愛神によるシヴァの神妃観察日記

◯月◯日
今日からマスター……藤丸立香に愛されるパールヴァティーらの観察日記をつけようと思う。
理由は暇潰し以外の何物でもないが、後々見返して悦に入れるだけ上等な暇潰しだと思う。
なお、特異点探索などの用でマスターに呼ばれた時は分身体に観察を継続させるつもりだ。分身ってホント便利。
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◯月△日
…カーリーが穏やかな表情をして、マスターの隣を歩いていた。にわかには信じ難かったが、夢じゃなかった。
あれでは殺戮女神というよりパールヴァティーじみた良妻賢母だ。シヴァ相手にすらあんな顔をしたことはないのではないか?
まあ、シヴァは似た肌色だったパールヴァティーにあれこれ言ったことがあると聞くし、シヴァと違って人外肌を褒めてくれた(であろう)マスターに好意を抱くのは当然かもしれない。実際に褒めたかは不明な訳だが、私の青肌を褒めたマスターだしべた褒めしてても不思議ではない。
…それにしても、たまに被っているフードには何の意図があるのだろう。清楚ぶってるのだろうか? あれを被ろうが首から下が露出強なのは変わらない。そのため、ドスケベっぷりを強調するだけだと思うのだが…。
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◯月✕日
霊基第二のドゥルガーが、マスターと健全にイチャついていた。カーリーといいあの女といい、何を今更清楚ぶっているのやら。
…ドゥルガーの霊基第一は、その露出度に見合った『揺れ』を見せる。しかし、霊基第二になったりカーリーと交代したりするとその『揺れ』がなくなるのだ。着込んでいるとはいえ、爆乳であることが分かる程度にはボディラインを見せつけているのに、である。カーリーなんて言うに及ばず。概念的な護りでもあるのだろうか?
…謎だ。
追記:後日それを話題に出したら、マスターから「カーマも盛大に揺れるのはノーマルと水着の三臨だけ」と反論された。…水着の方はめちゃくちゃ目を凝らさないと見れないくらいなのに、良く気づいたものだ。…不覚にもキュンときた。
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✕月✕日
今日の観察対象は学生服の霊衣を着たパールヴァティーだ。今日も今日とて、マスターに物陰へと連れ込まれていた。
…連れ込まれるなりキスやら即尺やら、やはりパールヴァティーのドスケベっぷりはドゥルガーやカーリーとは一線を画している。
トリシューラを用いた恥も外聞もないガニ股チン媚びポールダンスを披露し、挙げ句の果てに生ハメでアンアンよがって舌出し仰け反りアクメをキメるパールヴァティーの姿は、本当に下品で滑稽で傑作だった。
「先輩♡ 先輩♡ 大好きです♡ 世界で一番愛してます♡」とか言って「先輩」呼びを普通に解禁していた辺り、依代の方までガッツリ寝取られていてなお笑えた。私の依代となったこの子を「自分の黒い部分、いらない要素」扱いしてポイ捨てしたから、パールヴァティー共々天罰()が降ったのだ。へへーん、ざまーみろ。
一方、マスターと私の間に結ばれた愛は紛うことなき純愛だ。私は本来のカーマデーヴァや依代のこの子絡みの縁がかなり薄い。なので、パールヴァティーが独占した物のひとつである『“先輩”の家の鍵』がパールヴァティーだけのものだろうが私には関係ないのだ。精液と愛液にまみれて床に打ち捨てられているのは流石にかわいそうだなとは思ったけど、抱いた感想は所詮そこまで。
ともかく、今やパールヴァティーらシヴァの神妃の方が糾弾必至の不貞の輩で、自分自身にすら捨てられたこの子と同調した私の方が純愛の徒。正直な話、優越感でアドレナリンドバドバである。
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△月△日
マスターの今日のお相手は、憎っくき春日局だった。
自らを組み敷くマスターの魔羅を褒め称え、それに身体を蹂躙されることを悦ぶその姿からは、大奥を取り仕切った女傑の威厳というものがまるで感じられなかった。「斎藤福」呼びを許し、生前の夫まで粗チンと罵倒している辺り、筋金入りの雌と化している。
…女傑でありながら、浅ましい雌の素質をも持つ。そういう二面性が依代に近かったからこそ、大奥でパールヴァティーと霊基を共有しても大して問題がなかったのかもしれない。
まあ、私や遠い世界の電脳魔を見るに、依代の方は秘書とか副官で力を発揮しそうなイメージがあるが。根本から成り立ちが異なるとはいえ、あの電脳魔のポンコツっぷりを見たら口が裂けても「この依代はリーダー向き」などとは言えまい。……。…自分で書いてて悲しくなってきた。
…話を戻そう。今日は春日局主題で書いているのだ。
あの女、カルデアでは一体どういう状態なのか。パールヴァティーに付随する霊基なのか、ドゥルガーとカーリーよろしく独立した霊基なのか。
…まあどうでも良いか。多分パールヴァティーの方にひっついているんだろう。パールヴァティーと春日局の2人、ドゥルガーとカーリーの2人で収まりも良いし。
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☆月☆日
今日は、私がマスターの……立香の相手をした。…いつものように幸せだった。パールヴァティーが根こそぎ持っていった「先輩」とやらに関する思い出も、こんな風に温かいものだったのだろうか。でも、もう羨ましくはない。
───藤丸立香は、“カーマ/マーラ”の初恋だ。それが成就した今、私は依代が桜咲く春に向かっていったように、蓮の花咲く夏に向かっていける。
私はペーパームーンでの聖杯戦争を経て、心の奥底にあるものを自覚した。けれど私は、事ここに至ってもなおそれを表に出せない。…いや、出すまでもなく立香が気持ちを汲んでくれてしまうから、別に表に出さなくとも良いかと思ってしまうのだ。
あの人は……立香は、神格本体でもなければ依代でもない“今ここにいる私”を愛してくれた。寝取るとか寝取られるとか関係なく、私を愛してくれた。
この日記の中でくらい、素直に認めよう。私は、そんな彼のことが大好きだ。
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?月?日
あの日の思いつきから何年経ったか。この日記も、不定期ながら結構な文量になった。
今日は立香とパールヴァティー達の子供が、憎っくきシヴァ改め名無しの魔を封印したキューブで遊んでいる。
立香に名と力を奪われた名無しを嘲笑する子供達と、それに同調するかのように「偉大な殿方である立香さんがパパで良かったですね。こんな魔の血を継がずに済んだんですから♪」と言うパールヴァティー。
───人間の最も大きな喜びは、敵を打ち負かし、これを眼前よりはらい、その持てるものを奪い、その身よりの者の顔を涙にぬらし、その馬に乗り、その妻や娘をおのれの腕に抱くことである。
かのチンギス・ハーンの名言そのものの状況。狂っているが、私としては最高の状況だ。
シヴァへの復讐は、神妃を堕とした最愛の人の手で成った。シヴァの栄光は立香の手に、シヴァの悪評は名無しと共に闇へ。そして私達は、未来永劫立香と共に。
…ああ、なんて幸せ。私達、立香に出会えて良かった。
