掌編 情交の朝のお話

掌編 情交の朝のお話

mob

シャワーを浴びながら、下腹部に手を当て、少しだけ力を籠める。

こぽり、と溢れ出す温かい白濁の感触に、少しだけ、昨晩の交わりを思い出し、顔を赤くする。

求められ、愛され、喰われ、注がれる。 愛を確かめ合う行為、愛を貪る行為。

どろどろに蕩かされながらの交合で、何度射されたかも定かではない。

口で、胸で、子宮で、何度も何度も彼のものを受け止め、注がれ、飲み込み・・・


「いと、恥ずかし・・・」


思い出すのは自分の痴態。

場末の娼婦か、色に狂った淫売かと言いたくなるような甘ったるい声。

彼の汗の匂いを嗅ぐだけで期待に弾む胸、精臭を嗅いで発情するまでに至ったカラダ。

男の劣情を、繁殖欲を煽るために淫らにくねる腰。

幾度となく行われた口淫、ツボを理解しつくした舌技、彼の精をまるで甘露であるかのように味わい、尿道に残ったものまで啜る浅ましさ。

彼の背中に腕を回し、無意識に爪を立て。 離れることを厭う駄々っ子のように、自分の両足を彼の腰に巻き付け。

舌を絡ませ、何度も何度もベッドに叩きつけられ、速くなる腰の動きに期待を膨らませ、熱い塊を子宮の奥に叩きつけられて・・・


「・・・はっ。 だ、めです・・・だめ」


情交を思い出し、無意識に秘所に伸びる手を、なんとか制止する。

ナカに残った彼の精を指ですくい、舌で味わえば、もう止まらなくなることは容易に想像がついた。

最近、頓にその傾向が強くなっている。

俗に適齢期と言われる年齢を過ぎた自分ではあるが、女盛りの肉体だ。

若い男にああも求められれば、性欲が増すのも仕方ないことなのだろう、とぼんやりと考える。


(性欲、なのでしょうか・・・)


ただ彼と体を重ねたいだけではない、と思う。

もっと先、一人の人間としての、当たり前の願い。

彼と触れ合いたい、彼と離れたくない、彼に愛されたい、彼を愛したい、彼の・・・


(りっかくんの、あかちゃんが、ほしい・・・)


じゅん、と、蜜が漏れるのを感じた。

彼のものを直接感じたいからと、彼と相談して決めた経口避妊薬。

定期的に飲んでいるソレだが、彼と確認しているわけではない。

飲むのをやめてしまえば、誤魔化してしまえば、止まっていた月のものは戻り、準備は整う。

後は何食わぬ顔で彼と交われば、無事に彼との子を設けることが出来る・・・

いや、そんな方法では、彼からの信頼を、愛情を損ねてしまう。


(そんなことは、今の私にはとてもできない・・・)


彼に愛して欲しい、彼の子供も欲しい、ならば、言うしかないのだ・・・

彼に、面と向かって、頭を下げて・・・


(りっかくんのあかちゃん、孕ませてください♡)


どぷり、と蜜壺から淫蜜がこぼれるのを感じる。

彼の子供を身籠る想像をしただけで、淫らに開発されたカラダが悦んでいる。

空想の中で愛しい人が、何度も腰を打ち付けながら、耳元『孕め、孕め』と命じている。

妄想だけで完全に出来上がってしまったカラダを、水音に声を隠して慰める。


(・・・今夜、りっかくんにおねだり、してみましょうか♡)

「りっかくん、わたしのこと、はらませてください♡」


ベッドシーツを洗濯するために脱衣場に来ていた立香くんにそれを聞かれていたことを知り、恥ずかしさから彼の顔を見ることもできなくなるのは、もう少しだけ先のお話。


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