手を繋ぎたい

手を繋ぎたい

モテパニ作者

それはある日のこと。

拓海「巨大迷路の脱出?」

ダークドリーム「うん、陽佑からチラシ貰って」

買い出しから帰ってきたダークドリームがイベントのチラシを貰ってきた。

拓海「(湊さん何かとダークドリームを気にかけてくれるよな)」

ダークドリーム「だからこのイベント行ってみようと思うんだけど、ここの道順は習ってないから…拓海連れて行って」

拓海「ああ、俺もその日空いてるし、構わないぞ」

ましろ(まし拓)「うぅ…わたしも行きたいのに…その日は予定があるの…」

拓海「へぇ、珍しいな」

ましろ(まし拓)「四葉財閥の人がわたし達をくわしく調べたいんだって。ちなみに当人の意見が欲しいとかでわたし本人も一緒に行くって」

本人、つまりは常識人の事だ。

拓海「じゃあ虹ヶ丘はみんな来れないか、そういや他のメンバーは誘うのか?」

ダークドリーム「そうね、じゃあ来れるメンバーだけ誘いましょう」

〜〜〜

当日、いつものメンバーに声をかけたものの、ほとんどのメンバーが予定があるらしく来れたのは、

ゆい「楽しみだね!」

ソラ「はい!」

のどか「ふふふ♪」

ゆい、ソラ、のどか、そして拓海とダークドリームの計5人だった。

拓海「じゃあ俺受付してくるよ」

ゆい「あたし達も着いていくよ」

受付を済ませて所定の時間を待つ。

そしていよいよイベントスタートだ。

ゆい「よーし行くよー!行こっ!拓海!」

拓海「おいおい引っ張るなよ」

迷路に入るとともにゆいは拓海の手を引っ張り走っていく、拓海も軽く注意しつつも大人しく引っ張られる。

ソラのど「「…!?」」

ダークドリーム「?」

その様子を見て固い表情になるソラとのどかに、二人の様子に疑問を持つダークドリーム。

ソラ「(ゆいさん、すごく自然に拓海さんの手を…)」

のどか「(拓海くんも全然気にしてないって感じだったし…やっぱりすごく仲が良いよね…)」

ダークドリーム「どうかしたの?二人とも」

ソラ「い、いえ!大したことでは…」

のどか「う、うん。ちょっと緊張しちゃっただけだよ」

ダークドリーム「そう…?」

二人はなんでもないと言うが、ダークドリームはもう人の情緒について習っている。

自分なりに理由を考える。

ゆい「みんなー?先に行っちゃうよー」

拓海「ゆいが急ぎ過ぎなんだよ。ちょっと待ってようぜ」

二人の視線の先にいるのはあの二人、まだ手は離していない。

ダークドリーム「ひょっとして、拓海と手を繋ぎたいの?」

ソラ「うぇ!」

のどか「ふわ!」

図星を突かれて動揺する二人。

ソラ「な、なんで…」

ダークドリーム「だって二人とも拓海の事好きでしょ?」

のどか「ふわわ!?」

さらには恋心まで看破されていた。

ソラ「バ、バレてたんですか…?」

ダークドリーム「ええ、拓海の前では自然な感じだけど、それ以外だとけっこう隙だらけだもの。まあだからこそ拓海にはバレてないんじゃない?」

のどか「ふわ〜…」

不幸中の幸いか、拓海にはバレてない、可能性もあるようだ。

ソラ「あはは、確かにダークドリームさんの言う通り手を繋ぐのに憧れますけど、いきなりゆいさんのようにはいきませんから…」

のどか「うん…」

二人の言うことは最もだ。が、ダークドリームはこのイベントを楽しみたい。

それはみんなにも同じこと、憂いを持って挑んで欲しく無いのだ。

ダークドリーム「わかった、私にいい考えがある」

ソラ「え?」

のどか「ダークドリームちゃん?」

ダークドリーム「拓海、ゆい、ちょっといい?」

ダークドリームは前の二人を呼び止める。

〜〜〜

拓海「進路は代表者が決める、か」

ダークドリーム「ええ、分かれ道の度に話し合いだ多数決だしてたら日が暮れちゃうわ」

ダークドリームの提案はこうだ。

迷路の分かれ道に差し掛かったところで誰か一人が代表に立候補し、独断で進路を決めるというもの。

やや強引な気はするが、理に適ったやり方だと思われる。

拓海「俺はいいと思うぞ、みんなは?」

ゆい「あたしもいいと思うなー」

ソラ「わたしも賛成です!」

のどか「うん、競ってるわけじゃないし、迷うのも醍醐味だしね。わたしも賛成」

特に反対も無くダークドリームの案は通る。

その一方。

ソラ「(いい考えとはこのことでしょうか?確かにいい考えだとは思いますけど)」

のどか「(でもさっきの話の流れ的にはちょっとおかしいかな?)」

ソラとのどかはダークドリームの真意を図りかねていた。

そうしているとさっそく分かれ道に差し掛かった。

ダークドリーム「提案者は私だし、私が最初でいい?」

拓海「ああ、いいぞ」

みんなからも反対は出ず、ダークドリームは少し悩み。

ダークドリーム「こっち」

選んだ道へ、"拓海の手を引っ張りながら"向かった。

ゆい「?」

ゆいはその様子に少し疑問を浮かべるが、ソラとのどかは瞬時に察する。

ソラ「(まさかダークドリームさん…!)」

のどか「(わたし達の番であれをやれっていってるの!?)」

あまりに強引。だが、拓海もそれを拒んでいない。

ダークドリームはそのまま先導していく。

するとまた分かれ道が差し掛かり、ダークドリームは手を離す。

ダークドリーム「また分かれ道ね、じゃあ次は…ちらっ」

ダークドリームはソラを見る。

ソラ「ッ!(ヒーローは度胸!)みなさん!今度はわたしにいかせてください!」

拓海「今度はソラか、俺はいいぞ」

ゆい「あたしもいいよー」

拓海とゆいが認めるなら当然通る。

ソラ「ではっ……こっちです!」

そしてソラも拓海の手を引く。

ゆい「(今度はソラちゃんも?)」

のどか「(ふわっ!これは、流れができてる!)」

のどかは理解した。

まず幼馴染のゆいが拓海の手を引き、そこから同居人のダークドリームが続き、そして異世界出身のソラが真似をする。

三回も続けばやる流れになっているのだ。

それにもはや拓海と手を繋いでいないのはのどかだけ、これはもう繋がない方がおかしいのだ。

そうこうしていると、次の分かれ道が来た。

拓海「…ソラ、分かれ道だぞ」

ソラ「は、はい…」

ソラももう少し繋いでいたかった、でもこれ以上はダメなので名残惜しくも手を離した。

そしてのどかが続く。

のどか「み、みんな!次はわたしがいいかな?」

拓海「花寺か、ゆい、いいか?」

ゆい「うん、いいけど」

のどか「じゃ、じゃあ…」

のどかは迷う、じっくりとどちらに進むか、ではなく、拓海と手を繋ぐ覚悟を決めている。

のどか「(行き先を選んだら拓海くんと手を、ふ、ふわわ〜!)」

なかなか覚悟が決まらず迷っていると。

拓海「花寺」

のどか「ふぁいっ!」

拓海「どっちに進むんだ?」

のどか「え、えっとえっと」

考えがまとまらない、いっそここで拓海の手を引いて、いや、しかし…

のどか「じゃ、じゃあこっちに…」

結局のどかは勇気が湧き切らず、進路を指差しで示す。

ソラ「(のどかさん…)」

同じ悩みを抱えていた同士であるのどかの内心を思うソラ。

すると、

拓海「よし、こっちだな」

拓海はのどかの示した方向へ"のどかの手を取って"進んだ。

のどか「………え?」

拓海「悪い、嫌だったか?…今日はこうした方がいいと思ったんだけど」

のどか「う、ううん!いいよ…」

のどかは恥ずかしがりながらも拓海の取ってくれた手を握り返した。

〜〜〜

その後、幾度かの分かれ道を経て、ゴールへと辿り着きしばらくして解散となった。

ソラ「今日はありがとうございます!本当に、楽しかったです!」

のどか「うん。誘ってくれてありがとう!いい思い出、できたよ」

ダークドリーム「そう、二人が楽しんでくれたならよかった」

ソラ「それではまた!」

のどか「ばいば〜い」

帰路の途中、別の街に住む二人とは途中で別れる。

二人ともいい笑顔だった。

そして同じ帰り道の三人も帰宅する。

拓海「ダークドリーム、今日のあれってなんだったんだ?」

ゆい「あれって、拓海と手を繋いでたのってやっぱり何かあったの?」

ダークドリーム「…流石に気づくか」

拓海もゆいもそこまでにぶくない。

しかし指摘して空気を壊すような野暮はせず今質問したのだ。

ダークドリーム「大した理由はないけど。ただ二人があなた達をいいなって思ってたみたい」

嘘はついていない。

拓海とゆいの関係に彼女達が惹かれていることは。

それが仲のいい幼馴染としてか、親しい異性としてかはボカすが。

拓海「そっか、お疲れさん」

そう言って拓海はダークドリームの頭を撫でた。

急な事にダークドリームも動揺した。

ダークドリーム「え、なに?」

拓海「あの二人のために行動してたんだろ?偉いなって思ったんだよ」

ゆい「あたしからも!ダークドリームちゃんいい子いい子〜」

ダークドリーム「子供扱いしないでよ!…もう」

怒ったそぶりを見せるダークドリーム、しかし内心褒められた事が嬉しかった。

あんから家の手伝いなどで褒められる事は少なくないのだが、今この二人に褒められた感覚は少し何かが違った。

そうしていると大きなお腹の音がする。

ゆい「はらぺこった〜早く帰ってごはんたべよー」

ダークドリーム「私もお腹空いたし、美味しいもの作ってね」

拓海「はいはい」

そうして三人は笑顔で帰路を歩いていく…


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