教師の性
トーマスside in
とある高級ホテル、その最上階フロアを全て貸切った男は使い魔をホテル周辺に放ち近辺を警戒していた。
「ふーむ、やはり動くのは同盟を組んでいる少年少女達か、観光しているだけにも見えるが…細かな魔力探知の礼装を仕込んでいるな?」
やれやれと言ったふうに神永達のことを観察しているトーマス
「全く、偽装も探知も全てが甘い。少年に至ってはまともな魔術行使も出来ていないじゃないか」
まるで教師のように粗を見つけては指摘する、それもそのはず彼は時計塔の全体基礎科における二級講師として教鞭を奮っている現役の教授なのだから
「ふむ、少年は日本の式神だったかな?その系統に連なる術式を扱うのか、西洋の魔術理論との融合中々面白いアプローチだ。そして少女の方は…ふむ宝石魔術かな?礼装に仕込まれているのはトルマリンか。トルマリンの魔術的性質と彼女自身の属性…おそらくは水だろうなを反応させレーダーとして扱っているのだろう。いやはや随分と荒削りな礼装だ。彼女自身で作ったものとみて間違いないな」
両手を叩きながら面白いものを見つけたように満面の笑みを浮かべている
「彼らは原石だな、磨かれていない荒削りな石だ。だが磨けば確実に輝くものを持っている。いやはやこれは参ったな、殺すつもりだったのだが気が変わってしまいそうだ」
反応がないセイバーに語るように話すトーマス、セイバーはと言えば目を閉じトーマスの後ろで直立不動の体制でいる。
「ふむ、セイバー座らなくていいのかね?」
「結構だ、警戒を解く訳にはいかない」
「……キャスターか、確かにあの陣営を放置する訳には行くまい」
そう言って手元の資料を確認する。
「キャスターのマスターは確かこの街のセカンドオーナーだったかな、確か名前は…ツチミカドだったか」
ツチミカド───土御門とはかの安倍晴明に連なる血族だ、本来ならば京の守護などが指名のはずだが…
「過去この国にあった陰陽寮だったかな?そこが解体され権威が堕ちたことに憤慨してこの聖杯戦争を起こしたのだったかな、いやこれは推測でしかないな口に出しては行けんな」
やれやれと言ったふうに首を振り
「ひとまずは目先のティーンズ達に指導をしなければならないな」
───特に、自身の英霊の手綱を握りきれていない少年には
そう言って使い魔たちとの視覚同期を切る
トーマスside out
穂乃果side in
京都の市内中を歩き回り観光地で偽装()をしながらようやくセイバーのマスターが拠点としているホテルを突き止めた、尚後ろの方では男どもが疲労困憊状態になっている。
「…なっさけない」
「情けないって言うけどなぁ!1回休憩挟んだとはいえぶっ通しでお前らの買い物に付き合った身にもなって見ろ!」そう言って両手に抱えている複数の荷物を見せてくる
「あら、美少女達と買い物出来たんだからそれくらい安いでしょ?」
「限度があるわぁ!!!」
…美少女っていうのは否定しないのね、天然の女たらしめ
「とりあえずこの荷物たちは邪魔になるし一旦拠点に戻って正面突破でいいんだな?」
「ええ、準備を整えて突入するわよ」
そう言ってホテルの最上階を見る、明らかに階下と魔術的な防護が違いすぎる。あそこにセイバーのマスターが居るはずだ
目標を確認し、背を向ける。今夜、確実にあの男を仕留める。そう決意をし拠点へと戻る。
───
拠点にて
アイツは礼装の式神を鞄に突っ込んで行くらしい、一応鞄自体も礼装のようで本人曰く「魔力通せば鉄板以上に固くなる、少なくとも俺が用意出来る道具で穴を開けることは出来なかった」ようで最低限の防御礼装になるのだろう。
私も宝石鞄を用意しその中に純度と魔力の高い戦闘用の宝石を幾つかと虎の子の礼装を用意し準備を終える
バーサーカーとライダーも私服ではなくバーサーカーは召喚時のおそらく生前来ていたであろう装束に、ライダーも若干鎧の面積が増えた状態となっている。
「用意はいい?」
「問題ねぇ、覚悟もできてる」
「我々も問題ありません」
「何時でも行けるぜ」
各々が力強い返事を返してくれる、心強いわね
「よし、目標はセイバー。今夜でアイツらを倒して残りも一気に片付けるわよ!」
気合いを入れてホテルへと向かう。
慢心は一切していなかった、だが大英雄の恐ろしさを私たちは甘く見ていたのだ。
生前、なんの特別な力もなく竜を殺した男の実力を───
穂乃果 side out