救出編3(前)

救出編3(前)


「くふふっ!ぜ〜んぶ爆発させちゃうよ〜!」

「逃げるな逃げるな逃げるな!」

「消失、激唱、神話…次元を折り畳めば…この通り」

「システム:シルフV2……吹き荒れなさい!」

地下監獄で轟音が鳴り響く

ハルカが前衛を、ムツキが中衛を、黒猫と私が後衛を担当し敵を殲滅する

ハルカとムツキには強化版シッテムの箱(模造品)と多次元解釈バリアを貼っているのでダメージを受ける事は無いだろう

襲いかかる敵を全て叩きのめしながら私達はカヨコが囚われている場所へと向かう

相当追い詰められているのかこれまでのロボット兵や男だけでなく元生徒達も戦闘に参加させられていた

何十、何百もの敵が目の前に現れ銃を向けてくる

「止まれ、陸八魔アル!そこにいるのはわかって_」

「邪魔よ」

「なっ__っ゛ぁ゛!?」

私は風を操り邪魔をする奴らを死なない程度に体中を切り刻み吹き飛ばす

血飛沫が撒き散らしながら襲って来た連中が壁に叩きつけられめり込んだ

今みたいにヒナの様にこちらを認知する強者もポツポツ出始めて来たが私達の敵では無い

私がヒナに匹敵する強者をぶちのめしハルカとムツキと黒猫が殆どの敵を殲滅する

そうこうしていると、一際豪華な、まるで誰かを接待するような大きな広間に着いた

地面には高そうな赤いカーペット、天井にはシャンデリアが飾られておりとても人を閉じ込めておく場所とは思えない

「ここにカヨコがいるのよね…?」

「その筈なんだけど…前来た時と場所が違うみたいだね、探索魔法で探すからちょっと待ってて」

黒猫が動きを止め、魔法を使おうとした時だった

「動くな!ゆっくりと武器を置け侵入者供」

ぞろぞろと大勢の戦闘員達が部屋に入って来た

こちらをハッキリと認識している事から恐らく黒猫の認識阻害魔法を突破できる用な何かを準備して来たのだろう

全員がガスマスクを被っており奇怪な格好をしている

だかそれ以上に目に付いたのは__

「カヨコッ!!!」

鎖で拘束され、口元は口枷で塞がれて

裸で男に連れられているカヨコがいた

その姿は最後に見た時とはまるで違っていて

角は丸く削られ、胸は異様な程デカくなっており歩く度に大きく揺れていて気味が悪い

「このガキの命が惜しいのなら今直ぐこう__」

「ふざけるなよ屑供がっっっ!!!」

あまりの怒りに勝手に体が動き出していた

地面を蹴りカヨコを連れている戦闘員に猛接近し

心臓辺りを殴りつける

桁外れの威力のためか腕が胸を貫通し背中から私の腕が飛び出ているのが確認できる

素早く腕を引き抜き周囲を確認するが、周りの連中は止まったまま動かない

どうやら私が何をしたのか早すぎて誰も認識出来ていないらしい

ムツキ達も今だカヨコを見て驚いた表情を浮かべたままだった

それならばと私は手に光を集め簡易的な剣を作り出し近くにいる戦闘員の腕を斬りつける

スパッという擬音が聞こえて来そうな程自分でも驚く程簡単に腕を切り落す事が出来た

変な行動を起こされたら困る為、念の為足も削いで置く

そしてまた別の戦闘員の手足を切り落とし、また別の…と繰り返していき、この部屋にいる戦闘員全員の手足を切断した

少し息を吐き落ち着こうとするが何やら壁の奥から気配を感じる

壁をぶち壊し確認してみると数十人程の戦闘員達がまだ隠れ潜んでいた

先程と同じ様、手足を切断し、ここら辺一体の敵全員を切りつけた後

ついでにカヨコが首輪の電源を切られて死ぬ事を避ける為、辺りのネットワークにアクセス、ハッキングし支配下に置く

これならカヨコも安心出来るだろう

「カヨコっ!大丈夫っ!?」

一連の動作を終えた後、私はすぐカヨコの元へと向かう

体に着けられていた拘束具を首輪以外全て外し、肩に手を置きながら大声で話しかける

「えっ、しゃっ、社長…?」

カヨコの視点だといきなり私が目の前に現れている様に見える為、困惑しているのだろう

おどおどしながら上目遣いでそう返すカヨコ

その言動にはカヨコの意思がしっかりと感じられ

意識がハッキリしていて自我もある事がわかる

その事実に安堵するがそれと同時に違和感を覚える

声のトーンや仕草が微妙に前と違っている気がする

こういう緊張している時の指の僅かな動き、目線、全身の筋肉の硬直具合などが違っていて色々疑問に思う所はあるが取り敢えずはカヨコに話をする

「カヨコっ!良かった…遅れてごめんなさい。助けに来__」

「ぃ゛っ゛!?ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!?」

言い終わる前に部屋から絶叫が鳴り響く

私が手足を切り飛ばした屑供が痛みの余り叫んでいた

話を遮れ苛立ちながらも私はカヨコと話し続けようとする

「五月蝿いわね…ごめんなさいカヨコ、もし邪魔だったら私が__」

「看守様!?大丈夫ですかっ!!?」

カヨコはすぐさま私をつき飛ばし心臓を貫かれ血を吹き出している男の前に寄り添った

「看守様…!それに戦闘員の方々も…!しっかりして下さい!救急箱は…!」

「かっ、カヨコ…?なに…言ってるの…?」

あれだけ酷い扱いをして来た屑供相手にまるで心から心配している素振りを見て呆気に取られる

何カヨコに突き飛ばされた事実にショックを受けてしまう

確かにこのまま放置していれば全員死ぬだろうが自身を勝手に犯し、勝手に改造し、勝手にゴミ扱いした屑に対する態度としてはいくら面倒見がいいカヨコだとしても余りにも不自然だ

「社長!手を貸して!看守様達が死んじゃう!」

「別にそんな奴ら死んでも良いじゃない…」

ショックの余り本心が漏れ出す

そんな私の言葉を聞いたカヨコは物凄い剣幕で怒鳴りつけて来た

「何言ってるの社長!!?女だったら看守様の為に尽くすべきでしょ!ほら、社長も手伝って!」

「ぇ、あっ、あぁ…」

真剣に屑供の救助を行なっているカヨコを見て私は察してしまった

もうカヨコはあのヒナと同じ様に壊れてしまっているのだと

あのカヨコはもういないのだと

希望から絶望へと叩き落とされる

「アルちゃん…」

「アル様…」

気づけばムツキとハルカが目の前に立ち心配そうに覗き込んでいた

そうだ、こういう時こそリーダーである私がしっかりしないと

「ごめんなさい、心配かけて…もう大丈夫」

「なら良いんだけど…これからどうする?無理矢理治療しちゃう?」

確かにそれが一番手っ取り早いが意識がある状態で治療するのは少し不安がある

できるなら話し合いで解決したい

「…少し話をして駄目そうだったらそうしましょう」

「それじゃあ治療する時は僕に合図してね。カヨコを安全に眠らせたいから」

「わかったわ」

話し終えると私は前の時と同じ様に砂時計と懐中時計を取り出し宙に浮かせ時間の流れをコントロールする

私は先程からずっと救助活動をしているカヨコに話しかける

「カヨコ…ちょっと話をしても良いかしら?」

「なにっ!社長…!今忙しいから後にして!」

「…」

そう言うとカヨコはまた私に目もくれず男の救護を行い始めた

どうやら男達が回復し終わるまで話はしてくれなさそうだ

どうした物かと考えていた時、黒猫がカヨコに話かける

「やあカヨコ、大変そうだね。助けてあげようか」

「!猫…?喋って…」

「僕の事はいいからさ、それよりその男達を助けたいんだろう?僕だったら治せるんだけど…」

突然猫が喋って来た事にカヨコは驚きながらも、やがて決心した様に黒猫の提案を承諾する

「お願い!私はどうなってもいいから看守様達を助けてあげて!」

「わかった、じゃあちょっと待ってて」

黒猫から緑色のオーラが溢れ出し、この辺り周辺を包む

すると瞬く間に倒れている男達の傷が塞がり、手足が再生し顔色が良くなっていく

「ぅっ、うう…」

「看守様!」

私が貫いた男が呻き声を上げながら目を覚まし、私を睨みつけて来た

「良かった…!お元気なられて__きゃっ!?」

「どけっ417番!あのクソガキ供をぶちのめしてやる!」

男は心配するカヨコをつき飛ばしこちらに向かってくる

もう一度その手足切り裂いてやろうかと今度はジャスティティアを手に持ち斬りかかろうとした時、突然男の体がひしゃげた後消えて無くなった

不思議に思い辺りを見渡すと先程までいた男達が全員いなくなっている

「よし、これで邪魔物は居なくなったね」

口ぶりから察するにどうやら黒猫が何処かへ転送させたらしい

呻き声が無くなり静かになった室内に黒猫の声が響き渡る

「看守様は…看守様達は無事なの…」

「安心して、死なない様別の場所(地獄)に転移させただけだから」

「そうなの …良かった…」

安心した様にそう呟くカヨコ

なんか体がグチャグチャになっていた様な気がするが私と黒猫以外気づいて無さそうなので良しとする

「カヨコ、ちょっと僕達と話し合ってほしいんだ」

「全然いいけど…なんで猫が喋ってるの…?」

「まぁそれは一旦置いといて、ほらアルが話したがってるよ」

その言葉を聞き私の方を見てくるカヨコに私は話しをする

「カヨコ…!なんであんな奴らなんかに…」

「なんでって、女は男に尽くす為に生まれて来たんだよ、当然の事でしょ…?」

キョトンとした顔で当たり前の事の様に話すカヨコ

その様子からは自身の発言に一切の疑念も抱いていな事が伺える

「それより…看守様達が突然死にかけていたけどもしかして社長がやったの…?」

一瞬、嘘をついて穏便に話を進めてしまおうかと考えたが、カヨコを騙したくなかったので正直に答える

「そうよ、全部私がやったの」

「なんで…!なんでそんな事…!」

「あなたを助けたかったの、あんな奴らがあなたをまるで物の様に扱ってる姿を見て許せなかったのよ」

「看守様達はゴミ以下の価値しか無い私を商品として扱って下さった素晴らしいおかたなのよ!それなのに…なのに…!」

本当に頭がおかしくなっているのだろう

こんなになるまで何もしてやれなかった自分に怒りと罪悪感が湧いてくるが今は話しに集中する

「カヨコ…貴方はゴミなんかじゃないわ…貴方は立派な一人の人間よ」

「ご主人様がそう決めたの!ご主人様が決めた事は絶対なの!」

子供の様に叫ぶカヨコ

とりあえず落ち着くまで黙って置く

「…!なんでっ!なんでわかってくれないの…」

「あなたがご主人様と言っている男はいい歳して子供相手に犯罪を働いてる屑よ。私にバレない様裏でこそこそ悪事を重ねる様な小物に従う必要なんてないわ」

「確かに世間からは悪人扱いされてるけど…ご主人様は私、お客様、看守様みんなを幸せにしてるんだよ…」

「身体改造して幸福を感じさせるのなんて私でも出来るわよ。別に大した事じゃないわ」

(今も無理矢理洗脳した子達を働かせてるし…)

私がそう言うとカヨコは急に黙り込んだ

数十秒の沈黙の後、

まるで何かを決意した様にカヨコは口を開く

「…わかった…ご主人様の凄さを身体に教え込んであげる。社長、横になって」

「えっ、なんで…?なにをするつもりなの…?」

突然の事態に戸惑ってしまう

一瞬、私を殺そうとしているのではないかと考えたが殺気は一切感じない

カヨコの意図が理解できずますます困惑してしまう

「なにって、私がお客様にいつもしてる事を社長にするだけだよ?」

お客様といつもする事…?

セックスの事だろうか

昔に学校で男女で性行為をして快楽を感じると習った事がある

しかしそれはあくまで男女である事が最低条件

そしてカヨコと私は女だ

「いやいやいや!おかしいでしょう!?なんでそんな発想になるのよ!?というか私は女よ!そうゆうエッチな事は男女でやる物でしょう!!?」

「その辺は安心して。私は女性のお客様にも対応出来る様躾けられてあるから。結構好評なんだよ?1444番…昔正義実現委員会をやってた人からも認めてらってるし」

「えっ、ぇぇ…えぇ…?」

まずい

本気で何言ってるのか理解できない

白目を剥き口を開けっぱなしにしている私を見て優しく微笑みながらカヨコは近づいて来る

「初めは緊張するかも知れないけどやってみたら気持ちいいだけだから、だからほら、横になって」

限界まで追い詰められ逆に冷静になって来た

気持ちを整えて、改めてカヨコに向き直り、はっきりと拒絶の意思を示す

「嫌よ、そんなのに興味ないわ」

はっきりと断る私に

「はぁー、しょうがないな…それじゃあ…」

「カヨコ?急に何するつもり__んんっ!?」

そう言うとカヨコは私の腰と頬に手を回し、キスをして来た

カヨコの舌がぢゅるぢゅると卑猥な音を立てながら私の口内を貪り、犯していく

「んっ、んんんっ!ちょっ、やめなさいっ!」

慌ててカヨコを突き飛ばす

狼狽える私を見てカヨコは妖しげに微笑んだ

「どう、社長?気持ちよかったでしょ?」

全然気持ち良く無い

殺し合いの方が気持ちいいし興奮できる

ドヤ顔で自信満々にそう話すカヨコを見て私はもう諦めてとっとと治療する事を決心する

「…こんな事を無理矢理やらされて来たのね、カヨコ…ごめんなさい…もういいわ。黒猫、眠らせてあげて」

「うん、わかったよ」

「えっ、社長?何するつもり?なんで少しも興奮しないの?キスする時に媚薬を混ぜ込んだのに…」

「私、身体を改造したり異世界で鍛えたから毒物、というか状態異常型の物は全部無効化できるの」

私の言葉を聞き化け物を見る様な目で私を見るカヨコ

そうしてる間にも黒猫はじりじりと距離を詰めていく

「待ってっ!来ないでっ!」

異様な気配を放つ黒猫に怯えて距離を取ろうと逃げ惑うカヨコ

しかし白い膜に阻まれて逃げる事ができない

壁際まで追い詰められ黒猫が目の前に迫っていた

「おらっ!催眠!!」

黒猫が飛び上がりカヨコの前で変なポーズを取る

そうしたらカヨコは地面に膝を着いた後、そのまま倒れ込み静かに眠っていた

静寂に包まれた空間にカヨコの寝息が静かに響く

「凄いな催眠おじさんは…キヴォトス人にも効くなんて…」

「それじゃあ治療を始めていきましょう」

「よし、この子を治療してあげて」

前と同じ様に黒猫は異次元ボックスからアバンギャルド君を取り出し命令する

「ピピ、了解しました…作業が終わるまで暫くお待ちください………ピピ、治療が終わりました」

「速いわね…」

ものの数秒で治療は終わった

カヨコは正常な体に戻っており、本当に治療し終えた事が伺える

カヨコが小さく呻き声を上げた後、目を覚ました

「カヨコっ!?大丈夫…?」

慌ててカヨコに駆け寄る私

精神がしっかりしている状態で治療したのでもしかしたら廃人になっているのではないかと一抹の不安を覚えながらも、祈りながらカヨコを見守る

「ん…社長…なにして…んぇっ!か、からだがっ!」

良かった、ちゃんと話せている

そう安心したのも束の間

何やら様子がおかしい事に気づく

「あぁぁそんなっ!なんでっ!?」

「かっ、カヨコ…?」

自身の体が治った事に対して安心ではなくショックを受けている様に見える

「社長っ!私になにしたのっ!こんな…こんな貧相な体なんか…」

絶望した表情でそう呟くカヨコ

どうやらまだ元に戻っていないらしい

「うーん、駄目そうだね。しょうがないもう一回眠らせるか。眠って」

ショックを受けて固まっていた私の横で黒猫がまたカヨコに催眠を掛け眠らせる

「そんな…どうして…」

私はまたも絶望して弱ってしまう

あれで治らなかったらもう打つ手がない

「ちょっと待ってて今原因を探るから」

そう言うと黒猫はカヨコの額に猫の手をかざし目をつぶって集中し始めた

口調は軽いがいつになく真剣な様子から黒猫がどれだけカヨコを大切に思っているのかを察する事ができる

そして3分程経った頃黒猫が尻尾をピンと立てて検査終了の合図を送って来た

「なるほどなるほど、原因がわかったよ」

「本当!?良かった…」

「どうやら今のカヨコは二重人格みたいな状態になってるみたい。さっき治療した時はおかしい方の人格を治療したから意味が無かったんだね」

「それじゃあまともな方の人格を治療すれば…いや、それだと人格が消えたりしないの…?」

「問題ないよ、今のカヨコは、おかしい方の人格

と前のまともな方の人格の比率が99:1ぐらいだからこれを治療して1:99ぐらいの比率にした後、二つの人格を統合すれば大丈夫」

「えっとつまり…人格を合わせるだけだからカヨコの精神が消えたりする訳じゃ無いって事よね?」

「そうゆう事、だからもう一回治療するね。ムツキの時と同じ様にカヨコの事を呼びかけてあげて」

アバンギャルド君と黒猫でソウルを入れてカヨコを治療し、元のカヨコが戻ってくるよう私達は必死に呼びかける

しかしもう30分程話し掛けているのにも関わらず一向に目を覚さない

「あれぇ…?なんで起きないんだ……?」

「すすすすいません私がしっかり呼びかけれ無かったから…」

「どうするアルちゃん?」

「………」

困惑する黒猫、泣きそうな顔で謝るハルカ、真剣な表情で問うムツキ、無表情で黙り込む私

地獄の様な雰囲気の中、黒猫が口を開く

「とりあえずミレミアムからコピーして来た改良版ダイブ装置でカヨコの中に入ってみよう」

「ダイブ装置…?あっ!昔ミレミアムに襲撃した時に見たあれの事!?」

「そうそう、これを使ってカヨコの心の中に入って意識を引き摺り出せばいい」

「わかったわ!そうと決まれば早速行きましょう!あなた達も準備はいい?」

「うん、いつでも大丈夫だよ!」

「私も大丈夫です!」

ムツキとハルカが勢いよく返事をする

それだけカヨコの事を大切に思っているのだろう

私も今度こそカヨコを助け出して見せると意気込みながら私もダイブ装置の前へと進む

「よし、それじゃあ行こう」

黒猫がそう言うとダイブ装置が起動し、私達の体が白い光に包まれた

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