ギラリタ&ヤンヒメSS『愛しい人』

ギラリタ&ヤンヒメSS『愛しい人』


※注意※

・ギラとリタ、ヤンマとヒメノが付き合っている

・Hシーンなし

・初々しいギラリタとヤることはヤってるヤンヒメ

・キャラ崩壊

・前半ギラ視点、後半リタ視点






「リタさん」

 ギラは愛しい人の名を呼んだ。

 振り返る恋人の唇にもっふんのパペットを押し当てる。

「奪っちゃった~」

「……」

 突然のことでリタが固まっているのにギラは気づかず、

 ちゅッ ――彼女に口づけた。

「~~~っ///」

「リタさん…?」

 俯いたリタをギラはどうしたのかと窺う。

「……け…っ」

「ん?」

「出ていけ!この部屋から!今すぐ!」

「え?え?!なんで?リタさん?!」

 リタに背中を押されて部屋から閉め出されてしまった。



「……ということがあって…」

 リタから部屋を追い出されたギラはヒメノの元へ相談しに行った。

「まぁ可愛い!」

「(可愛い??)ヒメノ…僕、どうしたらいい?リタを怒らせちゃった…」

「ギラ、大丈夫よ。リタは怒ってないと思うわ」

 落ち込むギラの肩にヒメノが手をのせる。

「え、でも…」

 彼女はまだ不安そうなギラの両肩を揺さぶって

「それより!もっと聞かせて?ふたりのラブラブエピソード!」

 前のめりになって訊いてくる。

「らぶら…?」

「そ!その話によって、リタがどう思っているのかわかるから!」

「そうなんだ…?」

 ギラは頭に疑問符を浮かべつつ、ヒメノの勢いに押されてぽつぽつ話し出す。

 ゴッカンでリタと一緒に雪だるまを作ったこと、その後リタが淹れてくれたココアがとってもおいしかったこと、猫舌なリタのフーフーして飲む姿が可愛らしいこと、ゴッカンは寒いけどリタといると身も心も温かくなること、リタの手は冷たいけどリタはあたたかい人だってこと…――そんな話をしながらギラは知らず知らずにっこり微笑んだ。

「凄い惚気…

 それで他には?例えば…初めて手を繋いだ時とか…リタを抱き締めた時の感想とか…どうなの?」

「…えっとぉ……」

「それ以上は話さなくていいぞ、ギラ」

 ギラはそのときのことを思い起こそうとして制された。

「ヤンマ」

「もっと聞きたかったのに!」

「好きな奴とのアレコレ…他人に知られたら照れないのか」

「そうかしら…?」

 ヤンマの問い掛けにヒメノが首を傾げ、ギラもそれに頷いて

「僕、平気だけど」

と答えた。

「お前のことじゃねェよ!タコメンチ!」

「へ?」

「リタだ、リ・タ! あのクソ真面目な裁判長は照れるに決まってるだろ!」

「そっか…。リタは恥ずかしがり屋だ」

 そこも可愛いのだけど。

「つまらない男」

「というか、ヒメノ。お前も色々聞き出すなよ」

「だって心配じゃない!リタは友達だもの、ギラとどんなふうに愛を育んでいるのか気になるの!」

「ガキじゃあるめぇし、そっとしとけ!」

 ギラがリタに想いを馳せているとヤンマとヒメノの言い合いが始まった。

「ギラには時々悩みを聞いてもらってるの!だから私も…」

「悩み?んなもん、俺に言ってくれりゃ… ―― 「あなたとのことよ!」

「はぁ?!」

「…私…ギラに恋の悩みを相談しているの!」

「?!!ちょっ、ちょっと待て!ヒメノ、お前…ギラに何を…?!」

「ギラはね、リタにちゃんと気持ちを伝えているんですって。可愛いとか綺麗だとか…それから――好き、って言葉も」

「……」

「あなた、そういうこと言ってくれないじゃない?」

「 う゛」

「私だって――好きとか愛してるとか言われたい…」

「ヒメノ!ヤンマは照れ屋だから!でも、ちゃんとヒメノのこと想ってるよ! な?ヤンマ!」

 ギラは間に入って、ヤンマにそうだよな?と確認する。

「っ、当たりめーよッ///」

 顔を紅くしながらも言い放つヤンマにヒメノは気が済んだようで。

「そう…ならいいわ」

 にっこり笑んだ。

 と…

「そう言えば!まだ話が終わってなかった!」

 ヒメノがギラの方に向き直る。

「ギラ、リタのことは私に任せて」

「…いいのか?」

「私がリタに本当の気持ち聞くわ」

「ありがとう…」

 ギラは礼を言う。

「いまから行ってくるわね」

「おい、待て!ヒメ… あ、くそッ、行っちまった…」

 ギラは、ヒメノに手を振っていたら

「ギラ!カグラギとジェラミーに、この話すンじゃねーぞ!」

 ヒメノの後を追って走り出すヤンマからそう投げ掛けられた。

「カグラギは確信犯で面白がるし、ジェラミーは悪気なく可笑しな応援してくるからな…!」

 言い置いて去っていくヤンマの背に

「わかった!」

 ギラは返すのだった。




「ねーぇ…リタ、」

 只今リタは突如として押し掛けて来たヒメノのどこか含みのある笑顔で詰め寄られていた。

「…、…なんだ…?」

 内心ヒヤヒヤしているがそれを抑えて尋ねる。(声が若干 震えているのは気の所為だ!気の所為なんだ…!)

「ギラのことどう思っているの?」

「! なんだ、藪から棒に…」

「好き、なんでしょう?」

「!! おまえに話すことではない」

「そんな堅いこと言わないで…それじゃあ、少し質問を変えるわ。――ギラとのこれから…どんなふうに考えてる?」

「ッ、」

「リタはギラとこれから先どうなっていきたい?」

「……どうって…」


 ヒメノに訊かれて頭を過るのは…


 『リタさん』――自分の名を呼ぶギラ。

 『奪っちゃった~』――もっふんのパペットを口に押し当てて無邪気に笑うギラ。

 ちゅッ ――掠めるような唇づけをしてきたギラ。


 先刻のギラとの出来事。


 そのとき、きゅん、とした。いまも思い出して、きゅん、となる。


 厭でない。別に厭だったのじゃない。

 名前を呼ばれて、振り向いた瞬間にぬいぐるみでキスされて、その後すぐに本当のキスをされて。…嬉しかった。

 ―――ファーストキス…

 恋人との初めてのキスだ、嬉しくないはずがなかろう。

 ギラからキスされて嬉しかった…。

 でも、――キュンキュンした。


 愛する人にキスされて嬉しいと感じる、その前に


 『奪っちゃった~』って…、……かわいすぎか…!


 ギラの無邪気さにきゅんきゅんなって。

 ギラの可愛さに堪らなくなって、それで、リタは…

 『出ていけ!この部屋から!今すぐ!』――ギラを追い出したのだ。


「リィタァ?聞いてる?」

 思考の海に沈んでいたリタはヒメノの呼び掛けで我に返った。

「あー…うん」

「で?リタはギラとどうなりたいの?ギラに何をしてほしいの?」

「…ギラに、なにを、」

「えぇ。キスしたんでしょ?」

「?!!何故それを…?!」

「ギラ、困っていたわよ…リタを怒らせたって。厭だったの?ギラとキス…」

 ヒメノにそう問われて、リタは首を横に振る。

「やっぱり!厭でないのね!じゃあ、そのことギラに伝えなきゃ!」

「でも…!」

「んー?」

 恥ずかしい…と、リタは小さな声で呟いた。


 ファーストキス。交わした相手は想い人。

 …嬉しかった。でも、恥ずかしかった。ドキドキした。いまも嬉しいし恥ずかしくてドキドキしている。

 そんな胸の内を明かすのは…


「これくらいで恥ずかしがってどうするの?恋人ならキス以上のことするのよ?」

「っ、そ、それは…///」

「その辺で勘弁してやれ、ヒメノ」

 リタが返答に困っていると、何処からか助け船を出す言葉が降ってきた。

「「ヤンマ…」」

「大丈夫か、裁判長?」

 割って入ってくるヤンマに、リタはあぁ…と返す。

 ホッと胸を撫で下ろした。

「随分リタの肩を持つのね」

「ヤキモチか、お姫様?」

「いいえ、私は皆に愛されている自信があるもの。…勿論、あなたからも」

「…ッ///」

「ただ…あなたが誰のものなのかその身に刻む!」

「あ?!上等だッコラっ!今夜は寝かさねぇぞ!!」

「それはこっちの台詞!最後の1滴まで搾り取ってあげる!」

「言ったな?!よっしゃぁっ、そしたら今から勝負だ!夜まで待つかよっ!!」

「望むところよ!」

 質問責めを終えたら、ヤンマと痴話喧嘩を始めたヒメノ。

 そのまま、ふたりは口論しながら帰っていった。


(何しに来たんだあいつら…)

 ろくに挨拶もせず立ち去ったヤンマとヒメノを呆然と見送って、リタは溜息を吐いた。



「リタさん、」

 すると、そこで…ギラが姿を見せる。

「ギr… ―― 「ごめんなさい」

 名前を呼ぼうとしたらギラに頭を下げられてリタは目を白黒させた。

「どうした、急に」

「リタさんがシャイだって、僕 知っていたのに…いきなり‘あんなこと’してごめんなさい!」

 ギラはもう一度 謝罪する。それから顔を上げてこう伺ってきた。

「イヤ、だった…?」

 ギラが何のことを言っているのか察したリタは

「厭じゃなかったよ」

 即答する。

「先刻も厭でなかったし、これから先も厭じゃない」


 『やっぱり!厭でないのね!じゃあ、そのことギラに伝えなきゃ!』――ヒメノの言葉が浮かぶ。


 恥ずかしい、けれど、伝えたい。嬉しかったから。だから、ギラに伝えたい。

 恥ずかしいけれど、ギラに、私の気持ちを伝えたいから。

 だから、

 恥ずかしくても――ちゃんと伝えなきゃ。


「嬉しかった」

 ただ恥ずかしかっただけだとリタが告げると、ギラは無邪気に微笑んでくれた。

「そしたら、もう一回」

 キスしていい?――そっと囁くギラにリタは微笑み返して応えた。


 そうして、

 ふたつの唇が重なり、ふたりは二度目のキスを交わすのだった―――。

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