景♂晴in出られない部屋
「なるほどそういう事か」
「そういう事みたいですねぇ」
シンプルな内装の部屋、中央に置かれたキングサイズのベッド、小物類が入っているのであろう抽斗、別室へつながる扉と、それとは別の鍵のかかった扉、そしてその上に掲げられた看板。
どうやらここは、噂で聞いていた『SEXしないと出られない部屋』というものらしい。
シミュレーションルームで戦った後、互いの部屋へと戻ろうとしたその時、足元が揺らぐ感覚とともに目の前が白く塗りつぶされ、気付いた時には2人してこの部屋にいた。
「色々調べてみましたが、本当に出られないみたいですね」
「部屋から出るには目的を達成しろという訳だな」
「どうしましょうか?てか、私相手に勃つんです?」
「それはやり方次第だな・・・って、お前が受け身になる気か?」
「だってどちらも経験ありませんし、こういうのは年上がリードするものだと思っていたのですが?」
「まあ・・・一般的には、そうだな・・・」
「ですよね。では、準備?とやらをしてきますね」
そう言って、別室へとつながる扉の方へ歩いて行こうとするのを引き留める。
「俺は、一応、どちらの知識もある。だから、今回は、知っている方が受け身になった方がいい」
「そう言うことならお願いします?」
全くもって何も理解出来ていません。と、でかでかと顔に書いた状態の相手を置いて、準備のために別室へとつながる扉を開く。
扉の向こうは脱衣所とトイレにつながる短い廊下で、服を脱ぐために脱衣所へと入る。
「はぁー」後ろ手で扉を閉めると同時に大きなため息。
(なんだこれ、俺に都合のいい夢か?やっぱり、1回殴りあっといた方がよかったか?)
ずるずると床にしゃがみ込み、先程から鳴りやまない鼓動を落ち着かせようと深呼吸する。
俺は景虎のことが好きだ。もちろん、性的な意味で。でも、相手は俺の事をただの好敵手としか思っていない。
この部屋に閉じ込められたとわかった時、これは合法的に思いを遂げられるチャンスなのでは?と大いに歓喜した。
いつの間にか己の内に芽生えた感情は、抑えきれない所まで行き、いつ決壊してもおかしくない状態だった。
(とりあえず、準備して戻ろう・・・)
緩慢な動きで服を脱ぎ、風呂場へと向かう。
準備を終え、元の部屋へと戻ると、ベッドの端にちょこんと腰かけた景虎がいた。
「あっ・・・えーっと・・・準備、お疲れ様です?」
「お前も一応、風呂入って来い。シミュレーションした後のままだろ」
「そうですね、汗だけでも流してきます」どこかゆっくりとした足取りで扉の向こうに消えていくのを見送る。
(さてと・・・)
ベッドサイドに置かれた抽斗の中を改める、一通りのものは揃っているようだ。
ひとつずつ取り出しては確認していると、背後の扉が開く音がした。
ぺたぺたという足音とともに手元に影が差す。見上げると濡れた髪から滴が垂れて俺の手の上に落ちる。
「せめて髪くらいはちゃんと拭け」相手の肩にかかったタオルをとって、やや乱暴に拭いてやる。
「わっ・・・ちょっと・・・」
されるがままの状態になっているのが少しおかしくて、こんな状況だというのに笑ってしまう。
「なんですか、もう・・・」
「悪い、他意はないんだ」
ベッドの上でお互いに向き合って座る。さて、ここからが正念場だ。
「まずはお前のを勃たせて、それから俺の中に入れる、後は鍵が開く音がするまで適当にやっときゃいいだろ」
敢えてざっくりとした説明にする。どうせこの部屋の中だけでの関係だ、こういうのは後腐れのない感じで済ませておく方がお互いのためだ。
「一応、温めておいたが、冷たかったら、悪い」
潤滑剤を搦めた手で相手のものにそっと触れる。少しずつ動かしていくうちに手の中のものが反応する。
「ん・・・ふっ・・・」抑えた声が耳に届く。
その声と大きくなっていく感触で、自分自身、嫌が応でも反応しそうになる。
(俺じゃなくて、こいつがイかないと鍵は開かないだろうな)
頭の中の、どこか冷静な部分がそう考える。
ある程度の大きさになった所で、相手をそっと押し倒す。その上に跨って準備しておいた中へと導いていく。
「お前は、何もしなくていい。全部、俺がやる」
ゆっくりと腰を動かす。体重をかけないようにと気を使うため、あまり奥までは入れられない。
(まあでも、擦れて気持ちいいのは確かだな・・・)
「・・・っ」思わず出そうになる声を聴かれたくなくて、口を噤んでしまう。じわじわと広がる快感が少しずつ思考をぼやけさせていく。
目の前の相手は白い肌が上気して真っ赤になっている。白じゃなくて、赤も似合うんだなと、今のこの場にはそぐわない考えが浮かぶ。
(もうちょっと・・・か?)
眉間にしわを寄せ、何かに耐えるような顔をしているのを確認すると、少しだけ中を締め付けるようにしながら大きく動いてみる。
「あっ・・・」かすかな声とともに相手が達したのを確認すると、これ以上刺激しないように注意しながら、引き抜いていく。
カチャリ、鍵の開く音がした。
(後始末して外に出るか・・・)
事が終わって、冷静になった頭で考えつつ、ベッドから出ようとすると強く腕を引かれた。
「なっ・・・」
先程までとは異なり、今度はこちらが見下ろされる形になる。
「おい、離せ。もう鍵も開いた、これ以上は必要ないだろ」
「まだです。まだ、終わらせません」
蕩けた瞳のまま、語りかけてくる相手の意図が読み取れない。一体どういうつもりなのだろうか?
次の瞬間、衝撃が走る。
「ふざけるな、馬鹿!とっとと抜け!・・・んんっ」
「ああ、やっぱり。奥を突いた方が気持ちよさそうですね」
「あっ・・・やっ・・・」
がつがつと奥まで責められる。目の前がちかちかして、うまく息が吸えない。
「まっ・・・はぁ・・・」
「我慢しないでください。声が、聞きたいです。」
耳元で甘く囁かれる。びりびりとした痺れが背中を流れていく。
「そこ・・・気持ち、いい」自分のものとは思えないどろどろとした声が漏れる。
「本当はずっと、こうしたかったんですよね。そういう目で私の事、見ていたでしょう?」
いつから気付いていたのだろう?でも、求めていたものが与えられた喜びの前に、多少の疑問は消え失せる。
「かげ・・・とらぁ・・・もっとぉ」媚びるような、強請るような言葉が、口を衝く。
「晴信のお望みのままに」
熱に浮かされ、ふわふわした思考ではもう、何も考えられず、ただ快楽に身を委ねるしかなかった。