断章:丑
ふとした時に思うなんで貴方は見ず知らずの私を拾ったのか
ただの善意?
そんなわけ無い、そこまであの人の人間が出来ていない事は暮らしてたら分かる。
…あぁ、
貴方は誰を見ているの?
※※※
「はーい!!!スパチャありがとう!!今日の配信はこれまで!!!」
「うおおおおお!!!!ウシミちゃーん!!!!」
「………」
「それじゃあ明日の配信も沢山スパチャしてね!」
「ヒャハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!!!」
猫天与は動画を前に大はしゃぎをしている六月と毒兎にキレ散らかす
「どうしたのヨウ?カルシウム不足?」
「こっちがゆっくり寝てる時に大音量で動画流した挙句大騒ぎしたらカルシウムも爆速で減っていくだろうなぁ!!!」
「ヒャハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!うるせぇぞ静かにしろ!!」
「お前に言われたくねぇわァァァァァァァァァ!!!」
「ギャァァァァァァァァァ!!!」
猫天与は口から呪力砲を放ち兎の丸焼きを作る。
「第一なんだよその誰も見た事の無い配信者は!?」
「え!?ヨウ知らないの!?あのウシミちゃんを…!?」
猫天与は画面を覗き見る
「…チャンネル登録者も視聴数も3人だしタイトルもサムネもやたら性的だし典型的な底辺じゃねぇか!!!」
猫天与はこんなカスみたいな配信者に自分の安眠を邪魔された事にキレる。
「……なんの騒ぎだ?」
天井から空鼠が着地する
「あっ!空鼠なら当然知ってるよね!?」
六月は空鼠に画面を見せる、だがその解答は意外なものだった
「……む?こやつは…シノ…変牛では無いか?」
「え?」
「は?」
「ハァ?」
その言葉で毒兎が蘇り空鼠に詰め寄る
「ハァ!?何言ってるんだ!?こいつがあのクソ牛のわけないだろぉぉぉぉお!!!?」
「…まぁ確かにアイツが術式を他人に施したら『見』てもわからんが自分に施す場合癖があるからな…我には分かるが貴様らがわからんのも無理もない」
「……あぁ確かに変牛なら」
「待って!!変牛って誰!?自分達にだけ分かる話しないで!!」
今度は六月がキレ散らかす
「あぁすまん…だが恐らく直接見てもらった方が早いだろう」
「え?それはどういう…?」
「ざっけんなぁぁァァァァァァァァァ!!!」
「家えええええええええ!!!!!」
そう叫んだ毒兎はバイクに跨り家の壁を破壊して何処かへと向かっていった。
「…さて、追うぞ」
「あ…うん」
※※※
「さーて…今日の配信も終わりですぅ」
盗賊の隣の家の一軒家、そこにはパーカーを着た大きな少女が機材を弄っていた。
恐らく彼女はこの後自分がどんな目に遭うかなんて想像してないだろう、そんな時だった。
「クソウシィィィィイイイイイイイイイイ!!!!!!」
「ギヤアアアアアアアアア!!!!!!」
突如として壁をぶち破って入ってきた片手にチェンソーを持ちバイクに跨った兎に大して悲鳴を上げる、当然である
「な…なんで貴方がここにいるんですかぁ!?」
「テメェ俺からぶんどったスパチャかえせやぁ!!!!」
「あ…あれ貴方だったんですかぁ!?嫌ですぅ!!もう私のお金ですぅ!!!というか払ったの貴方でしょう!?」
「ざっけんなぁゴラァ!!!!!」
毒兎がチェンソーを振り上げ変牛の大きな胸を思いっきり切り落とした
「ようやく追いつい…ひっ!?ちょっと何してるの毒兎!?」
今行われている解体ショーに衝撃を受ける六月
「はー…全くアイツは」
「相変わらずだな」
「待って!?反応薄くない!?あの人胸そぎ落とされてるんだけど!?」
「よく見てみろ」
「……え?」
胸部は削ぎ落とされたはずなのに出血が一切ない、まるで作り物かのようにポロリと落ちる
いや、胸だけではない、全身が糸が解けるかのようにバラバラになり…
「いやああああ!!!!何するんですかぁ!?」
その中に大きな雌牛が入っていた。
「も…もしかしてあの人が?」
「…ああ、猿城12獣将の一人、変牛ことシノだ」
https://telegra.ph/%E5%A4%89%E7%89%9B-04-25
※※※
「うぅ…私は何か悪い事をしたんでしょうかぁ…?ただチヤホヤされたかっただけなのにぃ…!」
「チヤホヤって言われる程の数じゃ無かったけどな」
「うぅ…やっぱり私なんてダメなんですかデカいからですか今時の子は小さいのが好きなんですかああ次はもっと小さくしないとちぴちぴちゃぱ…」
六月は一人でぶつぶつ言っている変牛に軽く恐怖しつつも疑問に思った事を尋ねる。
「さっきの…女の子の姿になってたのってなんだったの?」
「こいつの術式だ、そうだな…変牛、六月にやって見てくれ」
空鼠が変牛の顔を見て頼む
「…まぁ貴方の頼みなら別にいいですけどぉ…とりあえず見た目はお隣さんにしますねぇ…はぁ!!!」
変牛がそう叫ぶと地面から牛のような大きなカバンが大きな音を立て床を貫通して生えた
「…え!?」
「さぁ…ドーン!!!」
「のわっ!?」
変牛に勢いよく体当たりされ六月はバッグの中に放り込まれる、そして変牛もバッグの中に入る。
バッグの中で暴れるかの如く形が伸びたり縮んだりし止まる。
バッグの中から出てきたのはさっきの少女の姿の変牛と盗賊だった
「………え!?ちょ!?私お父さんになってる!?」
六月は信じられないかのように自分の姿を見る
「相変わらずすごい精度だな…俺でも演技されたらわからねぇなこれ」
「これが私の術式…変幻偽装ですぅ…人間は見たさえ良ければ脳が勝手に妥協して気付かないものですぅ」
「…………」
「ん?六月どうした?」
「い…いやなんでも無いよ!?」
六月は慌てて返事をする
「そう!この術式は凄いんですぅ!そう……この術式があれば簡単にチヤホヤされると思ったのにぃ…なんで上手くいかないんですかぁ…第…」
変牛はまた何かスイッチが入ったのがぶつぶつと一人毎を呟いている
「さぁ…そろそろ返してもらうぜぇ!!!俺のスパチャウゴアッ!?」
毒兎の顔面に空鼠の拳がめり込む
「…では邪魔したな、帰るぞ貴様ら」
「あばよー!」
猫天与達は家に向かって歩き出す
「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ…」
変牛は気づいていなかったが
「……………」
※※※
『人間は見た目さえ良ければ…』
※※※
(…見た目さえ良ければ、か)
六月の表情には暗い影が落ちていた