手記(抜粋)
2/10
カジノの興行はおおむね順調なようだ。おれは英雄としてやってくるチンピラどもの処理に忙しいが、軌道に乗り出したこと、旅行客からも話を聞けるようになったことは素直に嬉しい。
2/15
最近なんだか仕事中に眠くなることが多くなった。前々から兆候はあったが、最近さらに厳しくなった感じだ。
2/20
最近の体の不調についていろいろと考えてみたが、
間違いない。おれは妊娠している。
昔、「おまえはすこし特殊な体質なんだ」と言われたことを思い出した。
どう特殊なのかも教えてもらった。
相変わらず実感が湧かない。
3/18
なんだか気分が悪い…なんとか体を奮い立たせて討伐に向かうが、気のせいではなさそうだ。
4/29
気分が良くなってきた。腹も膨らんできたし、ゆったりした服でも着て、精力的な活動は控えるようにしよう。
5/12
命の拍動が感じられる。耳をすませて聴いてみると、なんだかあたたかい気持ちになる。
これが母性というものだろうか。
5/20
今度は拍動だけでなく、体の動きまでわかる。食欲もでて来たしいろんなものが食べたい。
葉巻が吸えないのが残念でならないが、それも頑張れそうだ。
5/31
横になって寝るのがつらい。また一段と腹が張ってきたのだろう。
ファーを巻きつけるくらいしないといけないのか?
6/7
なんだか胸が痛い。というか服がきつい。
まさか胸の部分まで布が足りなくなるとは思わなかった。青や黒は収縮色というし、そのあたりの服にしてみるか?
6/25
正直秘書、というかパートナーとも文書でやりとりするのはいかがなものかと思うが、こんな姿は見られたくはない。
もう一日の大半を腹を眺めるか外を見るか手紙を書くかで過ごしている気もする。
おれはどうかしてしまったのか?
7/7
また気分が悪くなってきた。
このところおれに子供が産めるのか、こんな奴の腹から生まれてきてもいいのか、そんなことを考えてしまうがそのたびに流すようにしている。
これでも9か月は一緒にいたのだから。
久しく忘れていたがおそらく情というものだろう。
8/30
出産予定日まで一か月弱となった。しかし男が、それもこのおれが妊娠…出産するというのが世間に知られるのはまずい。他の奴に知られるのは弱みになる。
そもそも、突然変異なのか隔世遺伝なのかそれとも何かしらの別の要因なのか、「両性具有体質(と、呼ぶべきだろうか)」ということだけでも他人に付け狙われる理由になる。
頼るならあの国、あの島の住人たちだろうか。あいにくあのオカマ王は檻の中だが、あそこの住人は性を「超越」していると言っても過言ではないし、話が通じる奴はいるだろう。
賞金稼ぎの街の見回りを強化するよう通達も出した。
休暇、静養も兼ねてしばらく国を開けることになるが、それらしい理由を考えておこう。
《余談》
クロコダイル口調エミュむずい…あの人技名はもちろんなんだけど普段の言い回しにも知性を感じる。
ここのクロコが孕んだ原因は好きに想像してください。
水やらなんやらをかけられて路地裏に連れ込まれたのかもしれませんし、枕営業をしていたのかもしれませんし、もしかしたらセルフ受精かもしれません。
空想は自由です。限界はありません。
メタいですが時期があいてるのは書くのがむずかしかったからです。
あと、過去の出産経験についてはどちらともとれるように書いたつもりです。
《参考》
https://st.benesse.ne.jp/ninshin/
および親類の体験談