接敵! コヨーテ・スターク!
1
「さて そろそろ向かおうか...彼らの元へ」
藍染がそう言うと三人の破面が藍染に目を向けた
「既に準備は出来ています」
「いや...その前に御客人のようだ 要」
どうやら いの一番に私に気づいたのはやはり藍染だ
「驚いたね ここまで一切感知させずに来るとは… 残念だがまだ君の分の紅茶を淹れていない 私自ら淹れてあげようか」
「結構ですわ」
私は遠方にあったティーポットを硫酸入りの水鉄砲で撃って割って答えてやった
「硫酸入りの水ですのでこぼれた紅茶を舐めたりしたらダメですわよ?」
手からは血が滲んでいる ここ数時間休み休みとはいえずっと壁を登って来た
途中からは白い壁に赤い血がなめくじのように通った後になっていたのを覚えている
すると側近である東仙要が斬魄刀に手をかけながら前に出てきた
「彼は危険です ここは全力で...」
「待ちたまえ 要 彼の能力は霊圧の高く保つことで弾くことが出来るが損耗しないわけではない ならば適任はいるだろう」
藍染が東仙を宥めた後 破面の方を向いた
「スターク 君のその霊圧なら仮に能力に掛かっても即座に解除されるだろう 君が適任だ」
「......」
スタークというのはロン毛の男の事だろうか
「ほう...その蟻の世話をしろと使命が入ったぞ」
隣の骸骨が皮膚の無い顔で笑ってスタークに声をかけた
「...とりあえずそいつをどうにかすれば良いんだな?」
「油断はするなスターク 彼は能力が無くとも十二分に実力がある...全力で当たれ」
東仙は渋々といった体で下がりスタークをさっさと行くように促した
大事な物なら自身の傍に置くと考えていたがどうやら違った
だがこのままみすみす死ぬわけにも手ぶらで帰るわけにも行かない 行かせたくない
「貴方なんて目じゃありませんわよ 井上さんを救助しているだろう一護たちの元へ帰らせてもらいますわ」
藍染たちの元から駆け出して直線的に廊下を走る...速度には自信があったがそれでも容易く追いつくとは
「...虚閃」
呼吸のついでと言わんばかりに構えすらなく虚閃が飛んでくる
藍染が言っていたが霊圧が高いにしても解除までのラグにより隙は出来るはず
「受け取ってくださいまし!」
パチンコで手製の飴玉を一つポケットに向けて放つ
「ああこれがさっき言われた奴か」
そう言って何でもないように手で受け取りそのまま食べた...
「ほぼノータイムで解除されている...だと...⁉どんな霊圧をしてるんですの」
「正直気を引き締めないと漏れ出るくらいには霊圧があるからな あと飴玉結構うまかったぜ」
口の中の飴玉を砕いてスタークは返礼とばかりに特大の虚閃を放つ
直線的な廊下では逃げ道は無い すぐそばにあった部屋へのドアを蹴り開け逃げ込む
どうやらこの部屋は物置のような物らしい私の周りから埃が舞い少しばかり咳き込む
「そういえば自己紹介がまだだったな ♯1(プリメーラ・エスパーダ)コヨーテ・スタークだ」
「プリ...?」
何の数字か分からず困惑する私にスタークはバツが悪そうに無言で左手の1を見せてきた
「1ですか...もし本当にそうなら随分と手加減していますわね」
今の所虚閃を撃つだけに留めている...どうにかして撒かないとただ無駄に死ぬだけですわ
ここには使えそうなものはない...煙幕でも火災でもおこして逃走の糸口を見つけなくては
「諦めたらどうだ?仲間と合流するならこちらに一時組して裏切るなりなんなりすればいい」
「敵が言う事ではないでしょう...それにそれをするくらいなら戦って死にますわ」
そういって私は逃走を再開する 心底残念そうにするため息が聞こえた気がした
いくらか部屋を変えて逃げてきたが...袋小路に突き当たってしまったらしい
「もう逃げ場はない 最後にもう一度...」
「命乞いはしませんわ 敵わなくとも応戦するまで」
「そうか なら せめて一思いに」
スタークは銃を構え私はドスを構えて向かううつ
スタークの虚閃を潜りぬけせめて一太刀でも傷を
「やめろ コヨーテ・スターク!そこは可燃性や爆発する危険のある...
「「ん?」」
東仙の声と思しき放送が聞こえてきました...いやもう虚閃撃って潜りぬけたところなんですけれども
『爆発するよ しかもかなり特大』
直後に第六感がアラート代わりに魂魄を焼いて伝えてくる
「爆発するのでちょっと背中借りますわね」
「どういうことだ えっ爆発するのか」
直後 爆発 世界は白く黒く反転しながら音が消える...私はどうあがいても逃げるのは無理なので頑丈そうなプリなんとかのスタークを盾にした
耳鳴りが止み視界が晴れ始めた...外へと続く風穴が大きく開いている
「危険な物があるなら早くそれを...」
スタークが愚痴を言おうとした時
【危険物が貯蔵されています 付近では火気厳禁】と書かれた標識がスタークの脳天に直撃した
「まぁ...なんだかご愁傷さまですわね ではさよなら プリンメントスのスタークさん」
私は風穴から飛び出し下へと向かった
「何をやっているんだ スタァァァクッ⁉」
そんな声が遠くで聞こえた気がした