我が誰より一番!

我が誰より一番!


 業務が終わり楠木殿と共に家に帰って来てすぐリビングの中央に行きひっくり返った尊氏が何事かを訴えている

尊氏「ギュオオオンン…!!!」 (酷いです楠木殿~!我より先に! 顕家卿に格好いいって言って!我には軽く良い子で可愛いぞだけとか! 後新田殿は何で楠木殿に遊んで貰ったんですか!今日我は楠木殿にあんまり撫でて貰ってないのに!ずるいです~!!)

直義「…兄上が物凄くジタバタしている。兄上は何と?」

楠木殿「あちゃぁ~。やっぱり昼間のやり取りを根に持っておったか…!」

直義「昼間?」

楠木殿「おう、今日来られた常連さんがな、拙者に犬達の中でどの子が一番可愛いですか?と聞いてきてな…」

直義「なんだそれは。楠木殿は兄上達に順位なんてつけられないだろう?」

楠木殿「おん…、拙者もそう言ったんだが、常連さんとの会話を聞きつけて隣に来ていた顕家卿が滅茶苦茶圧を掛けてくるし、尊氏殿は期待に目を輝かせておるしで…。当たり障りのない回答をしたのだが、結局こうなったのでござる」

直義「お客さんに悪気は無かったんだろうが…、傍迷惑な問いだな」

楠木殿「はは…常連さんは犬達の様子に慌ててな、拙者に謝ってくれたしあまり責めんでくれ」

直義「ふふ、そうか。悪意を持って聞いたわけじゃなくて良かった…んだがこのリビングを転げ回っている方はどうする?」

ニヤリと笑って肩をすくめる直義君を他人事だと思いよって!と軽く睨んでから尊氏の元へ行く楠木殿が、尊氏の側にしゃがみこみジタバタしている尊氏の前足をつかんでコロリと転がし 腕の中に抱え込み尊氏を抱きしめた。

捕まった尊氏は暫くモゾモゾしていたが体勢を変えてズボリと楠木殿の腕の隙間に鼻先を埋め、キュンキュンと鳴いて訴え始めた

尊氏「…キュオン…キュフン…キュウ…」

(我本当に嫌だったんですからね、     今度ああいう質問が来たら真っ先に我の事を言ってください…!)

楠木殿「ん。分かった。ふふふ、お主前世ではおおらかな性根の持ち主であったのに、今生はえらく焼きもち焼きだなぁ…」

ワシャワシャと尊氏を撫でる楠木殿に尻尾を振って甘えている尊氏を見て直義君は苦笑する。

結局尊氏は楠木殿に甘えたかっただけだし、楠木殿はいつも接客を頑張っていて何があっても店では不満を顔に出さない尊氏を労る機会を作りたかっただけで、お互いにふれ合うタイミングを伺っていたのだろう二人の様子に、しょうがないコンビだと微笑みつつ 夕食を作りにキッチンに向かう直義君だった。

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