更衣

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「オーター何でオレは、採寸されているんだ?」

「必要がありますから、ファーミンさんそういうの禄に持ってないでしょう?」

マゴル家の御用達の仕立て屋なのだろう人物に虚無の表情で採寸をされているファーミンはどうしてする必要があるのかとオーターに聞くが。単純に使う用事があるとだけ告げた

「あれでいいじゃん、お前の横で仕事するときに毎回着てる制服みたいなやつ」

それを聞けば、ファーミンは怪訝な顔をしてしっかりとした服はちゃんとあるだろと今着用している神覚者の支配下である証であり首輪でもある砂の神杖の刻印が刻まれた服を指さした

「その制服は、ファーミンさんが勝手に誰に頼んだか………いやセルさんに頼んで勝手に改造してるじゃないですか」

オーターは、ファーミンの言い分に頭を抱え今も採寸中で仕事の迷惑になる動くなと言いながら最初の道化服の様に腹がぽっかり開くように改造されているのは頂けないだろうと反論を伝えた

「………………」

そう言われれば、ファーミンは押し黙る。はたから見れば勝手に改造は不味かったかと思ったのだろうと感じるであろう

「でオーター、服は何を仕立てるんだ?」

「貴方の弟、エピデムさんが着用されてるのに似てる物になるかと。私の家の仕立て屋ですので、私が着ている物にも雰囲気が近くなるかもしれませんね」

諦めたのか、ゴタゴタいうのをやめ結局何を仕立てるつもりだとオーターに静かに聞く。そうすれば少し考えたように間を置いてから、ファーミンの弟の一人エピデムさんが着用してる物と似たようなものが仕上がるであろうがその中でもマドル家の仕立て屋として雰囲気などは職人の手癖や個性として私が今着ている物にも似るかもしれないと伝えた

「ふぅん………なら、お前と同じのがいい、後頭に何か被るやつは用意しろ。被ってないと落ち着かない」

「そうですか、伝えてはおきます」

オーターは、採寸にはまだ時間が掛かるとファーミンに念をおいてから。コートの中から本を取り出し読み始める、読み始める様子を見てこれは時間がかかるなとファーミンはある意味諦めのような静観を抱いていた

3ヶ月〜4ヶ月程の時間が立ち、本来フルオーダーとなるとかなりの時間が必要なのだろうがマドル家の専属の仕立て屋という事とオーターマドルという神覚者が注文したということもありかなり早く仕上げてくれたのだろう

仕立て上げられたのは、オーターが普段着ている服に似ている礼服だった。勿論砂の神杖の刻印はオーターが普段着るコートのように背に大きく刻まれている

「で結局何で改まった服なんて必要だったんだオーター。しかも明らかに急ぎだろ、出来るにしても早すぎる」

ぐるりと、今のところキツイところはないと思いながらも鏡の前で回ればオーターに結局何でコレ仕立てる必要があったのだと聞いた

「私の仕事でも、基本ファーミンさんを連れて行くでしょう?」

「あぁそうだな、アギトに連れ回されることもあるが」

オーターは無表情だが、少し言いにくそうに前置きをする

悪魔の5つ子はあの戦いの後、イノセントゼロが広域に様子を伝えた影響で本来ならば死刑よくて無期懲役以上の罪となるであろうがイノセントゼロを止めるための助けとなったという功績そしてある種の兄弟達が抱える歪さや境遇に勝手にストーリー性を感じた民衆から出る民意により神覚者の監視下に置かれ労役と言う形で罪を償う事になった

それ故に、兄弟それぞれに担当となる神覚者がいる。兄弟達は大体神覚者の側につくことになる

単独での行動は、容認されていない

「それで仕事とはいえ、犯罪者を中に入れてもいいのかという事でゴタゴタがありましてね」

そして民意といえども、貴族と一般市民の認識は大きく乖離する

俺達(悪魔の5子)が主に民意として受けたのは、戦火をモロに受けた一般市民であり。ある程度自衛手段があったり離脱手段があった貴族様達からは、基本凶悪犯罪者の一味の一人という認識が殆だろう

「成る程、先方はろくに躾のなってない汚い狂犬から牙が抜かれた腑抜けた従順な犬になったか見たいと」

「………そうですが、言い方の趣味が悪いですね」

つまり相手が言いたいことは、凶悪な犯罪者をちゃんと飼い慣らせているのかと言ってその証拠がみたいと言うことだろうと話せば

オーターは、たしかにそうだが言い方というものがあると相変わらず表情に変化のない顔を向けた

「で、もう脱いでいいか?」

「変に寄ったりしてる様子はないですしいいです、こちらで使うときまで預かります」

ファーミンは、慣れてないともう脱いでもいいだろうときっちりと調えられた服を乱雑に脱ごうとするがオーターがすかさず変に脱ぐとシワができると、慣れた手つきで上着からファーミンから剥ぎ取り手に掛けていた

シャツはいくらでも用意できるため雑に扱ってもいいが、仕立てた服はまた簡単に用意できる物でもない

脱がれたズボンも、オーターは拾って調えていた

「俺が預かるより良いだろうし、そもそも俺達がいるの森だからなぁ………。所で、頭にかぶるやつ」

「こちらでそれも、用意しました」

ファーミンは、シャツもすぐに脱ぎ捨て下着だけの状態でオーターに流石にフォーマルな格好にあのピエロ帽は使えない事はわかる。だが頭に何かないと、落ち着かないから帽子を用意しろって言ったけど用意はできてるのかと

するとオーターは、すかさずファーミンの頭にポンと軍帽にも近いハンチング帽を被した

「これか?まぁよっぽど変じゃない限り俺は気にしないけど」

「…………ピエロ帽と比べれば大体奇抜ではないと思います」

「暫くは、コレ着けとくか」

ファーミンは、デザインは気にしないと言うがオーターに被らされた帽子に手をかけてまじまじと見ている様子にオーターは、いつもかぶっているピエロ帽より奇抜なものはなかなか無いだろう、と突っ込むが

ピエロ帽を少し悪く言われたと思ったのか、ファーミンはちょっとだけ嫌な顔を浮かべた後。まぁいいやと言うように、まじまじと見ていたオーターが選んだ帽子を被り直した

「ファーミンさん、向こうからの指定日は5日後です。それまでにある程度マナーは頭に入れてください」 

「まぁオトウサマから、ある程度は傘下やらなんやらに舐められないよう仕込まれてる。それがオモテで通用するかわからないからそれはオーターが見てくれ」

オーターは、手帳を見ながらこの服を仕立てる原因となった相手より指定された日は5日後と伝え。ファーミンは、それを砂の神杖の刻印が刻まれた制服(勝手に改造されてるが)着替えながらお父様から裏社会の相手に舐められない程度のマナーは仕込まれてると皮肉のように笑いながらオモテに使えるように調整するからオーターも確認しろとつぶやいた


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