「新入り」と看護師

「新入り」と看護師


※作者がFGOにあまり触れてないので解釈違いが発生するかもしれんすまん



悪名高い「麦わらの一味」に新たなる仲間が加わった。晴れて11人目となったのはあの元「王家七武海」にして魚人界の人気者、 “海侠”ジンベエその人である。世間は益々驚愕と恐怖に包まれた。今まで政府のお墨付きで勝手気ままにしてきた極悪海賊の一人が「革命軍」よりも国際政治を騒がせる「一味」となったのだ。

しかしそんな下馬評は本人と顔を合わせれば霧消するだろう。彼は無法者だが無辜を殺傷するような人間ではない。寧ろ仁義に厚く優しさを尊ぶその人となりは誰もを安心させることだろう。

「一味」の面々もそんな彼を歓迎していたが・・・



これは鬼ヶ島天上決戦後の一幕である。


前に進む足と共に左右に揺れる銀髪。衛兵のように厳格で、どこか貴族のような上品さを思い起こさせるような赤。ジンベエが彼女に対し最初に浮かべた印象は、「ネプチューン王とオトヒメ王妃のよう」だった。余り感情を表に出さず、誇り高い姿はかつての主君を。凜とした美しさと誰もを包む優しさは主君の妻を連想させた。


(お二方がここにおればのぅ)


きっと彼女のことを気に入ってくれるだろう。ジンベエは確信していた。しかしここで小事ができた。ジンベエ自身は彼女のことをよく知らない。一言、二言話す程度。それもそのはず、互いに忙しいのだ。ナイチンゲールは看護師としての仕事が尽きることはなく、チョッパーやサンジと共に日夜健康と船上のQOL向上を図っている。ジンベエも役職柄ナミやロビンと共にいることが多い。

つまり、「初めまして」の階段を上がってそのまんま。



「フローちゃんがどうしたって?」

「わしは彼女のことをよう知らんでな。サンジから見てどう映るのか、答えてくれると助かるんじゃが」

「あー、そうだな・・・」


サンジはピカピカに吹き上げた皿の山を食器棚に仕舞いながら考えた。ジンベエも隣に行き微量ながら手伝おうとする。


「おれの仕事だ、気にすんな」

「そうか?」

「お前もフローちゃんのことは気に入ると思うぜ。彼女も今みたいによく手伝ってくれてたし・・・」


【ドラム王国出航以降】


コックの役職に収まる範疇を軽く飛び越え、サンジは船上生活のほとんどを担っていた。下ごしらえ、調理、掃除、洗濯、買い物、記録、備品整理。時偶ウソップや「愛しのナミさん」も助けてくれたことがあるが、二人も当然各々の領分がある。手を煩わせてはならない。


「ふぅ、後は乾いたモンの始末だな・・・」


とある昼下がり、晴れた甲板。太陽の香りを纏う衣服が皆靡いている。風呂に入らず汚いゴムと藻の分も無理矢理引っ剥がして洗濯洗剤で洗い流したのでいつもより量は少しだけ多いが、サンジからすればいつものルーティーンなので気にはしない。焦がさないように咥えていた煙草の煙を消して灰皿に捨て、キッチンの外に出た。

先客がいたので少々面食らった。


「サンジ料理長、お疲れ様です」

「フローちゃん」


大きく、真っ白なシーツに遮られ見えなかったが、彼女は既に取り込みの真っ最中だった。皺一つなくアイロンで整えられた衣類はその精巧さを失うことなく畳まれ、積み上がった小さな丘が何個もできていた。


「こちらでよろしいでしょうか?勝手な行為であるため正しい方法かは分かりませんが」

「あ、有り難うな、手伝ってくれて。後はおれが」


といっても流石はあのドクトリーヌくれはの弟子なのか、その固い意志は崩れない。


「サンジ料理長、貴方は先程昼食の処理を終わらせたばかりです」

「いいよいいよ、おれのはすぐに終わっちまうから暇なんだ」

「それでは、私もこのまま手伝わせて頂きます」


乗ってくれたばかりのレディを働かせてしまうのは複雑ではあるが、彼女の意見を尊重することにした。サンジからすれば当然のことである。


「このアイロンは優れものですね、やはり良い値には良いクオリティがついているものです」


ようやく半分終えたか、という具合の頃に彼女が切り出した。


「それね、意外なことにルフィが店で掘り出してくれてさ」

「キャプテン・ルフィは目利きが優れているのですね」

「まーそうだな。アホだがセンスはあると思うよ」


実際、彼は特殊な才能があるのだろう。サンジはそう考える。目の前にいる麗しの看護師とトナカイの医者も始め、可憐な航海士や器用な狙撃手、実力はある剣士と亡命王女、相棒のカルガモ。彼の引く「籤」に外れはない。


「でも、無理に使い続けるとヒートアップしてしまう」

「そうなんだよな。一度に全部皺を伸ばすことができたら良いんだけどなぁ。文句言えねぇけど」

「だからこそ、大切にしなければなりませんね」

「買い換えるのも楽じゃねぇからなぁ」


「貴方も、ですよ」

「へ?」


ナイチンゲールはすっくと立ち上がり、サンジと目を合わせた。緋色の、まるでガーネットのような、吸い込まれそうな程に美しい瞳が合わさり、サンジはやはり綺麗だと心中頷く。


「貴方も大切な船の一員ですから。自分を労るのも必要なことです。それに、アイロンのように絶対に替えは効きません」

「フローちゃん・・・」

「私の時間を割いてしまっていると気にすることはありません、少しは身を休めてください。これは看護師としての言葉です」

「おぅそうだ、どっかいけぐるぐる野郎」


看護師と医者による処方は絶対。サンジもようやく下がろうとしたら、奥の方から野太い声が。畳まれた洗濯物タワー群の裏にずっとゾロがいたのだ。ナイチンゲールと共に分担していたのだろう。道理で減りが速かった訳だ。


「ンだとゴラァ!」

「看護師の言うことは絶対なんだろ?逆らっちゃいけねェよな」

「二人とも止めなさい、衣服が乱れてしまいます」


「彼女はおれとルフィがドラムの城に向かう顛末をナミさんとチョッパーから聞いてたんだ。それもあってか、おれに優しくしてくれたのさ」

「何とも心温まる話じゃ」


ルフィとナミを庇おうとしてまで自己を削るその悪癖を、ナイチンゲールは早々に気付いていたのかもしれない。あのアイロンの例えが証左だろう。


(思慮深く、思いやりがある)


シンクに残った食器を片付けた後サンジに礼を告げ、ジンベエは次なる人物の下に向かった。


「フローのことか?おれはドクトリーヌも入れて3人でいたから、よく知ってるぞ」

「そうか、それは一層頼れるわい」


薬草と消毒液の匂いに包まれた医務室。ジンベエは頑丈な身体と規則正しい生活習慣から余り訪れることはないが、この部屋の主とはすっかり戦友の仲である。チョッパーは尊敬する「海の漢」からの頼みに喜色を隠さずに応じた。


「一層頼れるだなんて・・・・・・言われても嬉しくねーぞコノヤロー!」

「にしては浮かれておるように見受けるが」

「そうだなぁ、おれ、フローとの会話でずっと覚えてることがあるんだ」


【リュウグウ王国出国直後、パンクハザード島までの海路上】


「お疲れ様です、ドクトル・チョッパー」

「フロー、ありがとな。色々と」

「いえ、お礼の程では」


二年ぶりの再開に喜ぶのも束の間、急に始まった「新魚人海賊団」との交戦。そして船長ルフィによる「四皇」 “ビッグ・マム”への啖呵。新航路は最先一転し、今後も苛烈な道のりが続くだろう。チョッパーは早速不安を隠せなかった。


「おれ、一時は本当にどうなっちゃうかと思って・・・」

「そうですね、私もあのような酷い薬物乱用は見たことがありません」

「それだ!アイツら、すぐにESを服用するから。まだルフィ達がぶっ飛ばしてくれたから良かったけど」

「オーバードーズ、断つべき病です」

「おれも気をつけないと。まだ未完成なんだ、これ」


チョッパーの手には改良されたランブルボールが一錠。強化された「怪物強化」で敵幹部を倒せたものの、最悪の事態を考慮せざるを得なかった。


「しかし諸刃の剣にもなり得るランブルボールをあそこまで強化できたのは、流石ドクトルかと」

「ホめられても嬉しくねェぞコノヤロ~!!」

「だからこそ、ドクトルもあのような事態にならないようにして頂きたいのです」

「フロー・・・」

「私が再び故国クリミアに飛ばされたのは、ご存じかと思います」


「私は、彼の地で確信に至ったことが一つあります」


ナイチンゲールの言葉が紡いだクリミアの惨劇は、魚人島の悲劇やホグバックが陥った狂気を遙かに超えていた。凍土で固まる血漿、叫びと怨嗟、キャタピラの軋み、唸る大砲、海原を切り裂く軍艦、走る魚雷、死を以て待ち構える機雷。ジェルマから購入されていた毒ガスが猛威を振るい、ドンキホーテ・ファミリーにより製造されていた覚醒剤が怯える兵士に常備されていた。クリミアに攻め込んできた独裁者とその軍による無謀な命令と捨てられた命。


「私は実力不足でした。戦争を止めることはできましたが、それでも救えたのは数百人程度」

「止めれただけでも十分凄ェな・・・」

「病原を断つことが本分ですから」


といっても、敵国に入ったときには例の独裁者は自らこめかみを撃ち抜いていた。軍の残党が降伏したことでクリミアの戦争は終わった。ナイチンゲールは破壊された敵国の官邸跡で呆然とするだけだった。これが1年前。仲間達は皆ようやく彼女の故国に平穏が訪れたことを示すその一面記事を見て安堵していたという。


「私は何もかもなくなった荒野を見て、あのドクトルを思い起こさずにはいられませんでした」

「・・・ドクターのことか」


ナイチンゲールは静かに頷いた。


「心の病は、凍てついてしまった感情は、一度そうなってしまうと治癒するのは困難です。私が彼のようになるにはまだまだ程遠い」


彼女の目指す先にはいつだってくれはがいた。そこにヒルルクが加わったことが、当時のチョッパーにとっては本当に嬉しいことだった。


「だからこそ、芯が必要なのでしょう。大切な何かを護り、そして患者を止め、その人をも救う芯が」

「ドクトル・チョッパー、貴方にはその力があると私は確信しています」


彼女の優しい微笑みに、チョッパーも応えた。


「おれも、そう思う」

「フローも、強い心があると思う」

「有り難う御座います。ですが、精進しなければ。これからはもっと厳しくなるでしょうから」

「おれも強くなるよ。万能薬になるために。一緒に頑張ろうな」

「えぇ、勿論です」


「そう言ってくれたフローの目には、芯っていうのがあったと思うんだ。おれ、医学以外はよく知らねェから芯がどういうものかは説明できないけど・・・」

「大丈夫じゃチョッパー、分かりやすかったぞ」

「ホントか?!」

「お主にも芯がある。自信を持て」

「え、エヘヘ・・・」


(強く、清くある。難しい道を進む覚悟)


ジンベエはそのような人物に惹かれてしまう。本人も薄々自覚していた。


さて、どうせなら外部からの視点も聞いてみたいところ、丁度良いところにいたので早速声をかけた。


「出航の準備は進んでおるか?」

「ボチボチだ。だが船の改修は済んだ」

「そうか。それは吉報じゃのぅトラ男」

「その渾名で呼ぶな」



「天使屋について?」

「お主達にはウチの面々が大分世話になったからのぅ。少し聞いてみたくてな」

「おれは下らねぇ噂話をしている暇はないんだが」

「とは言いつつも茶は用意してくれるんじゃな」

「ペンギンが勝手にやっただけだ」

「おぉ、茶柱が立っておる。目出度い船出になるの」

「チッ・・・」



「海侠屋、お前は天使屋をどう見る」

「ふむ、今のところは・・・」

「・・・成程な。概ね正しい」

「概ね?」

「これは、おれの勝手な私見だが・・・・・・アイツはただの人間だ。カタギに近い」


【決戦後ドレスローザの一幕】


瓦礫ばかりとしても、そこにいる人々が決して不幸とは限らない。誰もが忘れ去っていた、12年の悪夢からの解放。英雄の名は大きく広まり、介入の姿勢を見せていた「海軍」も矛を収めていた。雁字搦めになっていた糸は全て断ち切られ、マリオネットとなっていた国はようやく歩み出すだろう。

歓声と感動の中でローは瓦礫の隅に座り、黙ってビブルカードを見つめていた。ポケットに入れたままだとすっかり忘れてしまう。この先も多分記憶には留まらないだろう。ローは興味の在る無しによる差が激しい。これはある種の信頼にも近いが。

カードは無事だ。少し焦げ付いた箇所もあるが、まぁ自分の見込んだクルーはそう簡単にはくたばるまい。それに同盟の一部が既にゾウに向かっている。指示は事前に手紙に記し飛ばしているのでもし読んでいたのなら協力もできる。

どうせまた忘れるだろうけど失う訳にはいかない。ローはさっさとポケットに仕舞い込んだ。


「お疲れ様です」

「お前もな」


彼女が持ってきてくれたのは水筒の中にたっぷりと入った水だった。命がけの状況で気付かなかったのか、喉が渇いていたことにようやく気付いたローは有難く受け取った。水筒の柄には青いカモメ。確か、あの海軍大将は話の分かるヤツだった。怪我人の救護や復興作業を担ってくれている。この水分も支給してくれたものだ。


「あんなのが大将とはな」

「あれもまた、正義の一つでしょうから」


出会いが出会いならもっと友好的な関係を結べていただろうか。ローは海賊の一端だが「海軍」への評価は高いものだった。


「そういえば、何を見ていたのですか?」

「あぁ、これか」


確かにずっと何かを見ていたのだから傍目からすると気になるだろう。「麦わらの一味」にいる人間は大抵そういうヤツの集まりだ。


「ビブルカードだ。おれのクルーの分」

「無事なのですね、喜ばしいものです」


彼女の微笑みからは感情の偽りがないと分かる。


「クルーの皆様は、今何処に?」

「ゾウ。黒足屋達が既に向かってるから合流してくれてるだろう」

「彼等とは別行動なのですね」

「まぁな」

「彼等もきっと、作戦遂行のために動いてくれていたのでしょうか。私達としても感謝の意を示したいことです」

「あぁ、それは違うな・・・」


「・・・アイツらはこのことを知らない」

「え?」


ローとしては他人の話なのだから別に良いか、と安直に考えていた。自分だけの生きる目的に巻き込むのは悪い、だから跡で合流することを見越してゾウで待たせた、有事の際には指示があるので何とかなる、それに後々新聞で知るから問題はない。そんなことをポツポツと話した。

顔を上げると、絶対零度の表情。


あ、マズい。


「ドクトル・トラファルガー・・・・・・貴方は何も分かっていない」

「お、おい。別におれはお前等のことを」

「そういうことではありません」


ぴしゃり、と言い訳を遮られた。怒鳴ることも感情を高ぶらせることもなかったが、それでも十分な怒りである。


「大切な人を守れない、救いたいのに救えない。果たして、医者がそのような行動を取るのが正解なのですか?」

「あー、・・・」

「そもそも、です。何のためにクルーの方々は貴方についていったのだとお思いなのですか?彼等はそれで納得するのでしょうか?」

「私達は2年間、何も出来ないままでした。安否も取れず、ただ進むしかありませんでした。それでも皆が無事だと把握しているからこそ再会まで辿り着いたのです」

「貴方のクルーは皆、新聞を見るまでは状況を把握できません。恐らくパンクハザードで同盟を結んだ程度しか知らないでしょう。その間、貴方が渡しているであろうトラファルガー・ローのビブルカードは焦げ付き、小さくなっていく。それを見るしかない彼等がどう感じるか、考えたことはありますか?」

「・・・・・・」


限りなく正論。ローは最早言い返すどころか首を横に振ることすらできない程の威圧。


「・・・天使屋、お前は何故」


-そこまでして。


「・・・私は、」


-無力な人間だったからです。


ローは新聞やニュースを通してクリミアの戦争を知っている。クリミアを攻めていたあの独裁国家の無法振りも知っている。彼等が隣国だったフレバンス跡を占領したニュースを聞いた時、ローもまた断固蹂躙してやろうか、と内心静かに煮えたぎっていた。その戦争が終わった号外の写真に、彼女の姿が映っていたのが脳裏に焼き付いている。


「故国が戦争に巻き込まれたのは、あれだけではありません。「北の海」は、戦争ばかりです。私の家族も、友人も・・・・・・」


かつてクリミアの、雪の多い長閑な街に生まれたナイチンゲールは何故「フローレンス・ナイチンゲール」になったのか。何故単身、「偉大なる航路」の冬島に赴くことになったのか。何故彼女は自らの無力を痛感するに至ったのか。全てを話してくれた。そして、仲間が側に居ることの大切さ。これに関してはローも熟知していたが、それでも彼女は静かに話してくれた。


「・・・いずれ貴方も私達と共にゾウに向かいます。彼等にどう申し開きするか、考えておくように」

「おれに命令するなよ・・・」

「いいですね?」

「・・・・・・分かった」


ローはこのことは誰にも伝えないことを決めた。恐らく彼女の仲間は知っているだろうし、自分がお節介を焼くのもお門違いだからだ。


「まぁ、皆まで言わなくともわかるだろ。天使屋はずっと故郷で看護師を目指しているままのカタギみたいなもんだ。 “鋼鉄の天使”だとか“陸軍省”だとか言われているようだが、似合わねぇ女だ」


ローは全てを話し終えた。当然ナイチンゲールの過去には触れなかった。いずれジンベエも知る日が来るだろうし、別に今この場で開示しなくてもこの男は察するだろうという判断である。


「そうであったか」

(無力さを知っていた、からこそ・・・・・・か。わしも見落としておったかもしれぬ。そうじゃ、元々強い子などおらん)

「しかし、トラファルガー」

「何だ?」

「仲間を無断で置いていくのは、」

「そこからはお前等全員からも何度も言われた!もういい!」


「いったれいったれ」(小声)

「もっと聞かせてやれー」(微かに聞こえる小声)

「キャプテンのバカー」(若干声が上ずっている)


「テメェ等・・・」


いつの間にか話を聞いていたのだろう、クルー達からの野次を睨み付けるロー。


「良い仲間じゃな」

「・・・・・・まぁな」

「そうじゃ、これを」

「何だ、この封筒は」


ジンベエがこの黄色い潜水艦を訪れた理由は、もう一つあった。


「あの日の治療代じゃ。大した額でもないが、納めてくれんか」

「ウチは病院じゃねェ」

「しかし、何もせぬのはわしとしても困る。額が少ないなら、」

「こんだけ分厚いんだから寧ろ多すぎる。ぼったくりの藪医者じゃないんだぞ」

「非合法なのは間違っておらんじゃろ」

「・・・それもそうだがな・・・」


ジンベエがサニー号に戻ると、皆はせっせと出港準備を進めていたのが見えた。


「お帰りなさいませ、Mr.ジンベエ」

「フロー」

「ドクトル・トラファルガーには渡せましたか?」

「ウム、しっかりと受け取ってくれたわい」(四の五の言わせずに置いていった)


ジンベエは彼女をじっと見た。元々の体格差もあるが、とても小さい。衝撃を与えるとすぐに砕け散ってしまいそうな程の繊細さ。ジンベエはエラのついた大きな手で、彼女の頭を撫でた。ナイチンゲールはきょとんとしたままだ。


「あの、如何されましたか・・・?」

「ウム、お主はよう頑張っておるからの、つい・・・」


(本当に、良い仲間に恵まれた)


頭上に広がる快晴は、きっとサクラ王国やクリミアにも広がっていることだろう。ジンベエはそう思った。




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