愛ゆえに

愛ゆえに




マルコは不死鳥である。その呼び名が示す通り不死であるかというとやや異なるが。死なない訳ではない。ただ、死んだ後に新しい身体を得て甦るのだ。記憶も見た目もそのままに。と言っても身体は一旦幼児に戻ってしまう。その後はまた普通の人間のように成長し、元の姿を取り戻していく。そういう訳でマルコは、悪魔の実を食べて以来数百年生きてきた。


マルコは本当の家族をとうにになくし、いずれ来る別れのことを思えば新たな家族を作る気にもなれず一人ふらふら生きてきた。辛い別れをするくらいなら誰かと深い関係になるよりその場しのぎの関係を積み重ねていく方が気楽だと自分に言い聞かせて。そう生きてきたマルコは白ひげに出会い驚かされた。海賊という危険な稼業を行いながら失うことを恐れず家族を増やし続けるその姿に。そんな白ひげに息子に勧誘された時マルコは大いに迷ったのである。息子になってしまえば辛い別れと無縁ではいられない。それにこの身体では十数年しか生きてなかったとはいえ、過ごしてきた時間は白ひげの何十倍にもなる。それを隠して息子になっていいのだろうかと。散々悩んだ末にマルコは全て打ち明けることにした。話を聞いた白ひげは最初こそ流石に驚いていたが、それでも構わないから船に乗らないかと言ってきたのだった。失うことへの不安は残ったままだったが、それ以上にこの男に付いていきたくなっていた。だからマルコは白ひげが死ぬまでの数十年を見届けることに決めたのだった。


そうして、月日が流れ白ひげの寿命が見えてきた時マルコは大家族の一員になっていた。マルコが入った時既に数百人いた白ひげの息子たちは今では5万人を超え、本船だけでも1600人いる。それで白ひげとの別れが辛くなくなるかというとそんなことはないが、それでも大勢の家族の存在があれば耐えられると信じていた。

だが今、ティーチのサッチ殺しから端をなす頂上戦争とその直後に起こった落とし前戦争のせいで家族はバラバラになってしまっている。更に腹立たしいことに、世間では白ひげに対するネガティブなイメージが広まっていた。大海賊時代を激化させた男、息子一人を救うために多くの息子を犠牲にし結局救えなかった馬鹿、等々。

マルコにはそれが我慢ならなかった。みんなにオヤジの偉大さを知らしめたい。しかしオヤジは既に死んでしまっている。今のマルコがいくら主張したところで碌に取り合ってはもらえないだろう。それならどうすればいいか。幾日も悩み続けたある日ついに名案を閃いた。おれが世間に認められればオヤジの名声も上がるのではないかと。そのためには生半可なことじゃダメだ。そういえばオヤジはワンピースが実在すると言い残していた。あれは誰かがワンピースを見つけることを望んでたからではないか。

「つまりワンピースを見つけて海賊王になればオヤジの望みも叶うし、おれの目的も達成できるってわけだよい」

誰に聞かせるでもなくそう呟くと同時に覚悟を決めた。何を犠牲にしてでも成し遂げることを。そうしてこの日ひっそりと最悪の敵が誕生したのだった。

Report Page