誓い

誓い




偉大なる航路のとある島。

その沖合に停泊する巨大な帆船の甲板にて、2人の男が言葉を交わしていた。


 「ニューゲート、貴方がた白ひげ海賊団の助力、誠に感謝する。我々だけでは2人を確保できなかった」

 

「礼には及ばねェなドラゴン。おれはただ息子の頼みを聞いてやっただけのことよ」


島の名は「バルティゴ」。

世界政府打倒を目指す"革命軍"が本拠地を構える、真っ白い土に覆われた大地。

 帆船の名は海賊船「モビー・ディック号」。

この世で最も海賊王の座に近いと評される"白ひげ海賊団"のホームシップ。

そして男たちの名は、世界最悪の犯罪者”革命家”モンキー・D・ドラゴンと、世界最強の男”白ひげ”エドワード・ニューゲート。

本来ならば関わり合うことのないだろう両者がなぜこうしているのか、それには1年前に起きたある出来事が関係している。


当時2人の海軍将校、海軍の英雄二世モンキー・D・ルフィ及び歌姫のウタという2名が天竜人に暴行を加えるという大事件が発生。翌日には2人が野に下り行方不明になったと報じられた。

その後独自のツテで彼らの生存を確認したドラゴンと、記憶を取り戻した参謀総長サボは、革命軍を率いてルフィ・ウタ両名の確保に向けて動き出した。

世界政府転覆を狙う革命軍の首魁として、世界を牛耳る天竜人に逆らった知名度の高い海兵を保護する意義は大きい。なにより2人はドラゴンにとっては実の息子とその幼馴染、サボにとっては幼少期を共に過ごした兄妹分なのだ。彼らの活躍を秘かに喜んでいた身としては、保護しない理由がない。


それから日も経たない内に飛び込んできたのは、かの四皇”白ひげ”と”赤髪のシャンクス”が縄張りを離れ活動を開始したという情報だ。

赤髪が行動するのはまだわかる。ウタが彼の娘である事(とルフィが赤髪と付き合いがある事)は以前から把握していた為、保護するために動き出したのだろう。うまく接触できれば協力関係が結べるかもしれない。

しかし白ひげの意図が掴めない。奴らも2人と関わりがあるのか?それともこの状況で、自分達の把握していない別の火種が撒かれたのか?

行動の読めなさに誰もが疑問を抱く中、それを打開したのはサボの心の底からの叫びだった。

 

『ドラゴンさん頼む、赤髪だけじゃない、白ひげとも会ってくれ!!なぜ白ひげが動き出したのか、おれにはわかる!!きっと「あいつ」がルフィとウタを助けるよう言ったんだ!!白ひげのところにいるおれ達の兄弟が……エースが!!』

 

実際のところサボは確信があったわけでなくただの勘だったのだが、結果的にこれが超ファインプレーだった。

まさに白ひげは二番隊隊長にして彼ら三人の兄弟分、ポートガス・D・エースの決死の頼みを聞き入れ、自分たちと同じようにルフィとウタの保護に乗り出していたのだ。

記憶を取り戻した事でエースの情報も集めていたサボがいなければ、このような奇跡は起こりもしなかっただろう。

その半年後、赤髪海賊団とはコンタクトが取れなかった革命軍だったが、白ひげ海賊団との接触には成功。

目的を共にしていることが分かったニューゲートは渡りに船と革命軍に同盟を持ち掛けドラゴンもこれを承諾、ここに”最強”と”最悪”による連合が誕生したのである。

……死んだと思い込んでいた兄弟たるサボと再会できたエースが大泣きするという一幕もあったのだが。

 

閑話休題。

かくして3日前に海軍大将”黄猿”の追跡を受けるルフィとウタをようやく発見、そのまま黄猿を退けることに成功し2人を保護した両者は、これからの身振りを検討するためにバルティゴに集まっていたのだ。今頃世間はいろいろな意味で大騒ぎとなっているだろうがそこはどうでもいい。

同盟は一時的な物とは言え、革命軍にとって白ひげ海賊団とのパイプ自体は強力だ。これから如何様にも活用できうる。

白ひげ海賊団としても、敵対する相手は少ない方が望ましい。革命軍とは思想の一部こそ相容れないが、個人個人を見ていくと交流するのも吝かではない面々がそろっている。

 

「しかし驚いたぜ。エースの兄妹と聞いてどんな奴かと思っていたが……片やおめェの息子、片やあのハナッタレ小僧の娘。さらにおめェんとこの参謀総長も兄弟分とはよ」

 

「それを言うなら我々も知らなかったことだ。よもや貴方がたの第二番隊隊長"火拳"とサボが、2人の兄弟分だったなど」

 

ルフィとウタについては今回の事件が起こる前から情報を集めていたドラゴンだが、エースやサボとの繋がりまでは割り出せなかった。きっかけが父ガープから「海軍に入った」と聞かされた事な上、そもそもサボはつい最近まで記憶を失っていたから当然なのだが。

そんな4人は今、積もる話もあるだろうという事でバルティゴの一角に集まってもらっている。

 

「それにしても赤髪め、娘の危機だってのに姿を見せねェとは親の風上にも置けねェ奴だ。次会ったらブン殴ってやらねェとな」

 

「彼らも2人を探しているはずだ、貴方と同時期に新聞記事で騒がれていたからな。貴方がたと違って探し出すことは出来なかったが……目的は同じだったのだ、そのうち会う事もあるだろう」

 

盛大にため息をつきシャンクスをなじるニューゲートと、ここにいない彼に向けてフォローを入れるドラゴン。もし彼らにも会うことが出来ていたなら、この同盟には今頃赤髪海賊団も加わっていたのかもしれない。

 

「グラララララ!!まァなにはともあれ、せっかく兄妹全員再会できたんだ。今頃昔話に花でも咲かせてるんじゃねェか?」

 

「……だと良いがな」

 

豪快に笑うニューゲートに対し、ドラゴンの面立ちは沈痛だ。

見てしまったから。兄二人と会えても尚、険しい顔が完全には晴れなかったルフィとウタの姿を。



 

「へェ~そうか!!じゃああの後サボはここの奴らに拾われていたのか!!」

 

「しかもそれがルフィのお父さんの仲間だなんて……世界って意外と狭いね」


「おれも最初聞いた時は驚いたぜ。いつの間にそんな偉くなってたんだよサボ」


「お前も似たようなもんじゃねェかエース。白ひげの船に乗ってるなんてとんでもねェぞ」

 

バルティゴに設立されている革命軍本拠地。その部屋の一角にて、ルフィ、ウタ、エース、そしてサボの4人は談笑していた。

11年ぶりに再会した兄妹たち。その中でもルフィとウタがサボを認識したときの驚きようと言ったらそれは凄かった。死んでいたと思っていた兄貴分が生きて目の前に現れたのだから当然だろう。

2人が落ち着いてから、エースとサボは今までの冒険譚や活動の日々をルフィとウタに話していた。

傷心状態の彼らに海軍時代の話をさせるのは酷だと思った故の気遣いだ。

特にサボの話に喰い付いていた。エースは時折新聞記事で名前を見ていたが、サボに関しては影も形もなかったから。

 

「ごめんな、2人とも。兄貴なのに忘れちまっていて。連絡もできなかったしよ」

 

「そんなんどうでもいいよ!!会えただけで十分だ!!」

 

「うん、そうだよ!!生きててよかった、サボ!!」

 

「ははっ……ありがとう、ルフィ、ウタ」

 

つい最近まで思い返す事すら無かったにも拘らず、昔と変わらず接してくれる弟分と妹分。

2人を助けられてよかったとサボは安堵する……が、そこにエースが茶化すように割って入ってきた。

 

「おいおい、おれにはありがとうって言ってくれねェのか、サボ?」

 

「あ、悪いエース……って待て!!お前にはもう半年前に言ったじゃねェか!!忘れたってのかよ!?」

 

「うるせェ!!何度でも言え!!心配かけさせやがってこのバカ野郎!!」

 

「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!いいぞエース、もっと言ってやれ!!」

 

「そうそう、私たちのことを忘れていた薄情モノなお兄ちゃんにはまだ足りないよ!!」

 

思わず焦るサボに構わず冗談半分で物申すエース、そしてそれに悪ノリするルフィとウタ。

ああ、この感じだ。

懐かしい感覚だった。他愛ない話でずっと盛り上がっていたクソガキの頃。紆余曲折あったが、こうして再会できて同じように馬鹿騒ぎが出来るのがたまらなく嬉しかった。

 

……だというのに。

エースもサボも、嬉しさの中にあるほんの少しの違和感を拭えなかった。

理由は分かっている。ルフィとウタだ。

あの時と同じはずなのに、2人とも心から安らいでいるようには見えなくて。

こちらを心配させないよう、空元気を絞り出しているようにも見えて。

 

「ところでウタ、お前医者に診てもらわなくていいのか?見た感じ大した傷はなさそうだけど、それでも心配だぞ」

 

「あ、おれも同感だ。体は大丈夫でも心がやられてるなんてあり得る話だからな。あんな目にあったんだ、やっぱ大分キてるんじゃねェか?」

 

だからエースとサボは2人の内、とくに様子が優れないと踏んだウタを慮る方向に話題を変えた。

今までの境遇を考えればその発想に至るのは当然だろう。

 

「あ……」

 

花のような笑顔が一瞬にして強張った。この様子だとやはりどこかしら調子の悪い部分があるらしい。

ウタだけじゃない。隣に座るルフィにも緊張が走る。

そんな2人を見てやっぱりなとエースとサボは思う。

なにしろウタが医者にかかったのは、保護した直後に軽く傷の手当てをした時だけなのだ。まだ診てない所に問題がないとは、医者でもないエースとサボには言い切れない。

 

「……大丈夫じゃなさそうだな」

 

「とりあえず熱でも測ってみるか?一応体温計持ってきたんだけどよ」

 

言いながらエースは懐から体温計を取り出し、「ほら」とウタに手渡そうとする。それは何の下心もない純粋な労りの気持ち。

ウタに差し出された体温計が――――――エースの手が触れるまであと10センチ。

そんなエースを見てウタは。

 

「っ、ひっ……!?」

 

バチン!!

 

恐怖に顔を歪め、迫る手を払い除け。

 

「……ウタ?」

 

――――――そして、空気が凍った。

 

「あっ……ごめん、エース!!ごめ、ごめんなさい……!!私、わたしっ……!!」

 

「おっ……おい!!大丈夫なのか、ウタ――――――!?」

 

先ほどまでの曲がりなりにも和やかだった空気が一瞬で霧散する。

ウタも正気に戻ったのか、青ざめて何度も詫びの言葉を口にし始めた。

その取り乱しように只事ではなさを感じ取ったエースは声をかけるが、二の句を継ぐより先にルフィがウタを抱きしめる。

 

「落ち着け、ウタ……」

 

「ルフィ、どうしよう……!!私、私やっちゃった……!!エースにっ、ひどい事しちゃった!!」

 

まるで懺悔するかのように、ウタはルフィの胸の内で喘ぐ。

そんな彼女の背と頭を撫でるルフィは、なんだかひどく手馴れているように見えた。

 

「ウタ……大丈夫、大丈夫だ。エースはあんなことする奴じゃねェ。お前もよく分かってるだろ?」

 

「うん、分かってる、エースはそんな人じゃない……わかってる、のに……!!うああ……っ!!」

 

ルフィの慰めも意味なく、すすり泣いてしまった。ルフィはそれでも構わず優しく背中をさすり続ける。

目の前の光景が信じられなかった。

なんだこれは。これは、この弱弱しい少女が、本当にあのウタなのか?さっきまで談笑していた妹分なのか?

絶句するエースに代わる形で、サボが口を開く。

 

「……ルフィ、ウタは」

 

「ああ……ごめんな、2人とも。ウタ、あの白ブタにひどい目に合わされてから、ずっとこうなんだ。おれ以外の誰かに触られるの、すげェ怖がるようになっちまって……」

 

女ならまだ大丈夫なんだけどなと申し訳程度に付け加えるルフィの表情は怒りに歪んでいた。

だからか、とサボは納得した。攫われかけ暴行を受けたことが、ウタに強固なトラウマとして刻み込まれてしまったのだ。なんでもウタを攫おうとした天竜人チャルロス聖……ルフィの言うところの白ブタは、求婚をはぐらかした彼女の頬を叩いたというではないか。

ましてやそれから1年にも及ぶ逃亡生活で精神をすり減らす日々。そんな経験をすれば、他人をろくに信用できなくなってしまってもおかしくはない。

それにしても兄弟分たるエースでさえ受け入れられないとは相当だ。自分たちが思う以上にウタの精神はぐちゃぐちゃになっているらしい。

そういえばウタの手当てをしたのは自分たちの船医マルコだったとエースは思い出す。あの時の彼女は気絶していたが結果的にはそれが幸いしたようだ。もし意識があれば、ウタは明確に拒絶していただろう。

……思い返せば、その時ルフィがマルコの事をやけに警戒していた時点で気づくべきだったのかもしれない。

 

「今のウタにはおれしかいねェんだ。だから、おれがそばに居ねェと……おれが、ウタを守らねェと……」

 

自己嫌悪と恐怖で恐慌状態になっているウタと、恐ろしく剣呑な空気を纏うルフィ。

思わずエースとサボは凍り付く。

目の前の少女は、目の前の少年は、決してこんな様ではなかったはずだ。

あの天真爛漫でお転婆だった妹が、これほどまでに怯えきってルフィに泣き縋るしかできなくなってしまっているなんて。

あの明るく能天気だった弟が、ウタを抱えてこれほどまでにどす黒く目をギラつかせるようになってしまっているなんて。

 

「……すまねェ、ウタ。お前の事、ちっとも分ってなかった。……怖かったんだな、ずっと。怖がらせてごめんな」

 

「無心なことを言っちまった。本当にすまねェ、ごめんなウタ」

 

「ううん……エースも、サボも、悪くないよ……!!私が悪いの……!!エースとサボを信じ切ることが出来ない、私が……!!ごめんなさい……ごめんなさい……!!」

 

「何言ってんだウタ、お前が悪いわけねェだろ!!悪いのはあいつだ、あのゴミクズみてェな天竜人だ!!」

 

手を突き頭を下げるエースとサボに対し、ウタも泣きながら詫びる。それでもその手はルフィにしかと絡まったままで、そうすることしかできない自分がとても悔しくて情けなくなる。

ルフィもまたウタの罪悪感を少しでも和らげるための言葉を口にする。

 

「……ルフィ、ウタ、大丈夫だ。これから先何が起ころうと、おれ達はお前らの味方だ。おれだけじゃねえ、オヤジも、ドラゴンもいる。ウタはすぐ信じるのは難しいだろうが……紛れもない本心だ、それだけは留めておいてくれ」

 

「おれ達はお前らの兄ちゃんなんだ。お前らが助けてほしいと言ったらすぐに駆け付ける。だから……1人で何でもかんでも抱え込まないでくれ」

 

エースとサボは、かつてない程二人の力になりたいという思いが強まっていた。その思いを弟と妹に告げる。

そんな2人の言葉にルフィは、

 

「ああ……ありがとう、エース、サボ」

 

と寂しげな微笑みを返し。

 

「……うん」

 

ウタもただ、ぎこちなく頷くだけであった。

 


 

(昔なら、大泣きしてありがとうって言ってただろうにな……)

 

あの後、自分たちではどうにもならないと判断したエースとサボは、ウタをルフィに任せ部屋を後にした。

コルボ山で過ごしていた時にしょっちゅう泣いていたルフィのことを思い出す。

あの頃ルフィはそうする度にウタに呆れられ、エースには怒鳴られ、そしてサボに慰められていた。

それに比べると、今のルフィはずっと頼もしくなった。同時に頼られなくなったことに一抹の寂しさも感じた。

 

――――――否。

 

(違う……!!違うだろう……!!「頼らない」んじゃねェ、「頼れない」んだ……!!ルフィとウタの心は……!!)

 

ああは言っていたものの、ルフィとウタが自分たちに甘えるとは微塵も思えなかった。

ウタは言わずもがな、ルフィも長い逃亡生活のせいで目に見えて精神が摩耗してしまっているのがわかった。

しかしそれでも砕けることはなかったのだろう。すり減った心はやがて形を変え硬く鋭く研ぎ澄まされ、ルフィに強固な、それでいて悲壮な決意を固めさせていた――――――「すべてを敵に回してもウタを守る」と。

泣き虫ながら良くも悪くも昔から肝の据わっていた弟だが、ここに来てそれが最悪の形で嵌ってしまったのだ。今のルフィに、自分たちの本心がちゃんと伝わっている可能性は限りなく低い。むしろ迷惑をかけるわけにはいかないとすら思っている節がある。

 

そしてそれはウタも同じ。世界のすべてから追われる中、彼女の事はずっとルフィが守っていたのは想像に難くない。生傷だらけだったルフィに対し、目立った外傷がなかった事がその証拠だ。

……正確には戦えなくなってしまったのだろう。大切な人と引き剥がされるトラウマを強く刺激されたことも、終わりの見えない逃避行も、彼女から戦う力を奪い去るには十分すぎた。

何もかもが敵に見え弱り切った妹が唯一縋れるのは、幼少期からそばにいてくれた幼馴染。

心が罅割れてしまった今のウタには、最早ルフィしか信じられる者がいないのだろう。

それはどれほど辛い事か。家族を信じたいのに、そう出来ない事は。

 

幼い頃から変わり果てた弟と妹を思い、胸の中に怒りと悔しさが渦巻く。

2人をここまで追い詰めた碌でもないこの世界に対して。

そしてそんな2人に何もしてやれない、不甲斐ない自分自身に対して。

 

やがてどちらが促すでもなく、エースとサボは思いを吐露していた。

 

「なァ、サボ。おれはルフィとウタにはずっと海兵でいて欲しかったんだよ。なんなら一生会えなくてもいいって思ってた」

 

「奇遇だなエース、今のおれも同じ気持ちだよ。あいつらは無法者のおれ達とは違う。少なくとも、こんな所にまで来て欲しくはなかった」

 

新聞に載っていた在りし日の2人を思い出す。次世代の英雄としての活躍と、一緒に添えられた心底楽しそうな写真の数々。

一緒にバカやって、飯食って、たまには喧嘩して、そのうち結婚もして……そうやって生きていてくれれば良かった。

2人は日向をずっと歩んでいけるはずだった。

 

「でもダメだ。今のままじゃあいつらが笑えねェ」

 

「その通りだ。世界政府がある限り、今が大海賊時代である限り、あいつらに平穏は訪れねェ」


エースとサボの胸にはある決意が来訪していた。ルフィとウタを苦しめるものはすべてブっ飛ばすと。

2人に平穏な生活を取り戻させると。

 

「おれは決めたよ。オヤジを海賊王にする。オヤジが無理ならおれがなる。“ひとつなぎの大秘宝“を見つけ出して、大海賊時代を終わらせる」

 

「ならおれは世界政府を打ち倒す。腐った竜の首を根こそぎ切り落として、やつらから世界を解放する」

 

たとえ血が繋がって無くとも、拒絶されることがあっても、自分たちは彼らの兄なのだ。

弟妹のために立ち上がれないものが、この世界のどこにいる。

 

「だからよ、サボ、やろうぜ。また4人で笑うために。そうでなくても、あいつらだけは笑えるように。2人のための「新時代」を作ろう。おれとお前の約束だ」

 

「勿論だエース。可愛い弟と妹の為なら、なんだってするさ」

 

ゴツン、と。お互いに拳をぶつけ合う。

 それは図らずも、かつてルフィとウタが交わした約束と同じで。

11年の時を経てその兄たる二人もまた、同じ誓いを掲げていた。

そんな2人の覚悟を試すかのように、窓の外では嵐と雷が吹き荒れていた。

 

 「でもサボ、その前に」

 

「ん?」

 

「赤髪を……シャンクスを一発殴りに行こうぜ。大事な娘と友達を放ったらかしにするんじゃねェってな」

 

「……ははっ賛成だ。まずはそれからだよな」


先までの重みのある決意はどこへやら、なんとも俗な目的を軽快に語るエース。

サボもまたそんなエースに、思わず吹き出しながらも同意を返すのであった。


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