新しい関係
モテパニ作者カイゼリン「………」
そこはアンダーグ帝国。
そのアンダーグ帝国の支配者…いや、それは過去の事。
今は純粋な君主たるカイゼリン・アンダーグは今日も和平を結んだスカイランドのプリンセスエルに頼まれたキュアマジェスティのぬいぐるみを作っていた。
カバトン「カイゼリン様〜。そろそろプリンセスの人形もできそうなのねん?次こそは俺たちの頼むのねん」
カイゼリン「カバトンか、すまんが今一度待ってもらおうか」
カバトン「ん〜?またなんか作るのねん?」
カイゼリン「ああ、ある意味ではプリンセスより先の予定だ」
〜〜〜
ましろ(常識人)「(わたしたちの冒険が終わってからしばらく。あれからもソラちゃんたちはよくうちに来るけど、やっぱりいない時は少し寂しいな。あげはちゃんも最近少し忙しそうだしすっかり静かに…)」
ましろ(ソラまし)「ソラちゃんがいない生活たえられないよー!」
ましろ(ソラ拓)「うーん、今度はどうやってソラちゃんと拓海くんの引き合わせようかな?」
ましろ(作家)「うおおお!わたしたちの絵本どんどん描かなきゃ!」
ましろ(妖精)『作家を応援している』
ましろ(飼い主)「うふふ〜もうすぐわんだふるな日々がはじまるんだね〜♪」
イイネイヌ「ヌンダフル?」
ましろ(常識人)「(静かには…ならないかもだけど…)」
プリキュアとしての戦いの日々が終わっても相変わらずのましろ達。
そんな時虹ヶ丘家の前でゲートが開いた。
ましろ(常識人)「(ソラちゃん!?…ううん、ゲートの色が違う)」
そこに現れたのは…
カイゼリン「久しいな。キュアプリズム、いや虹ヶ丘ましろ」
ましろ(常識人)「カイゼリン!?え、えっと今日はエルちゃんやソラちゃんはいなくて…」
カイゼリン「よい。用があるのはましろ、お前…いや、正しくはプリキュアであるなら誰でもよかった。所在を知っているのはお前だけだったからここを訪ねたのだ」
ましろ(常識人)「?」
ましろ(モンしろ)「あの!バッタモンダーも一緒に来てますか!?」
カイゼリン「む?いやすまんが今日は一人だ」
ましろ(モンしろ)「そんなぁ…ワクワクモンダーの感想直接言いたかったのに…」
肩を落としながらましろ(モンしろ)は引っ込んでいく。
カイゼリン「ましろ、アンダーグ帝国での戦いでも思ったが、お前は姉妹が多いのだな」
ましろ(常識人)「一周回って新鮮な反応!」
カイゼリン「ふっ、家族は大切にな」
ましろ(常識人)「あ…」
他の自分の言及についツッコミに入ってしまったが、カイゼリンから見たら彼女が失ってしまった家族がたくさんいる羨望があるのかもしれない。
ましろ(常識人)「そ、それでわたしに用って?」
カイゼリン「ああ、ブラックペッパーの所在を知りたい」
ましろ(常識人)「え!?」
予想外の答えにましろは驚く。
ましろ(まし拓)「なんでもいい!拓に会いにいくチャンスだよ!(だったらわたしが案内するよ!)」
ましろ(常識人)「逆!」
〜〜〜
所変わって品田家。
拓海「………」
ダークドリーム「どうかした拓海?ちょっと元気無いけど」
拓海「ああ…実は例の夢、最近見ないんだよ」
知らない姉の夢、連日とはいかないものの数日おきに見ていたはずなのに最近すっかり見ない。
目安としてはアンダーグ帝国との決戦に参加してからだっただろうか…?
そんな拓海の言葉にダークドリームは、涙を流した。
ダークドリーム「よかった…やっと正気に戻ったんだ…そのうち私が姉と呼ばれなきなきゃいけないと思ってたけど…」
拓海「なんでそこまで姉呼びされるの待ってんだ」
ダークドリーム「だってそんな調子じゃいつか理想の姉を探してナンパとかしそうだし、それなら身内の恥は身内の中で済ませた方がいいでしょ」
拓海「俺をなんだと思ってんだ?」
ダークドリーム「逆に聞くけどいないはずの姉がいる夢をずっと見てるやつがどう思われると思ってるの?」
拓海「む…」
悔しいが言い返せない。
逆の立場なら拓海がどうかしてると思っただろう。
そんな中家のチャイムが鳴り、拓海はそれに対応した。
ましろ(まし拓)「拓♪来たよー♪」
拓海「虹ヶ丘、どうした?」
ましろ「今日は拓に会いたい人がいるから連れてきたの。ほら」
ましろから引き合わされたその人物は…
カイゼリン「お前が、タクミか?」
その人物は自分の覚えとは声と人相が少し違うが。
拓海「まさか…姉さん?」
夢で見た姉の姿だ。
ダークドリーム「手遅れだったー!もう品田家はおしまいよー!」
〜〜〜
みなみ「それで…?二人で話したいから私のところに行ってこいって言われてきたと?」
ダークドリーム「大丈夫なのかな…?私も参加するって言ったのにダメって言われた…拓海戻ってこれるかな…?」
みなみ「その前に状況を整理していい?えっと、兄さんが実在しない姉がいる夢を私がここに来る前から見てて、それを最近見なくなったと思ったらその姉と思しき人物が実際現れた、と?」
ダークドリーム「そうなの。拓海が見知らぬ相手を姉にしちゃう…」
みなみ「うん、ちょっとよくわからない。いえ、流れは把握できたのだけどわかるのにわからないというか…」
ダークドリーム「わかるのにわからないってどういうこと?」
みなみ「ええっと、なんて説明すれば…」
〜〜〜
カイゼリン「こうして顔を合わせるのは初めてか、名乗っておこう。私の名はカイゼリン・アンダーグ。アンダーグ帝国を治めているものだ」
拓海「俺は品田拓海。ブラックペッパーとしてあんたらのとことは何度か戦ったことがあるな。…けど今日来た理由は違う用件だよな?」
カイゼリン「その通りだ。単刀直入に聞く。お前もあの夢を見たか?」
拓海「あの夢っていうのは…」
カイゼリン「私が見知らぬ場所、そして見知らぬ幼子を弟として扱っていた夢だ。それを幾度も繰り返し見ていた」
拓海「たぶん同じ夢だな。もっとも俺の場合は見知った場所だったけど。声の高さや目つきが違うけどあれはあんたでいいのか?」
カイゼリン「昔の私だろうな、みてくれが違うのはお互い様というやつだろう」
そう。
拓海から見ればカイゼリンが異なるが、カイゼリンから見れば幼少の拓海は現在の拓海とは異なるのだ。
カイゼリン「であれば尚のこと訳のわからん夢であるがな、現在どころか過去の姿を見知らぬ相手に見られるとは。…まあそれはどうでもよい。私の事はプリンセスたちから聞いているか?」
拓海「…ああ」
拓海はすでに知っている。
カイゼリンの壮絶な人生を。
カイゼリン「私は多くの物を失った。親友も、父親も、そして愛した人もな…しかし私にも残った物がある。ゆえに絶望して縮こまらず世界を広げたいと思ったのだ。ソラ達のおかげでな。…だが私は弱い。心に大きな穴が空いた状態で歩み続ける事はきっとできない。それでもその穴が少しでも埋まれば歩めるかもしれない。…だからタクミよ、お前を弟として扱ってもよいか?」
重々しいカイゼリンの言葉、それに拓海は…
拓海「当たり前だろ姉さん」
カイゼリン「ふっ、当たり前か。こちらは一大決心のつもりで言ったのだが」
至極当然とばかりに肯定した。
カイゼリン「私とお前の関係を考えれば友か愛する人への誘いが普通なのかもしれんが、友は新しく得ているし、愛する人は…さすがにこりごりだからな」
拓海「話には聞いてるけど、あれは確かに」
最後に軽く愚痴混じりな言葉を残してカイゼリンは席を立つ。
カイゼリン「邪魔したな。いずれまた来よう。その時はまた姉と呼んでくれ」
拓海「待ってくれ姉さん!せっかくだしゆいやダークドリームとも話していけば…」
カイゼリン「よい。私とお前の関係は私たち二人で完結していればよいのだ」パチン!
カイゼリンが指を鳴らすと拓海の手元にある物が現れる。
拓海「これは、ぬいぐるみ?」
現れたのはカイゼリンを模したぬいぐるみだった。
カイゼリン「持っていてほしい。それともそういうのはあまり趣味ではないか?」
拓海「いや、大切にするよ。これと一緒に」
拓海が見せたのは、クリスマス近くにカイゼリンからスキアヘッドを経由して渡された石人形。
カイゼリン「ふっ、いい子だ」
そう言ってカイゼリンは部屋を出た。
ましろ(まし拓)「あ、話終わった?それじゃあ拓、今度はわたしと…」
カイゼリン「帰るぞ、ましろの姉妹よ」
ましろ(まし拓)「え!?待ってわたしまだ拓と全然話してな…!」
そんな叫びも虚しくましろはカイゼリンとともにゲートの向こうに消えていった。
拓海はそれを見送り…
拓海「また帰ってきてくれよ。姉さん」
そう言った。