昼下がり

昼下がり


 ある昼下がり、ウタが雑誌のある記事を熱心に読み込んでいると、

「アンタ、そういうの興味あったの?」

 記事を覗き込んだナミがウタをからかいつつ、机を挟んで対面に座る。

「失敬だな〜、わたしだって人並みに興味あります〜!」口を窄めてウタが反抗する。

「"理想のキスシチュ"?歌姫サマがそういうことに興味あるとかファンが泣くわよ?」

「別にファンの皆を裏切るとかじゃ...」

シュンとトレードマークのウサギのような髪が落ちる。

「ごめん、からかいすぎた。」と、ナミがウタの頭をなでて謝る。

そんなやりとりをしていると、

「2人して、なにやってんだ?」

呑気な声とともルフィがひょこっと現れる。

「全く興味なさそうなやつが来たわね」

「ルフィはこういうのに無頓着だからね〜」

相手にされてないような2人の反応に、むっとしたルフィがウタの持っている雑誌に目を落とす。

「キス?ウタは、チューしたいのか?」

あ、これは。

目つきが鋭くなるルフィに気づいたナミがウタに視線を移す。

「女の子はね、少なからずキスに興味あるものなんだよ?

不意打ちとか、良い感じのムードの中でとか。

ルフィにはちょっと難しいかもね〜?」

ふふん!とナミの心配を他所に姉ムーブを効かせて話すと、ウタはテーブルの上の菓子を一つつまみ口に運ぶ。

そんな幼馴染の態度に、

「ふーん。たしかに、おれには分かんねェかもな」と返すと、

ルフィはおもむろにウタの両頬に手を置いて顔を固定し、口を当て、勢いそのままに舌をウタの口に捩じ込んだ。

 侵入した舌は、まるで宝物を探す海賊のように何かを探して口内を蹂躙する。

 ウタは状況を読み込めず、それを表すかのように髪が縦横無尽に荒ぶるが、気にする者はいない。

 程なくして、先ほどの菓子を探し当てると、先程の蹂躙は嘘のように、簡単に舌を退かせた。唾液が糸を引く。

「ん、いただき」とニカッといつものように笑うと、去っていくルフィ。

 後には、やれやれ、と苦笑いするナミと何とか状況を飲み込んだが、羞恥で机に突っ伏したまま顔を上げられないウタが残された。

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