星空の下で
たくさんの星々に照らされる空の下、ルフィはスリラーバークの中を一人歩く
その理由は単純、眠くないからだ
寝ている仲間達を起こさないよう忍び足で抜け出して瓦礫の山を歩いていると、暗闇の中に明るい点があるのを見つけた
その一点に向かって走ると、大きな瓦礫の上に座って酒を飲むゾロがいた
「よっ、ゾロ」
「ルフィ」
ルフィが瓦礫の上に登ると、ゾロの翼が畳まれる
「何してたんだ?」
「んー、普通に一人で飲んでた。月見酒ならぬ星見酒だな」
「そっかー、今日は星がキレーだもんなー」
ルフィはそう言って笑い、隣で同じように空を見上げる
「お前は何してたんだ?」
「散歩だ」
「寝なくていいのか?明日はブルックにサプライズするんだろ?」
「そうだけど、まだねむくねェ」
「そうか」
それだけ言うとゾロも空を見上げ直した
眠い時に眠り起きたい時に起きる、それが船長の“ポリスー”なのだ
「 そういやお前、どうやってモリアから逃げてきたんだ?」
ルフィが空を見上げたまま尋ねる
「アイツが「部下になれ」って言ってきたから、ふざけんなって返したんだよ。そん時出た炎で拘束が解けたから、コック連れて脱出した」
ゾロは答えながら眉間に皺を寄せ、モリアに捕まった時のことを思い出す
(おいお前、おれ様の部下になれ。そうすればお前の強い影も、お前の強くて頑丈な肉体もどっちもおれ様のものになる。最初はゾンビにしようかと思ってたが、それだと影は取れなくなるからな)
(ふざけた事ぬかすのも大概にしやがれ)
「アイツの影が届く寸前で脱出出来たのは運が良かった」
「あの影なー!厄介だったなー。でも、ゾロは誰にもやらねェぞ!お前もみんなもおれの仲間だからな!」
ルフィの言葉にゾロは小さく笑いながら「ああ、わかってる」と応えた
それから二人は暫くの間、このゴースト島での事を振り返りつつ星を眺めた
面白そうなゾンビは仲間にしたかったとか、ウソップのネガティブに助けられたとか
ブルックがラブーンの待つ仲間の一人だと知った時は驚いた、とゾロが言うと「ああ、絶対に会わせてやりてェな」とルフィは返した
「そういえば、ゾロは新しい刀見つけたんだよな」
ルフィの唐突な言葉にゾロは「ん?ああ」と返す
「ブルックの影を持ってた侍のゾンビと戦って、ソイツの刀をもらったんだ」
「侍かー、会ってみたかったなー」
ルフィはそう言いながら笑うと、空を見上げながら声を上げた
「お前、ありがとなー!ゾロは絶対大剣豪になるからなー!待ってろよー!!」
「ほかの奴らが起きるだろ!あと誰に言ってんだよ」
「ゾロの仲間だ!」
ルフィの自信たっぷりかつ根拠の無い言葉に呆れつつ、ゾロは「ありがとう」とつぶやいた
翼が微かに上下し、揺れる炎は篝火のよう
そんな彼の傍には、暗闇で見えづらいが四本の刀が抱えられていた
「なあなあ!昼間ウソップとチョッパーが言ってた変な歩き方、アレやってくれよ!」
「構わねェがまたこんどな。今やるとアイツらが泣く」