捕食交雑(プレデター・クロスブリード) アトラの蟲惑魔編

捕食交雑(プレデター・クロスブリード) アトラの蟲惑魔編

一般通過きのこマン


外来種。

一たび野に解き放たれれば、その場の生態系は一変してしまうという、まさに劇物。

外来種によって環境変化が起こってしまえば、以前の環境に戻ることは決してない。

それはさながら、純水に黒いインクを垂らしてしまうと、決して黒から透明には戻らないように。


その黒いインクは、宙(そら)から飛来してきた。

隕石と形容される黒い岩塊の姿で、蟲惑魔の森という水へと。


数千万光年先、捕食惑星と呼称すべき星より堕ちたそれには、種子がこびり付いていた。

そしてその種は、ヒトを模ったモノの中で芽吹くことになる。

それらに宿った、捕食本能のままに。




「ふふっ❤️まだまだ食べ足りないわね❤️」


 フレシアの蟲惑魔と呼称されていた個体。

 本体の姿は本来、花弁の中央で大口を空けているラフレシアはずだった。

 しかし交雑の結果その姿は様変わりし、茎を触腕の様に伸ばし、触腕の先端の口で捕食が可能に進化した。

 ヒトを模った疑似餌もまた、紋様をより淫らに刻み、より蠱惑的な魅力を醸し出している。


「あ゛っ❤️お゛お゛っ❤️らめぇ❤️」


 一方で、アロメルスの疑似餌は森中に端ない声を撒き散らしていた。

 本体は群がる捕食者に貪られ、残された疑似餌は新たな種を宿す鉢植えとなる。

 スレンダーな魅惑で人を惑わしていたそのお腹も、今ではぽっこりと膨らんだ苗床でしかない。

 蟲型の蟲惑魔は、余すことなくただただ捕食されるがままになった。


「ひぎぃ❤️らめぇ❤️そんな捕食されりゅと❤️一つになっちゃうっ❤️あなたとわたし❤️交わっちゃうのぉっ❤️」


 別の場所では、ティオがスピノ・ディオネアと交雑していた。

 ティオは最早ここでは珍しい蟲惑魔の純血種であったが、とうとう交雑の機会が訪れたようだ。

 一突きする度に、疑似餌はより妖艶な外観へと進化する。

 そして疑似餌からの快感で屈した本体は捕食者へと取り込まれ、その特徴を取り込む。

 こうして植物型の蟲惑魔は、新たなる種の捕食蟲惑魔へと進化するのであった。


「プティカちゃんらめぇっ❤️❤️❤️もうはらませないでぇっ❤️❤️❤️」

「ランカちゃんしゅきっ❤️❤️❤️ずっと私の苗床にするのっ❤️❤️❤️しゅきしゅきしゅき❤️❤️❤️」


 そして蟲惑魔の共生関係もまた、著しく変化した。

 かつて仲睦まじく人々を狂惑していたコンビも、今ではただの捕食者・非捕食者の関係だ。

 プティカは巨大ウツボカズラの中で、ランカの膨らんだお腹を、精液風呂に浸かりながら愛おしげに撫でている。

 愛でる一方で、触手を裂け目に激しくピストンし、更なる汚濁を注いでいるのだが。


 蟲型蟲惑魔は無惨な鉢植えに。

 植物蟲惑魔は貪欲な捕食者に。

 これが今の、捕食蟲惑魔の森の実態であった。


 では別の資料に目を向け、捕食蟲惑魔のより詳細な生態を見ていこう。




「くぅ……解けない……っ」


 真似た人語で愚痴るモノ。

 アトラは少女の姿で獲物を誘い、糸で絡めとる狡猾さを持っていたが、今や彼女は蔦に絡め取られていた。

 尻を無様に雄へ晒すという、本意でない姿勢を取らされている様は、まさに彼女こそが獲物であることを示していた。


「やぁっ……!なにをっ……!」


 拘束されたアトラは、大口開けた袋に飲み込まれる。

 内部には妖しい液体が溜まっており、そこにドポンと間抜けな音を立てて落とされた。


「あつぃ……!あついよぉ……❤️」


 服を模した体組織が、ジュウジュウと溶けボロボロになる。

 感覚器官を切り離した服モドキの溶解に痛みはない。

 しかし溶解液には媚毒成分が含まれており、それはアトラの皮膚から浸透する。

 捕食植物の名前に相応しく、疑似餌を蝕む。


「はぁっ……はぁっ……❤️」


 溶解液から引き上げられたアトラの躰はすっかりデきあがっていた。

 そんなアトラへ、ノソリとのし掛かるのはセラセニアントであった。


 アリを模したサラセニアという名の通り、その姿は捕食植物の中でもかなり小型だ。

 最も、それも捕食植物の中では、という前提付き。

 少女の姿をした疑似餌よりは当然大きい。

 腹部から伸びる産卵管染みた雄蕊は、根元まで入れればアトラの臍まで届きそうなほどだ。


「あ、あたしにさわるなぁ……」


 切迫した状況に本体を呼び出すが、来る気配はない。

 セラセニアントはもう待ちきれないと言わんばかりに腹部を前進させる。


「ひぐぅ……!ぎぃっ……!」


 怯えで歯をガチガチ鳴らしながら、アトラはその雄蕊を挿入された。

 抽送される度に、少女のくびれた美しいお腹が歪に歪む。

 疑似餌にも感覚器官は備わっている。

 であれば本来彼女を苛むのは、ただただ苦痛のみであるはずなのだが。


「ひゅぅっ……❤️がぁっ……❤️」


 悲鳴の中に、雄を誘う甘い色香が含まれていた。

 溶解液によって触覚を壊されてしまった躰は、捕食植物から与えられる全てを快感として受容する。


「やめてぇ!❤️ぬいてぇ!❤️」


 反抗の言葉を紡ぐが、躰はもう完全に屈服している。

 抵抗するような身じろぎも、その実、快楽を求めて自ら腰を振っているのだ。


「がはっ……❤️」


 アトラの矮躯を磔にするように、セラセニアントの雄蕊が最奥まで串刺しにする。

 抽送こそ止まったものの、生殖器は雄叫びを上げたそうに激しく痙攣していた。


「やめろぉっ……!だすなだすなだすなぁ!」


 拒絶の意志を示すも、雄がそれを聞き入れる理由はない。

 極上な鉢植えへの種の着床。

 それこそが捕食本能によって定められた史上の欲求なのだから。

 強烈な汚臭の白濁が、卵袋に放たれた。


「……っ!❤️❤️❤️❤️❤️んぁぁあああっ!❤️❤️❤️❤️❤️」


 蜘蛛という絶対的捕食者にとって、孕み袋同然に捕食されるのは屈辱的である。

 しかし全身を劈くのは、絶望的なまでの快楽。

 雌として屈服しているという事実。

 その証拠に、彼女の卵袋は物欲しそうに注がれる種汁を嚥下していた。


「はぁっ……❤️はぁっ……❤️」


 ずるり、と音を立てて雄蕊が引き抜かれる。

 取り残された秘裂は求めるようにピクピク震えながらも、飲み込んだ花粉を一滴も溢さない。


 そんな卑しく誘う鉢植えの求めに応えるように、新たな雄が現れた。


「グルルルルルル……」

「なにぃ……ドラゴン……?」


 竜を思わせる巨躯を持つ、ドラゴスタペリア。

 疑似餌など一捻りで潰せそうな腕に、一飲みしてしまいそうな大口。

 特に屹立する雄蕊は先ほどのセラセニアントなどとは比べ物になるはずもなく……。


「やだやだやだぁ!!!!!!もういやなのぉ!!!!!!」


 首を振り、唯の無力な少女のように駄々をこねる。

 しかし無情にも、捕食本能に従い竜は少女の矮躯を握り込む。

 壊さない程度の弱い握力だが、それでも疑似餌の叫びを黙らせる程度には力強い。


 そして雄蕊の先端にその狭洞を充てがい……。

 すり潰すように、突き刺した。


「ぎぁぁああああ!!!!!!❤️❤️❤️❤️❤️」


 絶叫。

 もはや雌としてではなく、ケダモノのように叫ぶことしかできない。

 溶解液で快感へと溶けてるはずの苦痛すら、再び感じている。

 少女の胎は、無惨にも雄蕊の形に変えられていた。


「ぐおっ!!!❤️❤️❤️ぐあっ!!!❤️❤️❤️」


 それでも竜はお構いなしに、疑似餌の躰を好き勝手に扱う。

 もはやその様は性交とは呼べず、少女を使って手淫しているようだった。


 そして何の前触れもなく、受粉が行われる。


「んぼぉおおおおおお!!!!!❤️❤️❤️」


 ただでさえ雄蕊で歪んだ胎は、汚濁を注がれる度に変形した。

 まだ一度の吐精だというのに胎は臨月以上に膨らみ……それでもまだ欲望は放たれる。


「……ぁっ。……っ❤️」


 壊れたように痙攣するアトラ。

 もはや抵抗も隷属も、その意志も発せられないほど、憔悴している。


 ドラゴスタペリアは、一度欲望を満たせたためか満足そうな息をつく。

 しかしそれも束の間。

 十数秒後には飢えたような唸りを発していた。


 そして再び欲求の発散をしようとするが、その前に腹拵えをするようだ。


 近くに落ちていた、巨大蜘蛛。

 まだ息のある。新鮮な食材。

 それを腹に納めるために……その脚部を引きちぎった。


「ぎゃあああああああ!!!!!!」


 無造作な調理に、蜘蛛だけでなく少女も苦痛に悶える。

 この巨大蜘蛛こそ、疑似餌の本体。

 本体の受けた痛みは、当然疑似餌にも戻ってくる。

 快楽の混じらない、純度100%の苦しみに襲われているのだ。


「……ぃ!ぎぃいいいいいいっ……!❤️」


 にも関わらず、疑似餌の苦悶に艶やかさが咲き始める。

 竜の咀嚼の度に、女陰からは注がれた精液混ざりの潮を噴出しているほどだ。


 本体を全て喰らわれた後、残されたのは淫らに転がる雌と、その背中から生えた本体との接続器官だけだった。

 そしてドラゴスタペリアは、デザートを喰らうように期待した顔で、少女の背から伸びた臍の緒を掴む。


「ぅぎぃぃいいいいいいい!!!!!❤️❤️❤️❤️❤️」


 少女の喉の方が壊れてしまうのではないかという叫びが響く。

 しかしその喘ぎは歓喜に満ちていた。

 何故ならこれさえ済めば、卵袋としての幸福を得られる予感があるから。


「❤️❤️❤️❤️❤️❤️❤️❤️」


 ぶちりと軽快な音がした後、声で表現できないほど甘い嬌声が鳴った。

 千切られた管はゴクリと、竜の喉に呑まれる。


 満足げに一息ついた後、ドラゴスタペリアはその雄蕊を再び充てがう。


「ちょうだい❤️❤️❤️たね❤️❤️❤️❤️せーえき❤️❤️❤️いっぱい❤️❤️❤️いっぱい❤️❤️❤️」


 卵袋としての本懐を遂げるために、アトラは雄におねだりする。

 本体側の脳を失ってしまったのか、言葉は幼稚になってしまっていた。


 しかし竜からすれば、恐怖に震えていようが従順にしていようがどちらでも良い。

 ただ、本能を満たせればいいのだから。


 こうして、一体の捕食者はただの鉢植えへと作り替えられてしまったのだった。

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