救出編
「うめ、猫缶うめ…」
「………」
黒猫が人の言葉を喋りながら目の前で美味そうに缶詰を頬張っている
これは本当に現実なのか、実は夢を見ているのではないかと思い頬をつねってみるが、鋭い痛みがこれが現実だと教えてくれる
あの後流れに流されてこの黒猫を家に入れてしまい、部屋に入れたは良いものの全く状況が飲み込めていない
「ええと、その…話しても良いかしら?」
「全然大丈夫だよ、もう食べ終わったし、あと僕の事は黒猫って呼んでね」
「そう?じゃあ黒猫、まず…そうね、あなた以外の猫も喋ったり出来るの?」
とりあえず単純に気になった事を聞いていこうと私は話を進める
「いや、僕が知る限りだと他に話す子はいなかったね」
「そうなの…良かったわ…」
全ての猫がみんな喋れるのだったらなんか嫌な気分になる所だったが、そうではないと知り安心する
「次の質問なのだけれど、どうやってここまで来れたの?ここの周りにの侵入者を自動で撃退する様にプログラムしてあったのだけど」
これも気になっていた事だ、風気委員長でさえ突破できなかったのに何故侵入できたのか?
「そこはもう気合で…」
「えぇ…」
気合でどうにかなる物じゃないと思うのだがもう過ぎた事だし実際になんとかなっているので話を進める事にする
「それじゃあ最後の質問なんだけどなんでここに来たの?餌を貰う為?」
「いや違うね、一緒にカヨコ達を助けにきて欲しいんだ。シャーレの先生がパパッと解決してくれると思っていたのだけど一向に状況が動かないから、僕が動く事にしたんだ」
「……もう彼女達は死んでるわよ、死体だってちゃんと確認したんだから」
そう、ミレミアムに本物かどうか確認してもらい、その後ちゃんと火葬したのだ。生きてる訳がない。まるで生きて彼女達が生きているのを前提に話を進めようとする態度に少しだけ不快感を抱く
「いや生きてるよ、それ偽物だから」
「……私が確認した後、ミレミアムにも確認して貰ったのよ、偽物な訳が無いじゃない」
「まぁ疑うのも無理もないよね、ほら、これエビデンス」
黒猫がそう呟くと目の前に四角い画面が表示された
「なんなの…これ?」
「ビデオを再生できるアプリみたいな物だよ、とりあえず見てみて、ほら始まるよ」
気がつくと画面にはカヨコが任務を終えて私と連絡を取っている時の映像が映し出されていた
「これって…!カヨコがいなくなった時の……!」
「そうだよ、カヨコが捕まる時の映像、よくわかったね」
「当たり前じゃない!カヨコがいなくなってから何回もこの日を思い出してきたんだから!というか捕まったってどういうことなの!?」
「ちょっと落ち着いて、これから映像で流れるからさ」
その直後カヨコが丁度話終えた頃ガスが噴射され、どこかに運ばれていくのが映し出されていた
場面は移り変わり、今度はカヨコの死体を弄っている女が映っていた
「なんなのこいつは!カヨコに何をしたの!?」
「さっきも言ったけどとりあえず落ち着いて!音声聞こえなくなっちゃうから!」
黒猫に諭されて、私は黙って映像を見る事にした
そうすると画面の中の女が楽しそうに喋っているのが聞こてきた
「よし!417番の偽造死体準備完了!これだったらミレミアムの屑供も騙せるでしょう、さてと早速報告を…」
「偽造死体?準備?何を言ってるの…?」
その後、女が誰かと話しているのが流れてきたりカヨコが男に陵辱されたりオークションで見せ物として出されている映像が流れていたが、あまり内容に頭がショートしてしまい、いつの間にか映像が止まっていたのにも気が付かなかった
「どう?これで僕の事を信頼してくれた?駄目だったらカヨコ以外のも見せるけど…って、あれ泣いてる!?」
「ぅぅ…ぐずっ、ごめんなさいカヨコ…今まで何にも気が付かなくて…ごめんなさい…」
余りの悲惨さに思わず泣いてしまっていた
それと同時あんなに酷い目にあっているのに何もしてあげられなかった自分に怒りが込み上げてくる
「ごめん、いきなり全部流すのは刺激が強すぎたね…大丈夫?」
「っ!私は全然大丈夫よ!それよりカヨコは!?今も生きてるの!?」
「生きてはいるよ、他の便利屋の子達もね。だからまずは安心していい」
「良かった…それじゃあ早速助けに行きましょう!」
カヨコ達が生きている事を知った焦りのせいか急いで拠点に突撃する準備をしていた
「ちょっと待ってよ!さっき映像で見せた通り君以外の便利屋のメンバー全員が死ぬよりも酷い目にあってるんだよ。だからもう心が壊れてるんだ。仮に助けられてもそのままじゃ一生廃人のままだよ。というか映像の終盤で今どうなってるのか見せたじゃないか」
「そ、そんな…」
せっかく希望が見えて来たのにどうしようもない現実を叩きつけられて私はまた絶望してしまう
「なんとか…なんとかならないの!?お願い!」
興奮の余り黒猫の首を掴んでブンブンと振って問い詰める
「おおお折れる折れる!大丈夫!方法はちゃんと用意してあるから!だから一旦落ち着いて!頼むから話を聞いてくれよ!」
「ぅぅぅぅぅ!本当になんとかなるのよね!?信じるわよ!?」
半狂乱になりながら私はそう聞き返す、希望と絶望が同時に叩きつけられ、完全におかしくなっていた
「大丈夫!大丈夫だから!ほらソファーに座って、続きを話させてくれ」
「!わかったわ…」
黒猫の言葉に従い、手を離した後ソファーに腰を掛けた
机の上に置いてある水を飲んで心を落ち着け、話を聞く体制になる
「えっと、とりあえず今のまま敵陣に突っ込んでも意味が無いのはわかった?」
「それは理解したわ、だからどうすれば良いのか教えて頂戴!」
「よし、じゃあこれから一気に説明するから、わからない所があったらじゃんじゃん質問してね」
「わかったわ」
「じゃあ続きを話すね。今のカヨコ達は精神が表に出ていない。つまり眠っている状態なんだ。だから外部から叩き起こす必要がある」
「なるほど、でも外部からってどういう事?私が目の前で話しかけたりすれば起こせるの?」
「いや、それは難しいかな。精神がかなり沈んでいるからね。だからこれを使う」
黒猫が足を振り上げたら綺麗な光の玉が目の前に浮かんでいた。まるで太陽のように輝くそれは、見ているだけで明るい気分にさせてくれる
「それは…?」
「精神を物理的、概念的に回復させる事が出来る代物だよ。僕がミレミアムの超天才清楚系病弱美少女ハッカーに頼みこんで作って貰ったんだ。ちなみに明けの明星って呼ぶらしいよ。まあちょっと変だからソウルって呼ぶね」
「概念…?なんか凄い事はわかったけど、これはどうやって使うの?これ一個だけで三人供助けられるの?」
つい不安になり一気に質問してしまう
「使い方は簡単、胸にこれを押し込めば良い、一個につき一人治療できるね
それと個数の心配はしなくていい。僕の能力で500個程コピーを作っておいたからね。創造は出来ないけどコピーする事なら僕でもできるからね。ほら」
黒猫が腕を振り上げるとさっきの光の玉が大量に出てきた
「すごいわねコピーって…でもこれだあれば十分ね」
「そういう事、でもこれだけじゃ完全に回復は出来ないと思う。それだけ彼女達の心は本当に酷い状態だからね、だからアルにはこれを使った後、彼女達を激励して欲しいんだ。」
「激烈って…具体的に何をすれば良いの?」
「彼女達が好きな物、もしくは大切な思い出の物持っていって、ひたすら話続けて欲しい。そうすればきっと元に戻る筈。だから銃とか爆弾とか戦闘用の物だけじゃ無く、ここにあるカヨコがよく使っていたイヤホンとか、とにかく彼女達との絆を実感できる思い出がある物も今から集めて欲しい。いいかな?」
「わかったわ…そういう事なら任せて頂戴!」
手早く部屋にある物をまとめ、黒猫の前に立つ
「こんなもんでいいかしら?」
「いいね、上出来だよ。それじゃあ戦闘に使う物以外はこの袋に入れてもらって良いかな?」
黒猫が何も無い所からポケットの様な袋を取り出し、口で引きずりながらジェスチャーを送る
「いいけど…なんなの、それ?」
「ミレミアムに置いてあった異次元ボックスを僕が複製した物だね。ほぼ無限に物を詰め込む事ができるしすぐ入れた物はすぐ取り出す事ができるから便利だよ」
「み、ミレミアムって凄い所なのね…」
次々と袋の中に入っていく思い出の品、そしてしばらくすると全て入れ終わる
「よし、出発するつもりだけど準備は良い?」
「バッチリよ。いつでも殴り込みに行けるわ」
「あと、カヨコ達が捕まってる場所は他にも女の子達が捕まってるけど一旦無視してもらっていい?とりあえず便利屋のみんなを最優先で助けたいんだ」
「大丈夫よ、もう彼女達以外の事なんてどうでもいいから…」
「よし、じゃあちょっと待って」
黒猫は突然円を描くように床をぐるぐると周りだした、そしてしばらくすると魔法陣の様な紋章が浮かび上がった
「こっちも準備完了。いま光ってるこの紋章の上に乗ればカヨコ達が囚われている場所にテレポートできる。僕が先に行くから後に続いて」
そう言うと黒猫はピョンと紋章の上に飛び乗り、消えてしまった
「あっ、ちょっと!待ちなさいよ!」
それに続き急いで私も飛び乗る。
そしてその次の瞬間には見知らぬ牢屋の様な場所に来ていた
「なに…ここ…牢屋…?」
「おお良かった!ちゃんと来れたみたいだね」
「あ、黒猫!」
薄暗い雰囲気に少しだけ不安になっていたが黒猫と再開できた事で調子を取り戻しす事ができた
「ごめんね、もうちょっと説明してから来るべきだったかな」
「全然大丈夫よ、ところでこの場所は一体…?」
「地下監獄だね、看守って呼ばれてる人に一部の女の子は接待が終わった後ここに連れて来られるんだ。かなり広いから迷わないように僕の側から離れないでね」
「それはわかったけど他の人とか来ないの?バレたらまずいんじゃ…」
「それは安心して良いよ、さっきの紋章の上に乗れば自動的に認識を阻害出来る様になってるから。たとえ目の前でタップダンスを踊ったって気付かれないよ。おまけにトラップなんかも無視できる優れ物さ」
「そうなの…?私は黒猫が見えてるけど…」
「同じ認識系の魔法がかかっていると認知できるようになるんだよ、ここらへんは話すとややこしくなるから感覚で理解して欲しい」
「魔法って…まあ黒猫がそう言うなら信じるわ」
「良かった、じゃあ先に進もっか。今この場所から1番近いのはハルカだからまずそこから行こう」
「了解したわ」
気持ちを入れ直し再び歩きだす
途中に看守の男に出会ったので身構えたが、こちらに気づかずすぐ横を通り過ぎた為、黒猫の言っている通り本当に他の人から認知されない様な魔法がかかっているらしい
そしてまた歩くと異様な光景が目に映った
カプセルの中に変な首にアクセサリーを付けて裸の人が入って中で恍惚とした喘いでいる、口はチューブで繋がれており、何を話しているかはわからなかった
「気持ち悪いわね…」
私は余りの生々しさに、思わず顔をしかめてしまう
「大丈夫?この先あんなのばっか見る事になるけど、辛かったらいつでも言ってね。少し休むぐらいの余裕はあるから」
「大丈夫よ、こんなもの、私がこれまで味わって来た苦痛に比べたらどうって事はないわ。それより一体あれは何なの?」
「順を追って説明していくね、歩きながら話すから着いてきてね。
まず、ここは女の子と男の子に体を売って金を稼ぐ所なんだ。
さっきの映像で流して通り、女の子を捕まえて拉致、その後男と交尾させる必要がある
でも、無理矢理連れて来たから命令に素直な奴なんて殆ど居ない。
そこであのカプセルを使って媚薬漬けにして快楽堕ちさせて抵抗する意志を無くすって訳。
用はあのカプセルは新人を入れて従順な駒にする為の装置なんだよ」
「えげつないわね、もう人の事言えないけど…でも、調教するまでの間に脱走とかされないの?これだけの人数がいるんだったら一人ぐらい逃げ延びてそうだけど」
悪者に捕まった主人公が周りの人を引き連れて脱獄する。なんて話をよく映画とかドラマで見ていた影響か自然と疑問が湧いてくる
「脱走した子は一人もいなかったね、ここの子達は捕まった後直ぐに体を改造されて首輪をつけられるんだ。ほら、いま捕まえられてる子も首輪してるでしょ」
「確かにしてるわね…でも首輪をはめられたからってなんだと言うの?普通に外して逃ればいいと思うげど…何か特殊な力でも働いてるのかしら?」
「その通り、原理はよくわからないけどあの首輪をつけられると精神が全て首輪に移動するんだ。
だから首輪が壊れたら死ぬし、外部から電源を切られても死ぬ。これつけられた時点で人生詰むんだよね。おまけに寿命も縮むし」
「成る程…いやちょっと待ちなさいよ!それじゃあここに居るカヨコ達は仮に助けられても死んじゃうじゃない!」
「安心して、ちゃんと対策はしてあるから。ミレミアムのビッグシスターから治療用ロボットを借りてきたんだ。それを使えばきっと直せる。」
「本当?本当に治るのよね?信じるわよ?」
「大丈夫だって、ほらそろそろ着くよ」
薄暗い廊下を歩いていると一際大きな牢屋が見えて来た
「ハルカ!」
他と同じ様に中には女達がゴミのように詰め込まれていて誰が誰だかわかりずらい上に胸が異様にでかくなっていて姿もかなり変わっていたがすぐ見つけられた
「ハルカっ、大丈夫!?」
慌てて近くに駆け寄り大声で呼びかけ肩を揺さぶるが不思議なほど全く反応しない
認識阻害の魔法がかかっているとはいえこれだけ揺さぶっているのにピクリともしないのは流石におかしい
「ふむふむどうやら首輪のせいで強制的に眠らせれてるようだね。まぁその方が好都合だ。アル、治療をするから一旦ハルカから離れてくれないかな」
「わかったわ…うぅ…ハルカ…」
私がハルカから離れたら黒猫は袋から変な顔のロボットを取り出した
子供の工作のような頭部、簡素な見た目からは不釣り合いな程禍々しいヘイロー、体にはミレニアムの校章がでかでかと描かれていてはっきり言ってかなりダサい見た目をしている
あんまりな見た目に呆気に取られたているとロボットが動きだした
「ピピピ、ミニチュアアバンギャルド。起動しました。ご用件をお伝えください。」
「この紫色の髪をした女の子を治療してあげて。首輪から肉体の方に精神を移動した後、正常な体に戻して欲しい」
「了解しました。治療を開始します。治療が終わるまでしばらくお待ちください」
「ありがとう、これであとは待つだけだね。」
「そうなの…?これでハルカが元通りになってくれるの…?」
「うん、寿命も体も元通りになる筈。治療が終わった後さっき見せたソウルを使ってアルが呼びかければハルカは戻ってくると思う。だから意識が戻り易い様にハルカの好きな物を取り出してしておくから少しまっ_」
「おい!そこに誰かいるのか?」
黒猫がいい終わる前に看守がこちら側に近づきながら呼びかけてきた
これまで気づかれなかったのでいきなりの事に驚いてしまう
「ちょっと待って気づかれてるじゃない!」
「あっ、そうだ異次元ボックスに入れてた奴には魔法かからないんだった」
「どんどん近づいて来てるわよ!どうするの?」
「よし、出番だよアル。僕がアバンギャルドとハルカに魔法を掛け直すから、治療が終わるまでここに来る奴ら全員撃ち落としてもらっていいかな?」
「任せなさい!キヴォトス一のアウトローの腕前を見せてやるわ!」
銃を手に取りまず近づいてくる看守を撃ち抜く
神秘と色彩の力を込めた私の弾丸は看守を一撃で吹っ飛ばし、気絶させた
異変に気がつき別の看守も向かってくるが仲間が倒れているのを見て慌てている所を的確に仕留めていく
直接狙える場合はそのまま撃ち、壁で遮られて直接撃つのが難しい場合跳弾を駆使して撃ち落としていく
そして同じ作業を繰り返す事5分、『ガゴンッ』という音とともにアバンギャルドが治療の終了合図を出した
「ピピ、治療が完了しました。」
「よし、よくやってくれたね。僕も魔法をかけ直したからもう撃たなくていいよ」
「もう終わったの?それじゃあハルカは…」
ハルカに目をうつすと異様に出かかった胸は元の貧乳に戻り服も来ていていつの間にか首輪も外されていた
「体は完治して、寿命も元に戻ったから大丈夫。
次は心の治療をする必要があるね。これからソウルをハルカに入れるからハルカが見て喜びそうな物を取ってきて欲しい。」
「わかったわ、ちょっと待ってて頂戴」
異次元ボックスの中からハルカが大切に育てていた雑草を取り出した
ハルカがいなくなった後、私が代わりに育てていたのだ
今も育てられている事知ればハルカもきっと喜んでくれるはず
「準備出来たわ、さっそく始めましょう」
「わかった、じゃあ入れていくね」
黒猫の上でふよふよと浮いていたソウルが吸い込まれるかの様にハルカの胸に入っていく
そうすると寝ているハルカの眉がピクリと動いた
「よし、意識が戻りかけてる。あとはアルが呼びかければ__」
「あ、アル…様?」
「ハルカ!私よ!助けに来たわ!」
「ぁぁぁアル様!良かった…ぐすっ、本当に良かったです!わざわざ私なんかの為に…ありがとうございます!」
「礼を言うのはこっちの方よ!こんな私について来てくれてありがとう、それとごめんなさい。リーダーなのに守ってあげられなくて…」
「あああ顔を上げて下さいアル様!私が悪いんです!私が復讐の為に勝手に離れて捕まったんですから…」
「え?そうだったの…ごめんなさい。てっきり私が頼りなかったら見捨てたんじゃないかと思ってて…」
「そ、そんな事無いです…!アル様以上の存在なんてこの世にいません!ただアル様に私の勝手な復讐に付き合わせるのが嫌だっただけです!」
「そうなの…良かったわ」
久しぶりに感じるハルカと触れ合って話あっている感覚にまた仲間と会えた実感が湧いてくる
ここ数ヶ月全く笑っていなかったのが嘘のように笑顔が溢れてきて胸が暖かくなる
「凄いな…まさかあれだけで元に戻るなんて…」
「え、猫が喋って…」
「ああハルカ、この子は黒猫って言ってね。私がここまで来る手助けをしてくれたの。黒猫がいなかったら私はここまで来れなかったと思うわ」
「あ、ありがとうございます。助けてくれて…」
「全然大丈夫だよ、猫として当然の事をしたまでさ。その様子だと全然平気そうだね。ハルカがまた笑顔になってくれて良かった。それと喜んでる所悪いんだけどそろそろ次の場所に行ってもいいかな?騒ぎを嗅ぎつけて変なのが寄ってくる前にここを離れたいんだ」
「私は問題ないけど…ハルカは大丈夫?」
「全然大丈夫です。いきましょう!」
「よし、じゃあ次はムツキが囚われてる場所に向かうね。それじゃあ僕の後に続いて」
「わかったわ」
「了解しました!」
黒猫の後をついて、牢屋を出る
ハルカが隣にいてくれるお陰か、まだ全員救えていないのにも関わらず気分が高鳴ってしまう
これでは駄目だと気持ちを入れ直した時、後方に凄まじい殺気を感じた
「!危ない!」
急いで私はハルカと黒猫を抱えてその場から飛びのく
その直後、それまで私達がいた場所に大量の弾丸が打ち込まれていた
この跡の形は…
「ハルカ!黒猫!大丈夫!?怪我は無い!!?」
「私は全然大丈夫です。すすすすいません、先に気付けなくって…」
「僕も無事だよ、ありがとう。助けてくれて。しかし僕の認識阻害魔法が効かない奴がこの世界にいるとは…ショックだな…」
とりあえず二人供無事そうでほっとしながら私達を撃って奴がいる方向に目をうつす
煙がかかっていてよく見えないが影とシルエットで誰なのかはすぐわかった
あの角、あの禍々しくてデカいヘイロー、鋭い翼、小柄な体格、そしてなによりこの威圧感…
「風気委員長…!」
数ヶ月前に失踪していた、ゲヘナ最強の生徒がそこにいた