最強の学生と最狂の餓鬼

最強の学生と最狂の餓鬼


呪術高専─その東京校に在校している3人いる2年の学生の内2名─五条悟と夏油傑ら担当教師である夜蛾に招集を受けて教室で待機していた、何やら急を要する任務らしい。


「緊急招集つってもさ、大体急を要する内容じゃねえんだよな、大方雑魚がトチって俺等に寄越されてるだけだろ?」

と項垂れる五条を嗜める様に夏油が口を開く。

「駄目だよ悟、彼等だって術師としての誇りを持って任務に当たったんだ、その点だけは認めてあげるべきだよ」

「その無駄に反り立った誇りと実力が釣り合ってねえから雑魚がどんどん死ぬんだよ、分かる?」

「あのね悟…私は──」

 このまま討論になるかと思われたその時、教室のドアが開く、担任の夜蛾が入室してきたのだ。

「お前等、揃ってるな、今回の内容だが…」

「本当に俺等じゃねえといけねえの?唯の捜査任務だろ?」

「悟の言葉に賛同する訳ではないですが…正直唯の捜査任務に私達を派遣する意図が分かりません、補助監督や窓の人でも十分なのでは?」

 今回呼び出された内容はとある地域の調査、ただそれだけのために五条悟、夏油傑という二大戦力を投入する事になったという事だ。

「あぁ、私も最初はそう思った、だがその地域をよく調べてみたら、居なかったそうだ」


「居ないって…なにが?」


「呪霊だ」


「馬鹿な…あり得ない」


「あぁ、あり得ない事だ、だが実際の報告では三級、四級の雑魚呪霊は愚か蝿頭すら1匹たりとて居なかったそうだ、これの意味が分かるな?」


「成程ね、蝿頭すら居ない地域、呪霊立ち寄らない何かがあるのか、若しくは──」

「呪霊が畏れをなすナニかが居るのか──それの調査を私たちにしろと言うことですね?」


「その通りだ、もし呪霊が立ち寄らない程の呪力が籠った呪物なら回収、或いは破壊、だが──もしその呪力を放つ呪霊ならば相当知恵が働く呪霊だ、上層部は仮に呪霊の仕業としたら特級の認定を下した、そして…もし仮にこの仕業が術師の仕業だとしたならば──」


「したならば?」


「その時は…現場の2人に委ねると、私は聞いている」

「ハッ、要はビビっただけでしょ、指示するだけの老害はこれだから」

「口が過ぎるよ悟、彼等とて必死なんだよ、老い先短いからこう言った事で寿命を縮めたく無いのさ、今まで必死に積み上げてきたはりぼての権威を崩したくないからね」

「…今のは聞かなかった事にしておく、概ね私も同じ意見だ、捜査場所は──」


「はるばる来たぜー!仙台ィー!」


「全く、硝子ってば私たちが仙台に行くって知った瞬間お土産を希望するんだから」


『今から仙台まで任務?超地方じゃん、ウケる、任務ついでに牛タン買ってこい、1番高い奴な」


夏油は出発前に硝子に命r…基頼まれたお使いの内容に苦笑いする、世界広しと言えど夏油と五条の2人を顎で使える人物は家入硝子唯1人だけだろう。


「仙台のお土産つったら喜久福だろぉん⁉︎あの生地とクリームの絶妙さ加減が分からないなんて理解できねー」


「まぁお土産は任務終わりに好きに買ったらいいさ、それにしても──」


「あぁ、ほんっとに1匹も居ねえな、ここまで来ると逆にキモい、傑、お前の探知にも引っ掛からねえの?」


「悟の眼と私の呪霊探知も機能しない所を見ると…どうやら本当にこの地域には呪霊が1匹も居ないみたいだね」


今回の任務にこの2人が当てられたのには当然理由がある、それは強さは勿論、五条悟が持つ六眼による捜査と夏油傑の生得術式の呪霊操術による副産物の呪霊探知、この二重の捜査によって調べ上げるつもりなのだ。

 そして現在そのどちらにも呪霊の気配はヒットしなかった、代わりに2人はこの街に入った瞬間から別の気配を感知している。


「ならさ…この街に着いた瞬間に俺等を襲ったこの呪力はどう説明する?最初は街全体を覆う生得領域の特級かと思ったが…こりゃ呪霊より厄介だぞ」


「確かに、とは言えここまでの濃さの呪力だと源泉が分からない、下手に探れば手傷を負うのはこちらかもしれない」


「何?もしかしてビビってんの?」

「誰に物を言ってるんだい?そんな訳ないだろう」

──俺達は最強なんだ。

それが2人の共通認識、多少梃子摺る任務だろうがそれまで、寧ろ今までの緩い任務を思えば今回の任務は俄然やる気が出てくる、なにせ学生とは言えその辺の術師等遥かに上回る実力を持つ2人、その2人をして今回のこの任務の印象は【未知数】なのだ、久方振りに骨のある任務かもしれないと思えば身が入るのも当然と言えた。

「取り敢えず雑魚の呪霊をばら撒いてみるよ、ここの主が呪霊が立ち寄らない原因ならば呪霊を見かけたら何かしらの反応があるはずだからね」

「それまでのんびりしてようぜ〜全くこの俺を長時間乗り物で拘束するとか本当あり得ないから」


ぶつくさ文句を言う五条に呆れながらも呪霊をばら撒き終えた夏油は五条に着いていく──正しくその時だった。


「ッ⁉︎悟!」


「ん?どした傑、便秘か?」


「快便だったよ!違う、そうじゃない!もう半数程祓われた!」


「ハァ⁉︎さっきチャフみたいにばら撒いてたろ⁉︎まだ2、3分だぞ⁉︎」


「そうだけど!現在進行形で祓われてる!こっちだ!」


夏油が先導する形で五条が追随する、五条は親友の夏油の術式をよく知っている、通常の呪霊は気にするのも馬鹿らしい程の雑魚だが傑が使役する呪霊は別。

 群れた呪霊ではなく軍隊として統率された呪霊の手強さは日々の鍛錬で経験済みだ、更に長期戦には向いてないから傑はあまり使わないが今放った呪霊は傑の呪力で強化されている、生半可な火力では──それこそ下手な一級術師程度ならば何も出来ずにやられる程の効力だ、伊達や酔狂で自分が自分の横に並び立つに相応しいと認めた人物ではない、五条悟にとって夏油傑とはそう言う人物なのだ。

 その傑が放った呪霊がゴミみたいに殺されてると言う、しかも現在進行形で!自分が派遣されたのは上層部の嫌がらせでも過剰でもなんでも無い、珍しく正しい判断なのだったと、今この瞬間認識した。


──呪霊を使役する者。


──何百年振りの六眼と無下限を抱き合わせた者。


──幾つもの呪いを祓った者達


呪霊達が今も祓われてる場所に赴いた2人は目撃する。


──何百年、何千年と積み重なった呪いを帯びた肉体の躍動を‼︎


そこには──怪物が居た、人ではあった、少なくとも見た目上は、しかし数多の任務を潜り抜けた2人からすればソレは明らかな異質の存在に見えた。


特に顕著なのは五条だろう、五条の六眼は凡ゆるものを見通す、故に目の前のソレの現状を受け止めずに居た。


(は?なんだ、これ、目の前の餓鬼は人間…だよな、中身は、なんだこれ幾つ入ってんだ⁉︎10や20じゃ効かねえぞ⁉︎)


「悟!この子は…!」


「人間、一応な、中身は…白紙の紙に色々な絵の具をぶち撒けたみたいなかんじになってっけど」


「魂が混ざってると言いたいのかい?」


「そうとしか考えられねぇ、それに、アイツ…幾つの呪物を飲み込んでんだ、それが全部アイツの中で受肉してんのに当の本人はケロッとしてやがる…!」


余りの事態に五条の額から冷や汗が滴れる、その様子を見た夏油は目の前で虐殺を行なってる子供への警戒心を数段階引き上げた。


『久方振りの呪霊の大群だったな、いい運動だった』


『数による群れじゃ無いね、明らかに統制が取れてた、加えてこの地域に呪霊を送り込み且つ呪霊の統率を可能とする術式は私は一つしか知らない』


目の前の子供から男と中性的な声が聞こえる、明らかに子供の声では無い。


『呪霊操術ね、だったらそこのガキ2人のどっちかでしょ?』


間髪入れずに女の声が響く、どうやら既にこちらを認識しているらしい。


「…最悪の想定として宿儺の受肉を危惧してたけど、想定以上だよ、なんなの、お前」


『ほう…今代の六眼か、相変わらず目が良いな』

『なんだ、バレてんのか、奥に引っ込む必要ねえじゃん』

『六眼…懐かしや…術式の方は如何な物か…?」

『六眼を持ってても見た感じ反転はまだ使えないでしょ?惜しいわね』

『領域もまだ使えなさそうだしな』


『そっちの呪霊使いの君も惜しいね、もう少し柔軟に術式を行使できたら六眼の彼を超えることすら可能なのに』


「「…何が言いたい」」


『宝の持ち腐れだな』


『とは言え、六眼と呪霊操術を同時に相手するのは面倒だ、この子の事もある、なのでここは一つ逃げを打たせてもらう』


「あ?そんなみすみす逃すとでも…」


青筋を浮かべた五条が術式を行使しようとするその瞬間、目の前の子供が大きく息を吸ったかと思えば…


『誰かー‼︎助けて‼︎黒い服装のサングラスの人と変な前髪の人に襲われるー‼︎』


と、やんちゃな声が街に響く、起こった出来事の処理に数秒を使い、改めて今起こった状況を認識する。


全身真っ黒の服装を着た自分達、しかも背丈はかなりある、そんな2人がぱっと見小学生かそれ以下の子供に詰め寄っている。

 そこまでを認識した2人の行動は早かった、なんだなんだと人が集まり出す前にとんずらこいたのだ、最強2人、初の逃亡である。

その後2人は凡ゆる手段を用いて例の子供を、洗い出しその子供の名前が虎杖悠仁であるという事だけを突き止めた。

「ってのが僕と悠仁の初邂逅」


「そんな事あったん!?何やってんの兄ちゃん達!」


その後虎杖悠仁の肩書きに【若き日の特級二名を無傷で退けた人物】と言うものが追加されたとかされてないとか

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