明晰夢 エピローグ
その後、とある村にて
ここは平和でのどかな村。
皆貧しくも、楽しそうに暮らしている。
楽しそうに暮らせる理由。
それは村の広場を見ればわかる。
赤い髪をした女性。
彼女を中心とした劇団。
今日も皆を楽しませるために歌い、芝居をしている。
「今日も楽しませてもらったのお……」
「おねーちゃん!いつもありがとう!」
子供から老人まで、彼女達のお陰で笑顔になっていた。とりわけ、座長である赤髪の女性の歌声と芝居は好評だった。
そんな劇を少し遠くから見ていた男は女性にこう言った。
「歌って欲しい歌があるんすがね…」
トゲトゲとした髪型に緑のコート。腰に剣を携えた男はある歌を所望した。
世界の歌姫、UTAの歌だ。
女性は一瞬考え込むような素振りをした。だがすぐに笑顔で返事をする。
「わかった! 私もその歌大好きだから張り切って歌わせてもらうね!」
女性が歌い始め、皆耳を傾ける。
とても楽しそうに、それでいて美しい歌声。
そのおかげで今日もこの村は活気に満ちていた。
村の外れ、停泊している海賊船があった。
「お頭、聴きに行かなくてよかったんですか?」
海賊船のクルーが船長らしき赤髪の男に聞く。
「ああ。それにここからでも聞こえるだろ?」
赤髪の男は船の手すり近くに立ち、歌を聴いていた。
……しばらくして、赤髪の男は話し出した。
「あいつ、おれ達の娘にそっくりだな」
顔に十字傷の入った男。その男が答える。
「声もな…」
少ししんみりとした空気が流れるが、すぐに赤髪の男が笑いながら言う。
「娘の作った歌が色々なところで流れるってのは良いもんだな」
「それに見てみろよ、ベック」
「あいつの歌ってる顔、すげェ楽しそうじゃねェか」
エピローグEND