『接待 緋色の研究』
Part16 - 159-173シャーロック「…………ふむ、招待状か」
ナグルファル「おつかれーシャロ。あれ?何持ってるんだ?」
シャーロック「図書館の招待状だな。どうやら彼らは私に目を付けたらしい。大方"奴"の助言に司書とやらが聞いた結果だろう」
ナグルファル「おおー……相変わらず察しが良いね。それで、行くのか?行かないのか?行くならディルかソロモンを付けた方がいいんじゃないか?」
シャーロック「不要だろう。少し様子だけ見て帰ってくるとするとも。それに、この前得た本は結局対して役に立たなかった故、奴らの本というのも万能の知識庫ではない。私の求めるものは得られんさ」
ナグルファル「あぁ……折角エンケファリンの本を得たのに代用品が出来ちゃってあんまり意味なかったからなぁ……ま、無理せずちゃんと帰ってきてくれよな」
シャーロック「少しは知見を広げられれば儲けもの、だな」
………
シャーロック「……ここが図書館か。観察するに……複数の特異点技術が用いられているようだな。私の推測が正しければ、この場はいわば小宇宙……もう一つの世界を作り出している。これ程特殊な環境を作れて、尚且つ複数の特異点技術を扱える存在は、やはり……」
アンジェラ「歓迎します、ゲストの方」
シャーロック「……………ほう……なるほど……成る程、そういう事か。実物を合点がいった。……アインとベンジャミンめ、後処理が適当過ぎやしないか?」
アンジェラ「…………貴女、あの二人のことを知ってるの?」
シャーロック「いきなり光をばら蒔きながら消し飛んでくれたL社の立ち上げに関して参考程度のアドバイスを送ったさけだ。会話という意味では、数時間も交わしていないな」
アンジェラ「それにしては随分と信頼されていたようね」
シャーロック「勘違いするな。あの二人はお前に関することは欠片も漏らしていない。ただ私が勝手に調べて、勝手にたどり着いただけのことだ。お前の存在に興味はなかったが、はてさて実物を見るとそれなりに興味が湧いてきたな。人を模して作られた機械……とはこういうものか」
アンジェラ「私は貴方の知的好奇心を満たすために存在している訳じゃないのだけれど」
シャーロック「気分を害したならば謝罪しよう。だが一つ質問したい。お前があの不安定なエネルギーの欠片を再び収集しているのは正常な形でもう一度配るためか?それとも別の何かのためか?」
アンジェラ「……一体どこまで……」
シャーロック「そういうモノを見れる奴がいるんだ。何よりL社の消滅と同時に出現し始めたねじれと、その原因となっている"光"。……アレは恐らく人の欲望を形として現出させるのを促すものなのだろう。それをお前がかき集めているとなると……白夜と黒昼……そして原則から外れているだろうお前の存在と、その表情。ああ、そうか……お前は空を飛ぶ鳥になりたいのか」
アンジェラ「………………貴女の質問に答えるつもりはないわ」
シャーロック「そうか、すまない。だが許してくれ。私も見たら"勝手に理解してしまう"性質なんだ。悪気はない、嘘ではないぞ。……まあ、お前の願いとやらが叶うよう祈っておくよ。鉄の檻の外にある自由が"人間になったお前"にとってそれ程の価値があるのかは疑問だがね」
アンジェラ「あなたの本が見つかりますように」
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ローラン「…………大丈夫か?」
アンジェラ「大丈夫に見えるなら私は貴方の両目を作り直さないといけなくなるわね」
ローラン「そこまで言うことないだろ……。しかし
、予想以上の情報通だったな。まさか対峙した瞬間諸々解き明かされるとは……アイツの頭はどうなってるんだ?」
アンジェラ「知らないわよ。それを知るにも普通に逃げられちゃったし……骨折り損という言葉通りの結果ね」
ローラン「元はC社だったんだ。空間転移による移動はお手の物だろうな。他の本の情報を見る限り、エンケファリンの代用品を開発してW社とR社とエネルギーの優先供給契約を結んだらしいし……特異点技術には困らなさそうだな」
アンジェラ「……そういえば、貴方も接待の時に何か会話をしていたようね。随分と怒り心頭な様子だったけれど、何を言われたのかしら?」
ローラン「……大した事じゃない。ちょっと古傷を徹底的に抉られただけだよ」
アンジェラ「……あの女は二度と呼ばないようにするわ」