憧憬の念と心苦しさ・後編
【ここだけ冥王レイリーに子供がいたら】Byスレ主《憧憬の念と心苦しさ・中編》の続きです
シャッキーが奥へと入り、父と二人きりになる。
「それで、話したい事があると言っていたが」
そして、父にそう聞かれた。
成程…父と話したいと言ったから、気を利かせてくれたのだろうか。
「そ、の…母の、ルルワの事で」
あの日から、ずっと“こう”すると決めたのに、言葉が直ぐには出てこない。
「ルルワ?ルルワがどうかしたのか?」
父に促され、口を開く。
「…母が死にました」
「なっ…何故、ルルワが…?」
驚愕した様な声。
そして…やはり、聞かれる。
覚悟しろ。
欺け。
それが喩え父だとしても。
「……それ、は」
「…私との関係か?」
直ぐに答えられなかった/わざと答えなかった私に、父が僅かに眉を顰める。
「ッ!いえ、そうでは無いです。父さんとの繋がりは、母の死とは関係ありません!」
父の言葉に即座に否定を返す。
そう、それだけはあり得ない。
母が亡くなったのは、父のせいでは決して無いのだから。
「それならば」
「母は、ルナーリア族でも助からない状態になって、そのまま…」
真実を語る。
嘘は語らない。
ただ、声を震わせ、瞳を揺らがす。
「…ルナーリア族特有の病か何か、という事か?」
「……」
敢えて暗くした瞳を伏せる。
父の推測が事実であるかの如く、それこそが父にとっての事実になる様に。
「…そうか」
父はそう言ったきり、目頭を押えて…暫く俯き無言でいた。
嗚呼…この人は、母の死を悼んでくれるのだな。
ぽたり
…落ちる雫を見て、思う。
私は、母の為に泣く事など出来なかったけれど…。
「では、気を付けろよ」
ニヤリと笑って父は見送ってくれる。
「いつでも来て良いからね、イーサンちゃん」
軽く手を振りながら、シャッキーは笑顔を浮かべる。
「はい、ありがとうございます…」
2人の見送りに、鈍い痛みを押し殺して笑みを浮かべる。
会えて良かった。
それと…。
ごめんなさい。