文字で客を沸かせる者達

文字で客を沸かせる者達



【世界経済新聞】それは世界中で購読されている新聞でありとある“伝手”で最速最大の情報収集力と伝達力を誇る。しかし掲載される記事の内容は社長の匙加減で決まり政府からの隠蔽、情報操作も時には無視しそのまま載せると言う事もある。誰が呼んだか【活字のDJ】“何を載せるかは俺が決める”とは社長の弁だ。その社長【“新聞王”モルガンズ】は大のスクープ好きである、ゴシップから不祥事、死亡記事までなんでもござれ、世間を躍らせる記事を書く為ならそこに人道はない、ただ書きたいから書く、そう言った信念の元彼は今日も新聞を書き続ける。

そんな彼の新聞だが、実はニュース以外にも小説が連載されている事は周知の事実である。過去にも様々な人気作がこの新聞から生まれており今ではその小説を読む為だけに購読している者もいる。今の人気作は【海の戦士ソラ】だこの作品は北の海に“実在”する【ジェルマ66】をモチーフとされており北の海全域は勿論、世界的にも大人気を喫する作品となっている。しかし彼──、モルガンズは欲深い男だ、後一つ、何かのきっかけとなる小説があれば自分の新聞はさらに爆発的に広がると確信している、だが面白い小説等そう簡単に書けるものではないと理解しているし、何より本業であるスクープのネタ探しも疎かにはできない、スクープは鮮度があるからスクープなのであって時が過ぎたスクープはもはや過去の記録として忘れられる物なのだ。なので永続的な記録として残せ、忘れられないような物語を書ける人材を求めているのだがそんなものは大砂漠で砂金を一粒見付ける行為に等しい、その砂金もメッキが本物か分からない。故に社長の自分が出向くわけにはいかず、世界中にいる社員を使い人材を探させている。心躍らせる記事を書く事に関しては自分の右に出るものはいないと大きな自負を持つモルガンズだが、自分には読者の心を躍らせる冒険譚をかける自信はない、やろうと思えばやれなくはないがどうしても新聞調になってしまう、だから日々思うのだ

(嗚呼‼︎何処かに心躍らせる冒険譚を書ける人物はいないだろうか!)

「社長‼︎東の海支社より一報が…「なんだ‼︎私は今スクープを追うのに忙しい‼︎他の者に対応させてくれ‼︎」それが、社長直々にお見せしたいものがあると…「スクープのネタか?東の海に誰にも知られてない大スクープでも湧いて出たか?」いえ、それが一本の寄稿でして、現場の者では判断が付かないらしく…「なんだと‼︎すぐに画像をこちらに送れ‼︎」もう送ってもらってます、こちらです「でかした‼︎どれどれ…こ、これは‼︎おい君‼︎この作品の作者はまだ東の海にいるんだったな⁉︎場所はローグタウンか⁉︎」え、えぇそう聞いています「よし‼︎私はすぐにローグタウンに向かう‼︎しばらく留守は頼んだ‼︎」え〜⁉︎またですか‼︎」「何度も言わせるな‼︎スクープは鮮度が大事なんだ‼︎これを逃す手はねぇ‼︎」

そう言うとモルガンズは本社から社員であるニュースクーを使い超特急で東の海に向かっって行った。

時は少し遡り【東の海】、この海を進む“麦わらの一味”は船長の思わぬ才能に驚愕した所でローグタウンに船を進めていた。船長であるルフィはどうやら今までの形跡を物語にする為部屋に引きこもり執筆中だ、残された船員は未だに先程までの物語の余韻に浸っていた…

「─まさかの才能だったな、ルフィにあんな文才が有ったとは…」

「全くだ、その代わり絵の方は壊滅的らしいな、前にウソップに旗のマークをルフィが書いたやつ見せてもらったがアレを描いた奴があんな作品書けるって普通思わねえって」

「人は見かけによらねぇってこった、こんだけすげえモノを持ってんのに堅気じゃなく海賊をやる必要があんのか?あいつ」

「まぁ、そこはそれだ、あいつにもあいつなりの事情ってもんがあんだろ、それに見聞を広げ世界を知る為にはどうしても海に出る必要がある、そのためには政府の許可が必要なようでな、それにも金とか時間がかかるらしいから手っ取り早く海に出るためには海賊が一番率がいいんだそうだ、クソジジィが言ってた」

「案外多いのかもな、そう言った理由で海賊やってるような奴ってのは、それで俺たちみたいにお尋ね者にされちまうってわけだ、案外政府ってのも一筋縄じゃねぇみてえだな、邪魔するなら斬るまでだが」

「俺は腹を空かせてるならまずは食わせる、それが料理人としての義務だ、ってわけだからそろそろ飯の仕込みをしとかねえとな…なんか食いたいもんあるか?一応聞いといてやる」

「珍しい事もあるもんだな、明日は雨か「要らねえんならいいぞ」…酒に合う魚の塩焼きが食いてえ」「おうおう、クソうめえ塩焼き作ってやるよ」

軽く言い合いながらもキッチンへ料理の仕込みに行ったサンジ、ゾロは飯の時間まで少し寝るようで目を閉じ寝息をかき始めた。

ウソップは新兵器の開発、ナミは今後の算段を付けているようだ、するとウソップがナミに問いかける。

「なあナミよぉ、ルフィの文の才能は確かにすげえけどよ、あれで本当に金が取れんのか?ルフィを信じてねえわけじゃねえが世界を探せば他にもいると思うぜ?」

「何?不安でもあるの?「いや不安ってわけじゃ」ならいいじゃない。みんなのめり込むように読んでたじゃない、なら大丈夫よ、私もそれなりに本は読んでたつもりだけどあんなに引き込まれる文章は初めて見たもの。物を見定める鑑識眼は、誰にも負けるつもりはないわ、お金が絡むなら尚更ね」

「それを聞いて安心したよ俺は、普段通りのナミだ「ちょっとどう言うことよそれ」イヤナンデモネェ、まぁ確かにこれからの航海、色々と入り用になるだろうしな、金はあるに越した事はねえけど「なら良いじゃない、貧乏海賊なんて嫌よ、私」俺もだよ…んー、でもなーんか、後一手欲しいっつうか…うーん…「何?どうかした?」いやなルフィの文才は凄えけど、文の迫力が強すぎてイメージがつきにくいって言うか…場面の想像がしにくいって言うか、俺はこれでも色々な冒険の話が書いてある本とか呼んでたからある程度イメージがつくけどよ、子供とかがイメージつきにくいんじゃねえかって」

「確かに…子供は文字の羅列より絵から情報を得るものね…盲点だったわ、皆が感性豊かな訳じゃないものね…どうしたもんかしら」

「んー、絵から情報を得る…そうか‼︎その手があったか‼︎「何?ウソップ、何か思いついたの?」おう‼︎文字だけで勝負しようとするから悩むんだ、なら絵を付け足しちまえば良い「どういうこと?小説に絵は…あ、そっか‼︎挿絵‼︎」そう‼︎文字だけで足りねえ情報部分は挿絵で補えば良い‼︎そうすりゃあ手広く普及する‼︎「でもあの壊滅的な絵を書いたルフィよ?できると思う?」おいおいナミ、ここの海賊旗を書いたのは誰だかもう忘れちまったのかよ?そう‼︎このキャプテ「成程、文字の方をルフィが担当して絵の方はウソップが担当する感じね、うん‼︎これならいけるわ」…まぁ結局はどう言う場面なのかは俺がルフィから聞かねえとダメだけど、其処はどうにかしてみる、そうと決まればすぐにルフィと話し込まねえと、忙しくなるぞぉ〜」

どうやら新聞に記載される小説の方向性が決まったらしくウソップは作業中のルフィの部屋に入って行った…そして出来上がったのが東の海での冒険を纏めた物語である。当然そのまま出すのは流石にまずかったので、人物名はある程度ぼかしたりナミ、ゾロ、サンジの3人による監修で描写について訂正を加えた一品だ──後に続く大ヒット作品の第一作目の原本、及び原案の為後世のファンからすれば言い値で買うような代物なのだがそれはまた後の話。

タイトルはまだ決まってないが一応は一つの形として完成した本、皆で読み耽るがやはり感慨深い物がある。時折挟まれる挿絵と文章から繰り出される情報量には感服するしかない、と言っても直近で体験した事なのである程度記憶から思い起こせるのだが、ルフィの主観で書かれていたのでまた違った見解が生まれた。

「なんとかできたわね、後はこれを世経の人達に渡すだけよ、流石に本社の社長さんがいるとは思えないけど、ローグタウンなら本社につなげれるだろうしね、なんにせよ契約まで持っていけたらこっちの勝ちよ‼︎」

そう言ってるうちに目的の島に到着した。そこでルフィが話を聞いていなかったのか町の概要を聞いてきた。

「そういや書いてて聞いてなかったけどローグタウンってどんな島なんだ?」

「やっぱり聞いてなかったのね…ローグタウンはね、あの“海賊王”【ゴールド・ロジャー】が処刑された町で有名なの、別名“終わりと始まりの町”この町から“大海賊時代”が始まったのよ、グランドラインに入るならここで準備していかないとね」

「海賊王が死んだ町か…よし‼︎俺は処刑台を見に行く‼︎「それはいいけどまずアンタは原稿を提出しないとダメでしょ」そうだった、その後見に行く‼︎」

「俺も欲しい物が有る、流石に3本ねえと落ち着かねえ」

「俺は食材だな、一気に補充しとかねえとすぐに無くなっちまう」

「俺もだな、ルフィの執筆に使うインクやら紙やら補充しとかねえと、あとは色々…」

「皆入り用みたいね、だったらお小遣いをあげるからその範囲内で買い物を済ませる事‼︎ルフィとウソップはわたしについてきて、新聞社に着いたらそこで商談よ、それが終わったら自由にしていいわ、それじゃあ、解散‼︎」

【ローグタウン──“世界経済新聞社”東の海支社】此処の仕事は世界中で起きたニュースを東の海全域に広める事、そして東の海で起こった事件を本社に知らせる事である、今回の仕事は後者、つまりは此処で起こった事を本社へ伝える事なのだが、その内容はスクープではなく一つの作品の寄稿、確かにうちは読者からの作品寄稿も受け付けているのだがそれが新聞に載ると断定はできない。そもそもそう言ったものは本社の社長に相談しなくてはならないし、支部社長の自分では判断しかねる。勿論社長に相談しなくても突っぱねることはできる、そもそも此方も文を書き世界に提供するのが仕事、ある程度の目利きが可能なのだ。しかし目を通して見ればこの作品の凄まじさ、本に引き込まれるような文。それを目の前の若者、最近東の海では話題一色になっている“麦わらのルフィ”が執筆したと言うのだから驚きだ。この作品は世界に出すべきだと思い社長に取り継いだ、どうやら文字通り“飛んでくる”らしいので暫くお待ちいただいている。すると

「お待たせして申し訳ない‼︎私が世界経済新聞社“社長”モルガンズだ‼︎あの素晴らしい作品の作者は何方だ⁉︎すぐに商談と行きたい‼︎」

「書いたのは俺だぞ‼︎見ろよウソップ‼︎鳥人間だ‼︎鳥が二本足で歩いてるぞ‼︎すげーな‼︎」

「いやお前最近魚人と戦りあったばっかじゃねえか、世界は広いんだし、そう言う種族がいるって事だろ?」

「おぉ‼︎そちらの青年が‼︎しかも直近で賞金首になった“麦わらのルフィ”が文豪でもあったとは‼︎これは素晴らしいニュースだ‼︎そして長鼻の君、私は一応人間だ、正体を隠す為悪魔の実で返信してこの姿を取っている、よく勘違いされるがね、まぁ私のことは今はいいんだ、君が書いた本を私の新聞に載せて欲しいとのことだったな‼︎勿論良いとも‼︎寧ろこちらからお願いしたい所だ‼︎この本の一端に目を通した、おそらくは連載物だろう‼︎連載物の物語はファンの心を鷲掴みにする‼︎挿絵が細かく挿入されてるのもポイントが高い‼︎“海の戦士ソラ”にも挿入されてはいるがどちらかというと美術品に近いものでね、要所要所で挿絵が挿入されているこの作品は冒険の風景が目に浮かぶ‼︎是非ともウチの新聞で連載させて欲しい‼︎早速契約料の話と行こうじゃないか‼︎情報の伝達は早ければ早いほど良い‼︎」

「こっからは私の出番ね、先ずウチの冒険の話を掲載させるわけだからそれなりに貰うわよ「そこは勿論‼︎」後は作業料と著作権とかね「フム、原稿の提出はどうする?各町に私の支社があるがそれでは伝達が遅れてしまう」そこなんだけど、あなたが直接取りに来るってのはどう?世界中の誰よりも早く読める読者第1号になれるわよ「ふむ、魅力的な提案だ、だがそれをする為には船長の頭髪及び爪を少し頂かねば、位置を知らせる紙を作るのに必要でね、その製作分と其方に出向く際の手間は契約料から少し引かせてもらうぞ、紙を作るのも長距離の移動もタダではないんだ」そこは妥協するわ、取りに来てもらう立場な訳だし。後は掲載の形だけど…「そこは安心して欲しい、一気に纏めて出すのではなく1話ずつ掲載していく形をとるつもりだ、その方がストックが出来やすいだろう、物語が纏まったり完成したのなら一本連絡を寄越してくれ何処にいようともすぐに駆けつけよう‼︎これが本社直通の電々虫だ、番号を打たずともすぐに繋がる」話しは纏まったわね、なら後は…ルフィ‼︎悪いけど爪と髪を一本貰える?なんか必要みたい」

そうして一本の物語が記載された本とルフィの爪と頭髪が封された物を手にモルガンズはご満悦で契約書類にサインをした。

「可能であれば君たちの物語以外の小説も頼むよ、別料金で支払う事を約束する。世界は娯楽に飢えている‼︎君の作品は世界中の人々を魅了するだろう‼︎私が保証する‼︎では私はそろそろ本社に戻らねば‼︎今この瞬間にもスクープのネタが出ているのかもしれない‼︎さらばだ‼︎未来の文豪の一味‼︎」

「…行っちまった。ある意味ルフィみたいな奴だったな、自由奔放すぎるだろあれ」

「…まぁだからこそ社長になれたんだと思うけど…兎に角契約できて良かったわ、ある程度搾り取れたし、略奪をしないうちからしたら主な収入になるから、バリバリ働くのよ、アンタ達」

「もう終わったか?よーし‼︎目標‼︎処刑台〜‼︎」

「聞いてねえ上にもう行っちまうし、兎に角ナミ‼︎俺も欲しい物があるから此処で解散だ、処刑台かメリー号で待ち合わせようぜ」

「そうねぇ…私も欲しい服とかあるし、じゃあまた後で‼︎」

そうして麦わらの一味はそれぞれの目的の為に街へ繰り出したのだった。後に大ヒットを飛ばすこの作品の名は【ROMANCE DAWN】、その作品の始まりは奇しくも“大海賊時代”が始まった【始まりの町ローグタウン】から幕を開けた…

Fin


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