旅館編

旅館編


アラバスタの冬は寒い。

スキー、スノボー、サーフィン……等と楽しい遊びを満喫した後は、夜には凍てつく寒さが待っている。

だがそんな時に入る温泉はまた格別であろう。

ビビ:着いたわね……アラバスタ旅館!

コブラ:私が受付で手続きをしてきましょう。

コブラ王は受け付けの方へと歩いて行った。

ビビ:ねぇペル、お手洗いって何処?

ペル:それならあちらです。

そう言ってペルは本当に近くにある公衆トイレを指差す。

ビビ:ありがとうペルちゃん!

イガラム:しかし……アラバスタ王宮にはもっと良い旅館があると思いますが……なぜまたこんな町外れに? 

チャカが答える。

チャカ:それはコブラ様がここを選んだのに大した理由はないですよ。偶然テレビでこの旅館が特集されたのを見て、ビビ様が興味を持たれたからです。

ペル:そう……ですか……。(ほんとは警備の都合上……王宮に近いのはマズイんですよね……)

受付でチェックインを済ませたコブラが戻ってきた。

コブラ:お待たせ。部屋は2階だ。イガラム、チャカ、案内を頼む。

チャカ:はっ! 

チャカとイガラムを先頭に一行はぞろぞろと歩き出す。

コーザ:しかし1部屋しか取らなかったのか。王の護衛はどうするんだ?

イガラム:何を言うかコーザ!コブラ様には私以外の護衛は必要ありませんぞ

チャカ:ビビ王女もいるのにか?

ビビ:べ、別に私は狙われて無いわよ!

イガラム:何を仰るのですビビ様!貴女様は我々にとって王女であると同時にお守りすべき姫なのですよ! 

イガラムは語気を荒げて言う。

ペル:問題などありませんよ。押入れを開けてみなさい。

そう言ってペルはイガラムに押入れの戸を開けさせた。そこにはロープで縛られた10人程の男女がいた。

イガラム:なんだこれは!?

チャカ:やはりいたか!王女を狙う不敬な輩め!

ペル:辺りの暗殺者は一通り倒しておきました。

イガラム:た、助かる……

ペル:この部屋の入り口と窓の周りにツメゲリ部隊も配置しました。もう何も怖くありません。

イガラム:うーむ……あまり過剰な警備は逆効果なのだがな……

チャカ:アラバスタ王国に侵入できる海賊などいないからな!だから逆手に取ったのさ!

コーザ:た、確かにそうだな……

コブラ:心配などせずにお前も楽しめ!

コブラはバッグからワインを3本取り出した。

コブラ:チャカ、今日は一段と冷える。飲み頃だぞ……ん?

しかしワインはグラスの中で凍りついていた。

コーザ:おいおい!いつからここは冷凍庫になったんだ!?

ビビ:うーん……まぁ寒いのには違いないから良いんじゃない?

チャカ:それもそうだな!私達も飲むとするか! 

一行は宴会場へやってきた。宴会場の大きなテーブルはイガラム率いる護衛部隊が完璧にセッティングしていた。

ビビ:よーし!飲むわよーー!

ペル:あ、ビビ様まだ未成年なのでお酒は……

ビビ:えー!なんでよ〜私の成人まであと10ヶ月もあるじゃない!いいでしょ!ちょっとくらい〜!

テラコッタ:大丈夫よビビ様。貴女の分まで私が飲みます!

ビビ:えっ……!テラコッタさんが……飲む!?

コーザ:あーもうっ!さっさと飲もう!おれが許可する!

ペル:ビビ様、コーザもこう言ってる事だし……飲みましょうか。

コブラ:イガラム、ツメゲリ部隊はどうしてる?

イガラム:問題ありません。コブラ様のお部屋を警護しております。何かあればすぐに伝えます。

コブラ:うむ。

ビビ:あっ!鍋があるじゃない!鍋食べよ鍋!

イガラム:ビビ様、まだ昼間ですよ。

ビビ:えー鍋ないのぉ〜?

テラコッタ:私が作りますわ〜! 

テラコッタがそう意気込み鍋を作りに行った。しかし……料理はどうした訳か野菜だらけだった。野菜炒めだろうか?とにかく山盛りになっていた。

ペル:ん……?えっ!?だ、大丈夫なんですかこれ!?

チャカ:マズイぞ……これは!ネフェルタリ家は代々野菜を食べると身体に異常をきたす特異体質なんだ!彼らにとって野菜は毒なんだ!

ペル:ええっ!?

チャカ:は、早く……逃げた方がいい……!

ビビ達一行が避難している最中、鍋を乗せたトレーを持ったテラコッタが部屋の前にやってきた。

テラコッタ:お待たせ〜♡お野菜たっぷりの特製テラコッタちゃん特製鍋よ〜!どう?美味しそうでしょ……♡ほらぁ私って美人だし料理も得意だから野菜なんて食べなくても充分なのに……

イガラムがニコニコしながら頷く。

コーザ:普通に美味しいが……

ペル:あっ!ビビ様食べちゃダメです……!

ビビは既に野菜を口に入れていた。

ビビ:モグモグ……

イガラム:いかん!

コーザ:遅かったか……!

ビビ:うっ……!ぐえっ!急に腹痛がぁぁぁあ!!うわぁぁぉぁぁぁぁお!!!! 吐血した。テラコッタ特製野菜鍋を食べて吐血した。食べたのはついさっきだと言うのに、ものすごい量だ。

テラコッタ:あら!?やだっ何事かしら!?これは悪い虫ね……

コブラ:ビビィィーーーーー!!!

ツメゲリ部隊:うわあああ!ビビ様が死にそうだあ!

コーザ:ツメゲリ部隊!直ぐに治療を!

ツメゲリ部隊:お薬投与します!

テラコッタ:駄目よ。それ……毒入ってるわよ

コーザ:毒には毒だ!解毒薬投与しろ!

テラコッタ:悪いわね〜それ……私が作った毒よ♡

コーザ:お前の仕業かァァァーーー!!

チャカ:殺せェェーーーッ!!この魔女を今すぐ殺せぇぇぇえ!!! 

ツメゲリ部隊はテラコッタに襲いかかった。だがすぐに全滅した。彼らも一応は訓練を受けたプロだったはずなのだが。情けない話だ。やはり野菜のせいであろう。テラコッタは逃げていった。

ペル:さぁビビ様……お飲みなさい……

ペルはビビに薬を飲ませた。

ビビ:うう……薬は美味しくないのよねぇ〜。

イガラム:ビビ様、お部屋を移動しましょう。こんな寒い部屋はよくありません。さぁさ早く!

ビビ:はーいっ……!

コブラ:うーむ……しかし腹が減ったな……

よし!ビビ王女!久しぶりに一緒に風呂に入ろうではないか!!

王女と王が一緒に風呂に入るなんて本来は許されない事だが、いくら敵襲の可能性があるとは言え一応は民宿なのだ。周りに気兼ねする必要もあるまい。

ペル:この旅館はどうやら混浴のみのようですね……

テラコッタ:混浴は辞めましょう。私の体に毒よ

コーザ:おれも無理……

チャカ:イガラムさん、コブラ様とビビ様がご入浴されるそうですがどうしますか?

イガラム:仕方ない。護衛してこい!おれは護衛など必要無いと言ったんだがな……心配性のチャカがどうしてもと言うのでな……仕方がないから行くとしよう。万が一にも我々以外に国王と王女の肌を晒す訳にはいかんからな……!

チャカ:さ、流石イガラムさん……!そこまで考えておられたので……!?

大浴場へ入ったコブラ達。

ビビ:結構広いわねー!うへーあったかーい! 

コブラとビビは露天風呂に入った。ビビは子供とはいえ女性、身体は勿論、目のやりどころに困る状況だ。しかしそんな事は気にしていない二人だった。

イガラム:あ〜〜いい感じの温度だあ〜〜(* ́ρ`*)

コーザ:風呂はいいもんだ!

ペル:ちょっとお二人とも……コブラ様とビビ様がご入浴なされているんですから少しは遠慮したらどうです……?

テラコッタ:何を言うのペル君!この二人の裸体を見られるチャンスなんてもう二度とないのよ!思う存分目に焼き付けておきたいのは至極当然!!さぁもっと近づくのよペル君!!

イガラム:落ち着け……

ビビ:あっ!砂の湯よ!ここに入ると流砂みたいに流されて気持ちいいんですよ!ほら、ビビ様も入ってみなされ!

ビビ:えーいいよー恥ずかしいし……

コブラ:良いから良いから!

コブラはビビを砂の湯に押し込んだ。するとビビはみるみるうちに流されていった。

ビビ:わっ!何これすごいっ!!きゃははは!楽しい〜!!

コブラ:どれ私も……うおおぉぉおーーーーー!?(o

́・ω・)σ σ)* ́д`;)サァ……シュゴォイィィー……オォォォ……♪オモシロスギテハイメチャウゥー……♪

コーザ:な、なんか国王が楽しそうに流されて行ったぞ……

チャカ:まぁ良いか。

チャカはプールに飛び込み水中からテラコッタを見た。するとテラコッタはなんと……砂風呂の砂を食べていた。

チャカ:さすがは魔女……!なんて奴だ……

テラコッタ:うふふ、毒と薬は私の主食よ……♡

チャカ:本当に人間か……この女……

ペル:あまり詮索すると二度とこの浴場から出れないぞ……

テラコッタについての相談をする二人の方にビビが走って来た。ビビの裸は見慣れていないので流石に目を背けた二人だった。ビビはペルにしがみついて言う。

ビビ:ねぇペルちゃん、上がろうか!

ペル:そうですね。もうかれこれ1時間くらい入っていますから。

チャカ:待って下さいビビ様!国王がまだです!

イガラム:国王ならここにおるぞー!!

コブラ:チャカー!!手を貸してくれーーっ!!助けてくれーーーっ……!!!

コブラが流されて行ってしまったので、ビビとイガラムとペルはとりあえず露天風呂から上がり、テラコッタは砂風呂に一人残り、チャカも暇だからと砂風呂に残った。

コブラ達一行は部屋に戻った。

コーザ:飯も食って風呂も入ってもうやる事ないだろ……

ビビ:そんなことも無いわよ。まだゲームセンターで遊んでないから!

イガラム:ビビ様……もう夜も遅いですし、後は部屋で遊んだ方が良いかと……

ビビ:えーーつまんないの!!

テラコッタ:ねぇビビ様、二階の図書室には行った?面白い漫画があったわよ。

ビビ:え?なにそれ知らない!行くわ!

そう言ってビビは一人で走って行った。

コーザ:あっ!お、おい……!どうしようイガラムさん……!?

イガラム:構うことはないさ……どうせ本は読めないし……読んだら毒で死んじゃうのだ……?まぁ死ぬ前に解放してやるがな……!!

チャカ:じゃあ私は気晴らしにゲームセンターにでも行ってきますか。あそこなら大体の遊びは楽しめます。

ペル:私はさっき見た美しい王女様を酒の肴にここで呑むとするか。

チャカ:じゃあ皆様、良い夜を……

コーザ:さてと……どうしようかな……?ビビは行ったし。イガラムさんどうする?

イガラム:そうだなあ……とりあえず煙草でも吸うか?

コーザ:お供します。そういえば国王はどちらへ?姿が見えませんが……?

イガラム:うむ……コブラ様はいきなり私に枕をぶっつけたので、お布団に包んで拘束した。

コーザ:仕方のない人だな……まあおれもよくやるけど……

ビビは図書室に着いた。

ビビ:何よこの本!絵が一枚もないけど!?

イガラム:何やってんですか……

ビビ:イガラム!この本文字しかないの。どうしよう!

ビビが見せた本は表紙は美しい女の絵で、題は『幻の姫と光の王子』と書かれていた。しかし中身は全て文字で埋め尽くされていた。

ビビ:うーん……読めないわ!

イガラム:だから言ったでしょう……その本は魔女しか読めないのです。まぁ貴女も魔女だけどな

ビビ:へーそうなの?じゃあ読んでみてよイガラム!

イガラム:え?あぁはいはい……!

コーザ:(イガラムさんて確か字が読めたっけ……)

イガラム:これはですね……えっと……無理です……!

ビビ:駄目じゃない!役立たず!

イガラム:いやだって字が読めないもん……しょうがないですよ。

ビビ:もう本は良いわ……ゲームセンターに行きます。

ビビ達はゲームセンターに着いた。

チャカ:行けっ!行けっ!もっと強く蹴るんだ!!

ペル:もうやめろチャカ!!お前の敗けだ!!

ビビ:楽しそうね!

コーザ:いやそうか……?

イガラム:なんだあれは……!?

ビビが見たのは、パンチングマシンで一喜一憂するチャカだった。

イガラム:パンチングマシンか……他にもカードゲームにダーツ、ファミコンもある。懐かしいなあ……

ビビ:あぁ、イガラムてば昔は指揮官だったんだっけね。じゃあこれで勝負しましょうよ!

ビビが出したのはチェスだった。

コーザ:え?なにこれ?ルールがよくわからないんだけど……ペルさん教えてくれないかな……?

ペル:良いでしょう!私が教えて差し上げましょう!一体のキングが他の全ての駒を取れるかというゲームです。キングは成るとクイーンとビショップになり、取られるとポーンです!ポーンは角がある奴ですね。

コーザ:わ、わかった……!ありがとう!

ビビ:さ、やるわよイガラム!

チャカ:やめろビビ様!!その男には絶対に勝てない……!!逃げろっ……!殺される……!

ビビとイガラムはチェスのゲームを始めた。勝負の結果はビビが勝った。

イガラム:今日はこの位で勘弁してやる……!次は負けん……!!

ビビ:イガラムて結構下手なんだねー。もっと戦略を錬らないと!

コーザ:いやお前が言うな……!!

ビビはゲームセンターを後にした。一方、コブラの拘束を解きながらチャカは呟いた。

チャカ:陛下とあの王女は本当に良く似ておりますな……

翌日、朝風呂に浸かり、朝食を摂り終えた一行は旅館の受付からある話を聞く。

受付:我が旅館の代表がお待ちです!早く応接室へどうぞ!

コブラ:代表?誰だろう……? 応接室へ入ると、そこには国王がよく知る人物がいた。それは昨日風呂でコブラを流砂の刑にしたテラコッタだった。

コブラ:お前だったのか……!何の用だ……まさか!?また薬を盛る気か!その手には乗らないぞ!!

テラコッタ:そう……給仕長とは仮初の姿よ……!

チャカ:何!クソッ!

チャカは警戒態勢を取る。

コブラ:まぁ待てチャカ……!まだ話は終わっていないようだぞ……

テラコッタ:その通りよ……実は昨日、貴方達の部屋から騒音が響いて来て眠れなかったの……もうあんな事をしたら駄目よ……!

ビビ:ごめんテラコッタ!でもあれはパパが私達の裸を覗こうとしたから……ついカッとなって殴っちゃったのよ。悪かったわね。

イガラム:まぁ正直どうでもいい問題よ!ハッハッハ!

ペル:我々には無関係ですな。あ、チャカは関係あるのか?

チャカ:まあな……!

実はチャカもビビと一緒にコブラをボコボコにしたのだ。

ビビ:じゃあ帰りましょうか!

テラコッタ:ご来店ありがとう御座いました!またのご来店お待ちしております。

チャカ:なんかあっけなかったな……

コブラ:本当にな……!じゃあ帰るとするか……!

その日、ビビ一行は旅館を後にした。


Report Page