料理のてんさい

料理のてんさい



今日も今日とて、人型ボディを使い立香とイチャつくルビーとサファイア。

今日はルビーが手料理を作り、立香に振る舞っていた。今日のメニューはオムライスだ。ご丁寧にケチャップでハートマークまで描かれている。


『旦那様、はいあーん♥』

「あ……あーん…。…んむ……美味しい。卵はふわふわで、味付けもオレ好みだ」

『そうですか? …えへへ…。…イリヤさん達と面白おかしくやるのも良いですけど、こうやって色恋にうつつを抜かすのも悪くないですねぇ…』

「…かわいいなあルビー。やっぱり、人型ボディ手に入れてからどんどん魅力的になってると思うよ」

『もう、そんな風におだててもルビーちゃんが出せるのは結婚届くらいですよ?』

『…羨ましい。私も料理を習えば、今の姉さんのようなスキンシップができるでしょうか?』


サファイアが何気なく零した一言。…それを聞いたルビーの表情が、不自然なくらい強張った。

…この時のルビーには“第六感”としか言えないものが働いていた。理屈では説明できないが、『サファイアちゃんに料理をさせるとヤバい』という確信。それがルビーにやんわりとした静止の言葉を紡がせた。


『…あー、うーん……なんでか知りませんけど、サファイアちゃんが料理するのは危険な気が…』

『…そんなに信用がないのですか、私は…』

「お、オレはサファイアの料理も食べてみたいなー」

『旦那様…!』

『旦那様!?』


変化は薄いながらも、ぱあっと顔を輝かせるサファイア。立香のフォローは完璧と言えよう。

しかし、ルビーはそれに対し(旦那様、悪手ですね…)という感想を抱かざるを得なかった。スパダリムーブも度が過ぎれば身を滅ぼす、的なやつである。

しかし、ここでなんの手も打たないルビーではない。ここでの無策はイコール危険と本能が訴えていたからだ…!


『サファイアちゃん、まずはカルデアのキッチン組に色々手解きしてもらっては? まずは基礎から覚えるのが大事ですよ?』

『はい。では早速弟子入りしてまいります…!』

(あ、危なかったー。でもこれで大丈夫、ルビーちゃん一人では無理でも、カルデアのキッチン担当と一緒ならなんとかなるでしょう!)


かくして最低限の軌道修正に成功したルビーだったが…。


───


『おや、エリセ様ではないですか』

「サファイアさん、で良いんだよね? アナタも料理教室に?」

『ええ』

『…あ……ルビーちゃん、なーんかイヤな予感がー…』




「私は良いと思うよ。辛い……というよりは酸味が凄いけど、中々イケると思う」

『エリセ様もそう思いますか。持つべきものは友ですね』

「……。…ごめんねルビーちゃん……お姉さんにこれ以上の軌道修正は無理みたい…」

『あ、諦めないでくださいブーディカさん!! あそこで悪夢のコラボレーションが実現しかけてるんですよ!? わたしだけじゃサファイアちゃんとエリセさんを止められませーん!!』

「ほんとにゴメン! これ以上はヘルズキッチンレベルでないと無理だから!」

『そんなご無体なー!』




「…何故でち……技術は向上しているのに、何故味付けだけがこうも…!」

『…どうやら、私やエリセ様の味覚は万人受けしないようですね』

『辛いもの好きってだけらしいエリセさんはともかく……サファイアちゃん、やっぱり味音痴だったかー…』

「ルビー様……申し訳ありまちぇん。あちきは今、とてつもない敗北感を覚えているでち…! サファイア様にしてやれるのはここまででち!」

『そこまで言う程ですかあ!?』


───


数週間後…。


『私はまだ初心者ですので、今回はエリセ様とコラボしました。…ええ、大丈夫です。紅閻魔様の元で修行しましたので』

「(エリセとのコラボというのが少し不安だけど…)せっかくだしいただこうかな」

『そう言っていただけると嬉しいです。ではどうぞ、辛口の日本風カレーです。自信作ですよ』

(───朱い…!?)


朱い月、紅赤朱───そんな単語が唐突に浮かぶ程、朱い……朱いカレー。

それを前にした藤丸立香は、覚悟を決めざるを得なかった。


『旦那様、ファイトです…!』


そしてルビーは、そんな立香を親の如き目線で見守るのであった…。

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