敗走

敗走


穂乃果 side in

「全く、ゴーレムが延々と湧き続けてきたせいで無駄に時間かかっちゃった!バーサーカーそっちは!!」

「居ねぇ!別の部屋だ!」

神永クン達と引き離されてから少し時間が経ってしまった。しかも結界のせいで位置関係が狂っているのかどこの部屋に閉じ込められたかが分からない。

「私の礼装も妨害食らってまともに動かないし…」

八方塞がりか、そう思った瞬間魔力の高まりを近くの部屋から感じた。

「バーサーカー、今のは!」

「間違いねぇ!ライダーのものだ!」

だが明らかにただの戦闘によるものではあるまい、おそらくはセイバーとの戦いになっているのだろう。

そしてその部屋は今までの結界とはわけの違う強度のものが張られていた、バーサーカーが何度か叩けば砕けるだろう、だがその手間が惜しい

「バーサーカー!宝具でやっちゃって!」

「おう!ゴールデンイーター!!!」

雷を纏った斧の一撃が壁と結界を叩き壊す、その瞬間ライダーの啖呵が聞こえた

「───我が将には死んでなお立ち続けた男がいる」

「ならば、生きている私が倒れる訳にはいくまい…!」

その言葉だけでバーサーカーは状況を把握したのか声を張り上げる

「よく言ったぜ!ライダー!!!」

土煙が晴れ見えたのはボロボロのライダーと無傷のセイバー、腰を抜かしている神永クンだった。

状況は掴めた、凡そライダーが戦闘に負けトドメを刺される瞬間に止めようとした神永クンへセイバーが何かをしてそれに反応したライダーが鞭打って立ち上がった、そんなところね。

「待たせたわね!セイバー!貴方たちを倒しに来たわ!!」

今やるべきはライダーからセイバーを引き離すこと、そしてバーサーカーならそれが出来る。

「令呪を持って命ずるわ!バーサーカー!!セイバーを叩き潰して!!!」

「おおおおおっしゃあ!!!!!」

バーサーカーがその剛力でセイバーの上から斧を叩きつける、セイバーもそれを防いではいるが令呪によるブーストもある為かそれをいなすことはできないようだ。

その隙に神永クンに駆け寄る

「大丈夫、神永クン?立てる!?」

「も、問題ない、それより俺よりライダーを!」

明らかに虚勢に近い、だがライダーの方が危険なのは事実だ。だから

「わかったわ、ライダーを連れて逃げるわよ」

「ああ!」

端的にやることを伝えた、ライダーを助けるそれを明言しただけで彼は立ち上がった。

"人を助ける"それだけで彼は動けるようになる、彼は自身のためじゃない、他人のためにこそ力を発揮できる男ななのだ。

「ライダー!大丈夫か!?」

「あ、主殿…何とか…」

「さっさと離脱するわよ!バーサーカーがセイバーを抑えている間にルート考えないと!」

正直階段から逃げるという選択肢は無い、なぜならセイバーとバーサーカーの横を通らなければならないからだ

そうなると窓或いは壁をぶち破って外に出るのが最適解になるのだが…

「着地が危険すぎる…!」

どうしたものか…

「あの…私の宝具なら、何とかできます…」

「でもその傷では危険じゃない!?」

「いえ、不甲斐ないとこを見せたのです、これくらいは…」

「…ライダー、後でお説教だ」

神永クンの雰囲気が少し変わる、無茶を使用とするライダーに怒っているのだろう

「主殿…」

「だが今はライダーの案に乗る、頼むぞーーー」

ライダーの耳元で話していたせいか最後の方は聞こえなかった。だが相当な無茶を言っていることを2人はわかっているのか?

「ここ何階だと思ってんのよ!地上14階!!下手にミスったらミンチよミンチ!」

「でも、ライダーができると言ったんだ。なら出来る」

真っ直ぐな目でこちらを見据え神永クン、だとしても危険度等を測りに掛けたら明らかに危険度の方が上回る

「あのねぇ!幾らライダーを信じているからと言っても限度が…『わりぃ、マスター!そろそろキツイぞ!!』嗚呼もう!わかったわよ!壁は私が壊す!壊れた瞬間に出てちょうだい!良いわね!!」

「えぇ…、お任せ下さい」

そういったライダーはボロボロの身体に鞭打って太刀を仕舞う、そして指笛を吹き一頭の馬を呼び出した。ひらりとその馬に乗ったライダーは私たち二人も馬に乗せ合図をする

「さぁ、行きますよ」

「嗚呼もう!Achtste, tiende, kettingexplosie(八番、十番、連鎖爆発)!!」

大粒の宝石ふたつを壁になげつけ互いに込められた属性同士が反応を起こし爆発を起こす、そして車が突撃してきたかのような大穴が空いた。風が吹き付けてきて髪が乱れる。

「行きます!『遮那王流離譚外伝、鵯越一ノ谷逆落とし』!」

それってまさかあの───!ライダーの真名に気づいたと思った瞬間、ライダーは馬をホテル外壁の穴へと走らせ真っ逆さまに落ちていった

「いやぁああああああああああ!!!!!」

うそうそうそうそ!???ただの自由落下じゃない!?

───と思ったがライダーの馬はホテルの外壁をまるで地面のように駆け抜けていく、傍から見たら自由落下のようだが実際は壁を地面のようにしっかりと捉えながら走り抜けていく

ただライダーの顔色が相当に悪いため地面に降りてすぐにバーサーカーを呼び寄せる。バーサーカーはホテルから飛び降りてきたようで近くの地面が陥没してしまった…神秘の隠匿が…

「とりあえずライダーのマスターん家で良いんだな!」

そう言って即状況を理解したバーサーカーはライダーを担いだ。

「ええ!急ぐわよ、セイバーの追撃があるかもしれない!」

そう言って私たちはホテルから逃げ出した、正直な話が英霊二騎いれば勝てると思っていた。でも、それは大きな大きな間違いだったということを今日この日私たちは思い知ったのだ。

穂乃果 side out

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