戻らぬ者

戻らぬ者


https://telegra.ph/百の魔性を殺せ-09-27

↑の続き

機構殺しビーマ世界線のアシュヴァッターマンの話

悲鳴がやんだ。


甘ったるい花の匂いと噎せ返るような血の臭いがする。


「……パーンダヴァ五兄弟とクリシュナとバララーマには逃げられたか。そしてやっぱりお前は生きていたなアシュヴァッターマン」


そう言った怪物と化したユッダが俺に触れようとする。

その手は宝珠の守りによって弾かれた。


「痛っ。分かってはいたけどお前のその額のやつはすごいな。カリどころか私すら触れられんのか……」


「どうしてだ」


「……」


「どうしてこんな事をしやがったユッダ。人類殺戮機構って何の事だ!」


「……まず私はユッダという名を名乗っているがお前の知っているユッダではない。ましてやドゥリーヨダナでもない。両者共に死亡している」


「は?」


ユッダは呆然としている俺に向かって青い色の玉のような物を投げる。

俺は思わずソレを受け取った。



大地の女神

崩壊する大地

人類削減計画

クリシュナ

カリの化身

人類を救う為、人類を殺す神造悪

大地の補強

羅刹

聖杯

人類削減機構

ドゥリーヨダナ



情報が怒涛の勢いで俺の頭に流れ込んだ。

頭が割れるように痛む。


「それは私……正確には前のユッダと百王子たちの仕様書みたいなものだ。本来ならシャクニ叔父が持っているべき物だがもうあの人は居ないからな。ちょいと拝借してきた」


「ふざけるな、なんでお前らが!?」


「そう怒るなよ。私にもお前にもどうしようもないことだ。ユッダたちが人類削減機構とそのスペアだというのは分かったな?そして大地の女神サマが限界だってことも」


「……」


「先程私はお前らに世界を救いたければ私たちを殺せって言ったな」


「ああ」


「大地の女神サマは怒っている。私たちのオーダーを書き換えたり、大地としての務めを放棄しようとしたりするくらいに。私たちを殺せても大地の女神サマが仕事を放棄したら大地は崩れてお前ら人間は全員お陀仏だ」


「……そうか」


「そう辛気臭い顔をするな。この大地を存続させる方法はちゃんとあの仕様書に書いてあっただろうが」


「お前らの死体を大地にすることで?ふざけるな、そんな事させるわけないだろうが!」


「だって大地が崩壊したらお前も妹も両親もユユツも死ぬだろう」


「……」


「私にお前らを見捨てさせないでくれ。自我が曖昧な弟たちも正気ならおそらく私と同じ決断をしただろうよ。……まあ私たちが死なないと大地にもなれないんだがな。殺戮のオーダーが入っている状態で埋まってもカリが沸いてきて人類を殺すだろうし」


「……どうして俺にこの話をしやがった?別に話す必要性なんかないだろう」


「あー……お前はドゥリーヨダナとユッダの友人だからな。誠意のある対応したかった。だから聞かれた質問にはちゃんと答えたかった」


「そうか。あともう一つ聞かせろ。お前はドゥリーヨダナの旦那でもないと言ったがどういうことだ?」


「ドゥリーヨダナはあの決闘の終わりではまだ死んでいなかった。ユッダはドゥリーヨダナが死んだあとじゃないと出てこれないのは仕様書で見たな?でも大地の女神サマは無理やり機構を起動させた。だからだろうな、ドゥリーヨダナとユッダの精神は混ざりあって別物になった。私はもう2人のどちらでもないただの機構だ」


「……」


「……別物なのにお前の友の名を、ユッダを名乗って悪かったな」


「いや、いい。なあコレ持っていっていいか?」


「あ?……別に構わないが頼みがある」


「なんだ?」


「今は私が頑張って抑えてるが妹も機構になる可能性がある。だから出来ればでいいんだが妹と一緒にいてほしい。お前のその宝珠の力があれば妹が機構化することは防げるはずだ」


「お前そういう大事な事は早く言え!」


「すまん。あとビーマたちに会ったらカリになった百王子の弱点は生前の死因の場所だってことと、弟たちを殺さん限り私は死なないと伝えておいてくれ」


「……分かった」


「それじゃあなアシュヴァッターマン。もう二度と会うことは無いだろうが、お前が健やかに生きることを願っている」


「……そうかよ。じゃあな俺の友人」




「……悪いがお前の願いには応えられねえよ」


「俺に全てを話したのは間違いだったな。早くドゥフシャラーに宝珠を渡して、ビーマにアイツとの会話の内容を伝えるとしよう」

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