日常から

 日常から

8歳差ルウタたまらんマン

フーシャ村に赤髪海賊団が滞在してから1年以上が経過した 


村は変わらず穏やかであり、いつもと変わらぬ日常が続いていた


「はぁ〜… 今日もルフィ結婚してくれなかった…」


もはや恒例行事となっているウタとベックマンとの恋愛相談である


「あいつも随分堅物だな… 年の差があるから応えられんのかもしれないが…」


「はぁ〜… わたしがルフィよりお姉さんだったらな〜… ルフィをメロメロにして今にでも旦那さんにしてあげるのに…」


「それこそもう10年は早く産まれてくるんだったな」


「19歳か〜… 

ルフィより2つ歳上… 

えへへ〜… きっとお姉ちゃんって言ってくれるだろうな〜…」


「ウタちゃんが19歳だったら、きっと綺麗な女性になっててルフィも虜になってたかもね」


「………マキノ、それほんと? ルフィってばわたしはともかくマキノともそんな感じじゃなさそうじゃん…」


ウタが疑いの眼差しをマキノに向ける


「そ、それはそうね… ルフィって恋愛とか結婚とか興味なさそうだし…」


「たしか生まれてからガープのやつにしごかれ続けて、そのまま海兵になったんだっけか… 

色恋のひとつや2つ経験してないとは… 

寂しい人生なもんだ…」


「ルフィはガープさんのこと尊敬してますから… 

これまでの人生に後悔はしてないと思いますけど…」


「やっぱり! わたしがルフィの人生に彩りを与えないといけないんだね!」


「そうだな… おれたちも応援してるさ」


「そういえば船長さんは? 姿が見当たりませんが…」


「お頭ならルフィのところだろうぜ 

あいつとも何回か航海をしてきた 

そろそろ本腰入れて仲間に誘おうとしてんだろうさ」


「……… 出来れば、ルフィをこの村から連れ出してあげてほしいんですけどね…」


――――

フーシャ村の桟橋 ルフィは今日も漁に勤しんでいた


「………… 釣れねぇなぁ〜…」


釣果は見られないようだ


「……素潜りするか その方がまだ捕れそうだ」


「ようルフィ 今日も釣果は無さそうだな」


「………うるせー これから大漁にとるんだよ」


漁をしていたルフィの元へ、シャンクスがやってきた


「まぁ、のんびりやればいいじゃないか」


ルフィの隣にシャンクスが座る


「バーに行かなくていいのか? 今日も賑やかそうじゃねぇか」


「………いい加減おれの目的くらいわかってるだろ?」


「………言ったろ 何度誘われてもおれはここを離れるつもりは無いって」


「分かってるさ もう何回も聞いた」


「だったら…」


「おれは諦めが悪くてね 目を付けたら粘り強く狙い続けるのさ」


「……そうかよ」


「別にお前が強いから船に来てほしいわけじゃない

海兵だった頃から、お前の人柄はよく知ってる 

ウタを救ってくれたことだってそうさ 

純粋に、お前には船に乗ってほしいと思ってるんだ」


「もの好きだな、あんたも 

元海兵を仲間にしようとするなんて」


「過去がどうだっだかなんて今更なことだ 現に今、おれたちは仲良くやれてるじゃないか」


「……そうだな」


「うちの歌姫様もお前をご所望だぜ?」


「おれはご所望じゃねぇ」


「おいおい、あんな可愛い娘をほっとくのかよ モテる男は違うねぇ」


「あんたあいつの親じゃないのかよ…」


「………」「………」


少しの間、沈黙が流れた


「……おれはよ」


「?」


「この村を離れたくねぇんだ…

ここで産まれて育ってきた…

じいちゃんの故郷でもあるからな…

ここを守ってたいんだ」


「……何回も聞いたさ だがな?」


「?」


「それだけじゃないだろ? もっと何か別に理由がある」


「………」


ルフィが、眉間に少しシワを寄せた


「過去を詮索するつもりはないと前に言ったが、前言撤回しよう 

何があったんだ? 

吐き出せば少しは楽になるぜ?」


「…………」「…………」


少しの間があり、ルフィが話しだした


「あんまり思い出したくもないから、詳しくは言わねぇけど… 

簡単に言えば、この“海”に絶望したんだ」


「何?」 


「あんたも知ってるだろ? 

この世界の“神”を 

抗うことのできない“天駆ける竜”を」


「それは…」


「海兵を辞めるちょっと前にな、この“海”の“現実”を知ったんだ

それをぶん殴ってやろうとしたけど、じいちゃんに止められた」


「…………」


「そのことでじいちゃんと大喧嘩してよ、それで海兵辞めたんだ」


「お前…」


「まぁ… 海に出るのが怖いのかもな 今のおれは ハハッ」


ルフィが、自らを嘲笑うように口にした


「敵わないデカい存在に…

どこにあるのかも分からない正義に…

広すぎる海に…

怯えてんのさ おれは」


「……すまん」


「謝んなよ 話して少しスッキリしたよ」


海は、穏やかであった…


――――

「むぅ… 何か違う方法でルフィを惚れさせるしかないかなぁ…」


「だったら、ご飯を作ってあげたら?」


「ご飯を? ルフィに?」


「えぇ ルフィ、食べることがほんとに好きだから 御馳走でも作ってあげたら、きっと喜ぶわよ」


「なるほど…! 胃袋から攻めていくんだね!」


「まぁ定石ではあるな あいつ食い意地も張ってるし」


「……!

わたしちょっと船に行ってくる!!」


ウタがバーを飛び出していった


「あら…? ウタちゃんどうしたのかしら…」


「ルゥの道具でも取りに行ったのか…?」


―――

レッド・フォース号 倉庫内


ウタは倉庫の中で食材になりそうなものを手当たり次第に探していた


「うちだって大きな海賊団なんだから、珍味の一つや二つ持ってるよね…!」


珍味を探す中、小さな宝箱を見つけた


「? なんだろこの宝箱 何か入ってるかな」


宝箱の中には、紫色をした奇妙な果実が入っていた


「果物…? 変な色してるけど… 

食べたら案外美味しいのかも! 

宝箱に入ってたから大事なものかもしれないけど… 

まぁシャンクスなら許してくれるよね!」


宝箱を小脇に抱え、ウタはバーへと戻っていった

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