『接待 白い死刀&茜色の鞄』
Part17 - 126-154アンジェラ「…………すぅ……はぁ」
ローラン「よ、アンジェラ。疲れてるみたいだな?」
アンジェラ「当然でしょ。この前の幻想体一斉脱走で図書館がしばらく休館状態になっていたんだから」
ローラン「色んなところがメチャメチャになってたからなぁ……」
アンジェラ「それでも得たものは大きいわ。群青の双剣の本…………のコピー。レプリカみたいなものだけど、並みの一級フィクサーよりずっと力がある。血や身体の一部から再現したものだけど、意外となんとかなるものね」
ローラン「……じゃあわざわざゲストを本にする必要なんてないんじゃないのか?」
アンジェラ「光を集めるのと、本で事象や人物を再現するのは別物よ。この本も、過去の赤い霧を再現したのと同じようなものだから、光を集めるという目的に対しては全くの無意味ね」
ローラン「そうか……」
アンジェラ「ともかく、そろそろ図書館を開館して───(不意に顔をしかめるアンジェラ)」
ローラン「どうした?また脱走か?」
アンジェラ「……侵入者よ」
…………
ゲンパク「…………」
カンヴァス「おお!ここが図書館……話には聞いていましたけどすっごく広いですね~」
ゲンパク「…………」
カンヴァス「というかゲンパクさん、私達招待状使わずW血清で無断侵入したんですけど、大丈夫なんですかこれ?不法侵入のペナルティとか受けません」
ゲンパク「……俺の目的は本じゃない。ただの威力偵察だ」
カンヴァス「今日ってゲンパクさん非番じゃありませんでしたっけ?休みの日まで仕事なんて無駄に真面目ですねぇ……」
ゲンパク「黙れ」
アンジェラ「…………開館の用意はまだ終わっていませんよ、招かれざるゲストの方々」
カンヴァス「あ、こんにちは館長さん!お邪魔しています!」
ゲンパク「………………はぁ」
アンジェラ「人の顔を見てまずため息を付くなんて、失礼なゲストですね」
ゲンパク「お前に対してじゃない機械人形。ガリオンのいい加減さに呆れ通り越して殺意を抱いているんだ」
アンジェラ「……私を始末する気」
ゲンパク「それを行う判断をするのは俺ではない。そして、お前は"処分の対象"ではない。……お前はまだ"不純物"ではない」
アンジェラ「何ですって……?」
ゲンパク「アンジェラ。人になりたがる機械人形。お前がその志を抱いている限り、お前は都市の一部であり、循環の一つだ。都市は今のお前を拒まない。お前もまた都市で輝く星の一つに過ぎないのだから」
カンヴァス「ゲンパクさん、さっきから台詞が迂遠過ぎて何言ってるのか全然わからないんですけど」
ゲンパク「お前に言ってない。……ともかく俺の目的はお前じゃない、アンジェラ。……ガリオンの墓を掘り起こしにきた。これ以上調律者の恥を晒し続けるのは業腹だからな」
アンジェラ「それは頭としての意識かしら」
ゲンパク「ただの私心だ。指示は受けていない。だがやるな、とも言われていない。ならば休暇中のフィクサーとして、俺はやりたいことをやるだけだ」
カンヴァス「あ、私はなんか面白そうなので随伴してきただけなので、そこんとこよろしくお願いします」
ゲンパク「……いい加減次元の狭間に叩き込もうか?借金チビ……」
カンヴァス「ちょっ、借金はもう無くなったんですけど!?」
アンジェラ「……あなたの本が見つかりますように」
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アンジェラ「お疲れ様、ローラン」
ローラン「ああ……まさか特色フィクサーと爪を同時に接待する羽目になるなんてな」
アンジェラ「それもどっちE.G.O.を発現した、ね。……白い死刀に関しては本当に図書館が破壊されるかと思ったわ」
ローラン「W血清とR血清とG血清を同時に使用した攻撃を食らった司書が血の煙になってたぞ……」
アンジェラ「けど、アレほどのゲストも今後はそう現れないでしょう。それこそ調律者か赤い霧に匹敵するフィクサーでも訪れなければ」
ローラン「そういう台詞を口にすると本当になるのがお約束だぞアンジェラ……」
アンジェラ「知らないわよ。……ともかく、あの二人から収集した情報も解析して再現してみるわ。性能は……3割再現出来れば御の字かしら」
ローラン「それでも十分だと思うよ俺は」
アンジェラ「所で、あの女の子と何やら長話していたようだけれど、何を話していたの?」
ローラン「ただの積もりに積もった昔話だよ。それに、話の長さで言ったらビナーの方がずっと駄弁ってそうだけど?」
アンジェラ「ええ、案の定よく分からない表現で長々と話し合っていたわ」
ローラン「頭に関わる連中はどいつもこいつも遠回りな言い回しが好きなのかね……」
アンジェラ「あまり見倣いたくはないわね」