィ』も。


そんなこと、私よりもあなたの方がよくわかってるでしょ?








そう思いながら、私は心地よい睡魔にいざなわれて、ルフィの胸に抱かれて眠りについた。








何度でも何度でも言うわ






あなたを愛していると













あなたを愛していると……













































どこかの島



ピクッ


…どうしたよ、頭。


……俺の大事な娘を…泣かせやがったヤツがいるな…



ヴォンッ! バリバリバリッ


カッ!



島の上空に向けて赤黒色の雷が幾筋も放たれ、進路上にある雲を吹き飛ばす。




おーーーーい!!?頭ァ!?いきなりの覇王色の覇気はやめろォ!心臓持たねェよ!


オイッ!余波くらって泡吹いてぶっ倒れた新人どもをさっさと介抱しろっ!


ホンゴウ!こっちだァ!はやく来てくれ!




ルフィの野郎は何してやがんだ…今度会ったらブッ飛ばすしかねェな…


やめとけ…ウタに嫌われるぜ… スパーッ


…………やめとくか。


(((((弱ッ!!?)))))
























新海軍本部——ニューマリンフォード——



サカズキ元帥!新たなる五番目の皇帝!麦わらの一味の大船長、麦わらのウタよりメッセージが届いておりますッ!


急遽もたらされたその報告により、一同に緊張が走る。


「舐められたもんだねェ~」


「本当、大胆なことをしなさる。いったいどんな顔してんだい?目ェ、閉じなきゃよかったなァ…」


「…なんて言うてきちょるんじゃ。」


「は…それが…その…」


「はよう言わんかァッ!!!」


「は、はっ!それでは申し上げます!麦わらの一味の副船長!モンキー・D・ルフィ!彼の手配書の肩書を即刻「麦わらのウタの最強ダーリン♡」に変更せよ!😡…とのことですっ!!!!!(クソデカボイス)」


「……。」←サカズキ

「……。」←黄猿

「……。」←藤虎


「フゥ、今日もシブイぜ、サカズキさんはよォ…」←アラマキ


「……。」←通りかかったスモーカー

「……。」←同じくたしぎ

「……。」←その他のネームドとモブたち


「…あと、新しい手配書に使うようにと麦わらのウタとモンキー・D・ルフィの仲睦まじいツーショット写真が同封されてきております……(小声)」


…………。


しーーーーーーーーーーーーーん・・・






「フゥ、今日もシビレるぜ、サカズキさんはよォ…」←緑牛



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