最強のワラの家VS最強のアロサウルス

最強のワラの家VS最強のアロサウルス


・ここのボニーは年少お姉ちゃんで三男以下全員コルボ山にいる世界

・エミュ下手、細かいことは気にせず書いた




ザアザア雨の降る日のこと。兄弟たちはそれぞれ好きに過ごしていた。台所に立ち夕食の下ごしらえをしたり、長兄がたくさん持ってきてくれた本から好きなものを選んで読んだり。この日は珍しく弟たちと妹はおとなしく過ごしていた。聞こえてくるのはページをめくる音と包丁の音くらい……。


「にいちゃんのほうがすごいもん!」

「そんなことない! にいちゃんが負けるわけない!」


……ではなかった。ドレークは最新の天文学の本にしおりを挟んで声のした方に目をやった。「大声出すな!」と叱るローと、やれやれと言いながら立ち上がったアプーがいるなら自分まで行く必要はないだろう。あまり上の兄弟が干渉しすぎるのも良くないのかと、キラーから相談を受けたばかりだったし。ホーキンスの方をそっと伺えば、同じ考えだったのだろうか、すんと澄ました顔をしているが、顔はしっかりと騒ぎの中心に向いている。



「本棚整理してたら昔もらった絵本が出てきた?」

これだ、とローがアプーに差し出したのは「三びきのこぶた」だ。きょうだいの数が今の半分いるかどうかの時期に、たびたびコルボ山に顔を見せに来てくれた兄たちからの贈り物。ルフィとゾロは初めて目にするものだったらしく興味を引かれて、それを聞いたエースやキッドたちも懐かしくなって、読み終えた本をしまうついでに目を通したという。

それがどうして言い合いになっているのかというと。

「……その辺に生えてるワラで作った家じゃなくて、ホーキンスのワラの家なら壊れない……? オラッチ住んだことないけどきっとそうだなァ」

「……レンガの家くらいドレークの力で壊せるし狼みたく、ふーって一息で飛ばせる……? オラッチ知らんけど恐竜は強いもんなァ」




「能力者ってすごいんだなぁ」

「そうだぞサボ。特にうちの兄さんたちは使うの慣れてるしな」

台所から顔を覗かせて可愛い訴えを聞いた二人は、険悪な内容ではなさそうなことにほっとする。離れた場所にいる、何でか騒ぎの渦中にいるらしい二人も手が出るような事態にならないことに安心しているようだ。年少たちが固まって遊んだり勉強をしたりの最中、何かがぶつかりあってヒートアップしてしまうのなんてこの家では日常茶飯事。引きずる時にはフォローに入るが、基本はほったらかしで問題ない。


少し離れた場所に座っていた上の兄たちの隣に座ったサボが尋ねる。

「ドレークにいちゃん、ワラの家飛ばせるのか?」

「は? ……何の話だ?」

「兄さんたちなら絵本の狼とこぶたよりもすごいことが出来るって、あいつらが話してるんだ」

「こぶた……? あぁあれか、読み書きの教材に兄さんが持ってきたやつ」



そんな後方のやりとりを知らない子どもたちは、事情聴取が終わるや否や議論を再開。そこに理論や根拠はない。自慢のにいちゃんはすごくて強くてカッコいい、たったそれだけ。

(これ、ガキども煽ってけしかけてやれば見れるじゃん……)

コルボ山に放り投げられはや十年。エースから始まり次々にあのジジイが連れてきた(投げてくるとも言うし自然に混じって馴染んだやつもいるけど)弟たくさん妹一人を育ててすっかり大人になっていたつもりだが、アプーもきょうだいと同じで、カッコいいものは何だって好きな少年の心の持ち主だった。でかくて強いものが戦うロマンと興奮。見てぇ。超見てぇ。

「オラッチいいこと思い付いちゃった! 聞きたいかぁ~?」




「ホーキンス、雲行きが怪しくないか?」

「ああ。だがおかしい。今朝の占いでは夕方頃に雨が上がると出たのに」

「言われてみれば。兄さんが占いを外すなんて珍しいな」

「そっちじゃない! 言いたいことはわかるが違う!」


ドレークの言葉を聞いたサボは窓を見る。西向きの窓はどんよりとして真っ黒い。キラーにいちゃんの言う通りだ、外れるなんてめったにないのに。

キラーが静かになった集団を見る。視線に気付いたか、アプーがこっちを見てくる。心なしかキラキラした目もたくさんある。…………ドンマイ兄さんたち、絶対なにか企まれてるぞ。





【チーム恐竜】

ドレーク、ロー、ルフィ、エース、サボ



勝負は三日後。

勝った方は負けた方の言うことを一つだけ聞く(ただし即座に聞ける範囲のみ)。

ゾロは見つけ次第捕まえる。協力させるのも可。

両チームで共有できる情報はホーキンスの陣地、ゾロは見つかるか、もしくは夕飯までに自力で戻って来られるかの確率。


ざっとルールを整えた翌日からドレーク達は、いつもとそう変わらない山での生活を崩さずにいる。それどころか、向こうのチームの人手が無いぶん彼らに狩りの負担が回ってきているが、

「誰が一番大物を狩れるか競争だ」とローが上手くやる気を引き出させたらしい。しかもゾロを見つけ、連れてきた場合は無条件で勝者となる、という条件付きだ。その抜け目なさにアプーも感心する。


「なんつーか、いつもと変わんねぇんだな。面白くねぇ……」

面白さを求められても。ドレークとローは内心でツッコミながらひやかしのアプーを迎えた。

「ドレークが咆哮で木を倒せるのは証明できたんだ。なら俺たちはその仕上げをして当日までにコンディションを最高に持っていけばいい。狩りもエース達が張り切って暴れてるからドレークが無駄に疲れなくて済む」

「今さら張り切ったところでどうにもならんだろう。俺はローの提案を信じるさ」


二人は本当に特別なことをする気はなかった。現に二人で取り掛かっているのは、ドレークの鍛練でも作戦会議でもない。ルフィたちに獲らせたとおぼしき馬鹿でかいサイズの魚を解体しているのだ。出てくるのは本当はキラーもこっちに来てほしいとか、海ソラの新刊が届くなら俺たちが一番目二番目の読者になろうとか、そんな話ばかり。

「アプー、暇なら手伝ってくれないか? ルフィたちが戻る前にはあらかた済ませておきたいんだ」

「……仕方ねぇ。付き合ってやる」

ため息を一つついて、アプーも山のように積み上げられた本日の獲物に向き合った。こいつらからはもう聞き出せる情報もないし、仕留めたものはさっさと処理するべきだ。


手を動かしながらアプーは、離れた場所で家を建てる兄弟のことを考える。

ホーキンスの能力は、兄弟のなかではあまり応用の効かないほうだ。シンプルに「藁を出す、身体の一部が藁になる」、くらいで(生活面は大いに助かっているが)イチから小屋を作るとなると苦労が多そうだ。キラーもキッドも細かい作業は結構好きだし、ボニーも張り切ってやる子だから、うまく行くだろうが。


「随分な余裕だなぁ、ドレーク。……あ、忘れるところだった、伝言だ。今日は飯の時間には戻る確率は78%だから無理して捜索しなくてもいいってよ。……ん?」

ドタドタドタ、と聞こえてきた方を見る。小さな足音が四つ。発生源の小さな影をすっぽり隠す巨体が土埃の向こうに……虎。しかもこの辺のボス。

「何やってんだお前らァ!!!」

「「「だってえええ!!!ゾロがデケェ虎のとなりにいいい!!!」」」

「縄張り守ってるボスには近付くなってオラッチあんなに言ったのに!」

「今度ホーキンスにお守りでも作ってもらったらどうだ?」

恐竜に身体を変えながらドレークが言う。それでどうにかなるならこんな気苦労しないで済むんだよ!








【チーム藁】

ホーキンス、キラー、キッド、ボニー


勝負は三日後。

勝った方は負けた方の言うことを一つだけ聞く(ただし即座に聞ける範囲のみ)。

ゾロは見つけ次第捕まえる。協力させるのも可。

両チームで共有できる情報はホーキンスの陣地、ゾロは見つかるか、もしくは夕飯までに自力で戻って来られるかの確率。



ざっとルールを整えた翌日。ホーキンス達ワラワラ建設チームはあまり動物の寄り付かない場所に陣取った。

地鎮祭をして、一人なら縮こまって入れるサイズを測り、その辺の木で作った柱をグサグサ刺して、壁は斜めにも枝をかけて補強。屋根の中心をキラーに肩車されたキッドが支えて(釘さえあればジキジキで固定できるのは幸いだった)いるうちにホーキンスが釘と縄で固定、ボニーは縄や紐を手渡し、という分担作業でみるみるうちに骨組みは出来上がり、あとは藁を載せていくだけである。


「もっと苦労してるかと思ってたのに。オラッチつまんないんだけど」

「おまえの事情なんて知るか」


応援に来た兄には目もくれず、一仕事終えて腹を空かせた育ち盛りは、昼食のサンドイッチを口いっぱいに詰め込んでいた。がっつくな!! というキラーのお叱りもいつものこと。

「おまえも食うか?」「食う!!」と元気に飯をたかるのはドレークたちと同時に出掛けた迷子。どうやって来た。


「なあ、ルフィたちは来てねぇのか? 迷子か?」

「そんなバカなことするのはてめえだけだゾロ!」

「バカって言った方がバカになるんだぞ!」

「飯の最中にケンカか? 別にいいけどおまえらの分あたしが食っちまうぞ」

「「ゴメンナサイ」」


きょうだいの可愛い紅一点はこの家のほぼ全員(自分が)食べ物を盾にしたら弟を従えられるということをよくわかっている。

「なあゾロ。あたしたちがこうしてる間もドレーク兄ちゃんたちで狩りしてるんだろ? 晩飯何か知ってるか?」

「知らねぇ。罠仕掛ける前にアイツらどっか行っちまった」

どっか行っちまったのはお前だ! その場の全員が辺り一帯に響きわたる大声でゾロに怒鳴る。これで迷子の居所も伝わればいいんだがなァ。


さて、アイツらの現リーダーであるドレークの能力はすっかりカッコいいものが大好きな兄弟と、能力強化に繋がればと二人の兄が持ってくるファンタジー作品に描かれたドラゴン像との板挟みになった結果、少々斜め上の方向へと開花している。立派な恐竜の身体を使うことなくものを壊すくらい、出来るようになっていてもおかしくはなかった。


「お前、勝算はあるのか? ……勝率占えばわかるか、どんなもんだ?」

「ずいぶん野暮なことを聞くんだな。おれについてくれたキラーにキッド、ボニーがいるんだ。勝率3000%は間違いなく超える」

「ウワァなんて清々しい家族バカの数値」


https://telegra.ph/蛇足-01-29

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